<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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最初に書店でこの本を見つけた時、買うべきか買わないでおくか、先ず悩んだ。

理由はいくつか挙げられるが、その最大のものは「インチキビジネス本かも分からない」との疑いが晴れなかったからだ。
たとえこの本が日経に紹介されていたからといって、納得のできる内容を持っているという保証はない。
かといって、「選択」することや「選択」されることを「科学」として捉えた書籍には今だお目にかかったことが無かったので、結局「インチキ本ではあるまいな」という疑いに対して「読んで見たい」という欲求の方が勝利を収め、平積みされていた本書を手に取りレジに向ったのであった。

結論から述べると、コロンビア大学ビジネススクール教授シーナ・アイエンガー著「選択の科学」(文藝春秋社)は実に面白い参考書であった。
参考書、というよりも教科書という方が正しいかも知れない。
なんといっても、色々なシュチュエーションを例にとり、その時々にどのように人々がいくつかの選択肢からひとつを選び出すのかという解説がスリリングで興味深く、読み進んでいて読者の好奇心を放さないのだ。

著者の研究として有名であるそうな「ジャムの研究」だけではなく、「コーラの味比較テスト」や「東ドイツではコーラもファンタも他の炭酸系清涼飲料水も全て同じ『ソーダ』だった」など、驚く内容が目白押しだ。

ところで、私が勤務している会社の製品はその世界では品種が豊富で、カタログ掲載製品だけでも3000点を超えるバリエーションを数えることができる。
数えることができる、と言ってもシリーズごとの製品内ではそれぞれ大きな違いはあまりなく、ほとんど似たり寄ったりのものばかりがラインナップされている。
その原因はOEMされている製品が多いことと、サイズ違いが多いということで、私は以前からこの煩雑さに辟易としていた。
しかも製品バリエーションが増えても売上げがその品種分増加する、ということもあまりなく、まったくもって新製品や製品のリニューアルというのが無意味になっていたのだった。

なぜか?

煩雑で面倒くさい私は、楽をするためには労を惜しまない性格なので、なんとかならないか、と思っていたところに出会ったのが本書でもあったわけだ。
つまり「ジャムの研究」はまさに目から鱗の理論なのであった。
品種が少ない方が売上げが増える、という考え方に大きく共鳴したのだった。

私はこの理論を適用すると、売上げを増やそうとショーモナイ新製品を会社上層部の人たちが考えて、それを支える企画から解放されることを期待したのだ。

実際のところ、品種を減らしてトライ、という実験はまだできずにいる。
新製品を増やしても売上げは増えないが、減らしてしまうと減少するかも分からず、怖くてタッチできないのだ。

いずれにせよ、実験をするしないもひとつの選択であり、その選択には様々な要素が作用する。
その要素が働きかける力の方向や強さ、ぶつかり合いを研究することが「選択の科学」であることが、良く分かったのであった。

なんだか世の中みんなギャンブル、というような気がしないでもないのだ。

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