潰瘍性格とは?池見酉次郎博士の分析から
2020/6月16日
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今まで超越意識について考えてきたので、今回から数回にわたり、
池見博士の所見とともに、日本人に一番多いとされる病の、’病は気から’
の要素をご紹介させていただきたい。
消化器系 循環器系 内分泌代謝系など、さまざまな領域から少しずつ、
数回にわたり、それをご紹介させて戴きたいと思う。
今日は胃腸病。
以前より内田医師の生命医療などの項目でも、胃腸ほど、ストレスと
大きくかかわり、感情次第でよくも悪くもなる’ものだということを
お話しさせていただいている。
胃腸、つまり、消化器系にかかわる言葉も、それに付随して、
いくつか見出せる。
たとえば、’はらわたが煮えくり返る’ほど、腹立たしい、苦渋の決断を
下した時に”断腸の思い”とか、’おかしくて”臍でお湯をわかしそう”とか、
外国でも’大腸は心の鏡である”という言い回しがある。
池見博士は次の実例を示して、諺の言い回し通り、胃腸は人の感情を
即座に映し出して影響を受けやすい臓器として位置づけている。
引用する:
米国のウォルフという医学書にはトムという有名な人物を使って、
トムが日常生活の中で体験するさまざまな感情状態が、胃の連動、
分泌、血液などの働きに、以下に深くかかわっているかを詳しく
研究して報告している。
トムは幼いころに、誤って煮えたぎった汁物を飲んだために、食道に
火傷をし、食道が狭くなり、口から食物を飲め込めなくなりました。
そこで、彼の腹壁から胃の中に通じる穴をあけて、そこから食物を
入れるような手術が行われました。
そのため、トムの胃粘膜の状態は、外部からたやすく観察することが
できました。
このようにして、トムが恐怖、悲しみ、絶望などの状態に陥ったときには、
胃の分泌や運動が低下し胃粘膜の血流は減少して陰決状となり、反対に、
不安、怒り、敵意、心理的な葛藤などの状態のもとでは、胃の分泌運動が
高まり、胃粘膜の血流は増加して充血が認められたということです。
しかも、このような胃機能の亢進が長く続くと、胃の粘膜は傷つきやすく
なり、しばしば、出血、びらん(ただれ)などの変化にまで発展したと
報告されています。 (引用終わり)
胃は人の”意”を反映しているようだ。
池見博士は心療内科の創設者であり、ことのほか、胃腸の病には、
心身の両面から症状を分析していくことが治療の大切な要素だと
考えている。
感情と密接に関係している胃腸の病気には 胃十二指腸潰瘍、慢性胃炎、
胃下垂症、慢性の便秘や下痢などがある。
池見博士の所見をさらに具体邸にご紹介させていただきたい。
① 胃・十二指腸潰瘍
自覚症状) ほとんどない場合もある。一般には上腹部の痛み、
背中の痛み、胸やけ、酸っぱいゲップがあがる。
重症の場合は、吐血、下血(ベンに血が混ざる)、
原因) 潰瘍の発生を即す攻撃因子が、それを防ごうとする防護因子
に勝った場合。
具体的には胃の粘膜から分泌される塩酸やペプシン(タンパク質を分解する
酵素)は攻撃因子の代表格で、それが胃の内面を被う、粘膜や粘液が持つ
抵抗性、血液などの防護因子とのバランスをくずすほど、強い力を持った場合。
病は気から~に関して) 精神的ストレス は酸やペプシンの分泌を高める
ことがわかっている。
粘膜の血流を逆に弱めることもあり、防護因子の低下を起こして、潰瘍を
生じさせる要因となる。
具体例) 潰瘍の患者の傾向として一般的には、野心的、行動的、
活動的、仕事熱心、仕事にかりたてられている。
潰瘍患者に共通の感情問題としては、独立と依存の葛藤。
どういうことかといえば、無意識の領域では、他人に依存したい
構われたい、愛されたいという欲求があるが、それを表面化させることが
できず、代わりに、独立的、活動的に振る舞うという傾向がある。
治療方法) 入院して心身の安静を計る。
池見博士のデータでは外来で通院治療をした場合より、その方が
治療結果が良いという。
その理由には、入院によって職場や家族の中で葛藤があった場合、
日常生活から切り離されストレスから解放されやすいこと、安心感が
与えられ、生活が規則正しくなるからとされる。
池見博士の所見では、
”もともと潰瘍は自然に治る性質の強いものであって、このような
自然治癒の傾向が入院という状況のもとで、最も強く発揮されると
考えられます”と述べている。
注意点) ただ、再発をきたしやすい。 内科的な治療で治癒した
潰瘍は数年以内に半数以上の人が再発するといわれるほど。
また、一部の潰瘍患者は難治性の潰瘍に移行する場合もある。
その場合は年齢、全身の健康状態、潰瘍の大きさ、深さ、形、
衆院の粘膜の状況などの関連が、かかわっているが、病は気から~
の観点でいえば、”緊張しやすい過敏な性格傾向、日常生活でのストレス、
職場や家庭での心労などが深くかかわっている”と池見博士は述べている。
次回は過敏性大腸について。
*引用箇所: ”ストレス健康法” 池見酉次郎著
昭和50年発行 潮文社