<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
宇宙エンタメ前哨基地



その昔、テレビの洋画劇場で頻繁に放送されていた映画に「宇宙からの脱出」という1969年の地味なSFがあった。
この映画、地味だったけれどもかなりリアルで、一旦見はじめるとチャンネルを変えられないほど面白い作品だったように記憶している。
ちょうどダイハードを見出すとチャンネルを変えられないのと似たようなものだ。

物語はシンプルだった。

米ソ宇宙開発競争の時代、地球の軌道上に打ち上げられたジェミニ宇宙船(アポロ計画前の二人乗りの宇宙カプセル)みたいな宇宙船が故障して地球に戻れなくなる。
酸素は無くなってくるし、助けに出発しなければならないロケットはケープカナベラル基地をハリケーンが襲っているため打ち上げできない。
さあ、どうなる?!

といった筋書きだった。

2001年宇宙の旅と同じく無重力状態、真空のリアルな宇宙は「憧れの宇宙旅行」とはほど遠く、一歩派違えると死が待っている恐ろしい世界であることに気付かせてくれた。
グレゴリー・ペックや若きジーン・ハックマンが出演していて、決してスタッフ、出演者は地味ではないのだが、DVDは発売されていないし、レンタルビデオ屋さんでも見つけることが難しい。

この「板子一枚下は地獄」の宇宙開発「宇宙からの脱出」。
そのフィクションが、2003年にリアルな事件となっていた。

クリス・ジョーンズ著「奇跡の救出作戦 絶対帰還」は2003年のスペースシャトル・コロンビア号空中分解事故のために国際宇宙ステーションに取り残された3人の宇宙飛行士をいかに救出したか、というノンフィクションである。

コロンビア号の事故をテレビのニュースで知った当時の私は、

「ん~~~~、これは本物の宇宙からの脱出やね。どうやって迎えに行くんやろ」

とまったく他人事のように考えていたのだったが、実際、ヒューストンやロシアの当事者にとってみれば国際宇宙ステーションの計画そのものが危うくなるような大事件だったわけだ。

映画と違って21世紀の現在。
少々地球に帰れなくとも補給船はやってくるし、ステーションそのものの機能も格段に違うわけで、ステーションに折り残されることが即死に繋がるわけではない。
それでも、どこかのテレビ番組のように、

「転送!」

のひと言で地球に帰れるわけもなく、本当に大変だったようだ。

本書はこのコロンビア号の事故で残された人々をはじめ、宇宙開発の歴史が記されている。
とりわけロシアの宇宙計画草創期をレポートしているのは、非常に興味がそそられた部分だ。

ともかく、彼らは無事に帰ってきたが、最後のドタバタがまるでコメディのようなのが、これまた興味をそそられる部分だった。

~「宇宙ステーションに取り残された3人、奇跡の救出作戦 絶対帰還」クルス・ジョーンズ著 河野純治訳 光文社刊~

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