<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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ニュースの記事によると、

「新入社員募集の条件としてTOEICの評価730点以上を求めます」

大阪の武田薬品工業は英語を話せない人は入社して欲しくない、しかも業務で使えるレベルを話せない人は要りません、という条件を出すことにしたそうな。

楽天。
ユニクロ。
管理職としてのパナソニックにマツダ。

多くの日本企業が「英語話せます」を条件に社員や幹部社員の登用や採用を決める傾向が強まってきた。
正直私はこれは愚の骨頂だと思っている。
以前、「業務中、大阪弁を話したら罰金でっせ」と言って話題を集めた機械工具系商社より「愚」だと思う。

なぜならな、世の中、英語を話せなくても優秀な人はいくらでも居るわけだし、外国語何ぞ、入社してから習うという手もある。
しかも英語を話す機会がないのに英会話必須なんてことになると能力のオーバースペックなわけでもあり、最近接することの多い、例えば帰国子女と呼ばれる英語堪能な人たちには、
「英語で話す前に、口の聞き方習ったら。」
と言いたくなる人も少なくないのだから、英語、英語、英語、と叫ぶ企業の感覚が良くわからない。

「日本的経営は間違いで、これからは欧米型経営術を取り入れるべきだ」というようなことがバブル崩壊後数年経ってから叫ばれ出した時期があった。
なんといってもその頃は日本式経営はバブルを生み出し崩壊したではないかいな、という気分になっていたところだから、
「ん~。日本式経営は良くないか」
と思い込んだ経営者も少なくなかった。

で、欧米式経営術の信者になって、組織を挙げて日本式のマネージメント方法を根こそぎ覆し、そして欧米方式を取り入れた。
とりわけ団塊世代以降の経営者が率先して取り入れた。
学生運動で保守的なものはなんでも否定した世代だったので、日本式経営を否定するのも躊躇わなかった。
そして、それら否定したほとんどの会社は失敗した。

冷静に考える能力を喪失していたのだ。
流行に流されたおバカさんになっていたとも言えるかもしれない。

だいたい戦後ほとんどゼロから出発して世界のトップに躍り出た日本企業。
その日本式経営がそのまま100%間違っていたことなどあるわけがなく、経済の停滞は「マンネリ」「不真面目」「不誠実」「過信」など、日本式経営から最も逸脱した行為や行動、考え方が蔓延したからボロボロになったのだ。
だから「欧米式経営導入」は優れたものでも解決策でもなんでもなかった。
だいいち「欧米」と「ヨーロッパ」と「米国」を十羽ひとからげに叫ぶことが胡散臭い。

「あんた、あの2つの大陸は思想がまったくちゃいまっせ」

と指摘したり気付いたりする人やマスコミがいなかったのも「愚」なのであった。

それで今回の英語能力要求トレンド。
なんとなく「欧米式経営術」神話に似ていなくもないのが、気にかかる。

「日本の会社も公用語は英語にしなければ良い人材が雇えない」
という人の多くは米国での経験で語っている場合が多い。
明治のはじめに「公用語は英語で」なんていう運動をした人たちに雰囲気が良く似ている。
ずいぶんな勘違いがあるように思うのだ。

多人種多民族国家の米国と、黄色人種小民族国家の日本と一緒に考えるのはナンセンス。

私の知っている某有名国立大学の先生には英会話がかなり苦手な学者さんがいるのだが、英語を書かせるとちゃんと書ける。
論文ぐらい、英語で書けないと学者生活できるわけがない。
それでも話す方はメチャ苦手。
「先生、いつも学会は筆談でっか」
と一度訊いて見たいのだが、怖くて未だに訊けずにいる。
という優秀な人もいるわけだから「言葉」で仕分けするのは民主党の仕分け作業より愚かだと思う。

ということで武田薬品の英会話能力要求。
英語でアリナミンを作れるとは思えないのだ。

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