ここんところ、仕事で英文を訳す機会が増えて困っている。
ただでさえ他の業務で忙しいのだ。
そんなところで「英語の文章を読み、それを分かりやすい日本語に訳す」なんて作業は、私のように居酒屋でオーストラリア人相手に英語をマスターした人間にはとかく難しい作業だ。
とりわけ文章に専門用語が出てくると大いに悩むことになる。
英語から日本語へ、また日本語から英語へ訳する際も、私の仕事は多少とも専門性を有する仕事であるため語意が間違っていると大きな誤解を招く必要があるので注意が必要だ。
例えば一般的な電気製品でテレビなら televisionとか monitor screenと訳せば済む。
ところが私の仕事は科学に関係する仕事であるために、時々辞書を繰ってもわからない単語が出てくるのだ。
その都度、海外の雑誌をめくったり、外国製品のカタログをめくったり、絵本のイラストを探したりするので苦労する。
また、単純に見える専門用語でも、迂闊に訳して笑われた(幸いにも笑われたことはあるが嗤われたことは未だない)ことがある。
以前、小型卓上分析装置と訳するのに何も考えずに Tricorderと訳したところ、
「なんですか、この Tricorder ってのは?あなたスタートレックのファンですか?」
と指摘されたことがある。
この単語がスタートレックだけ通じる専門用語であることを私はこの時、初めて知ったのであった。
そんなこんなでカタログや広告や展示会や研究会の仕事をしている間に、その他の職務として、雑誌記事や外国の規格の翻訳をするというのはほとんど不可能に近い仕事。
いや、仕事量。
上司にはしきりに「だれか若い人、やとってちょうだい!」とお願いしているのだが、どこの企業も今はそうだが、なかなか人員増員をしてくれない。
ケチな話である。
また、翻訳は外部に出せばいいのかも知れないが、それほど量もないし、金もない。
ちょっとした雑誌記事や広告を専門家に依頼して翻訳するほど件数はないことに加えて、人員増強が難しいのと同じように追加費用発生にはかなり神経質な世の中なので、なかなか依頼できずにいるのだ。
そこで頼りにしたくなるのが googleだとかexciteだとかが提供している無料の翻訳ソフト。
英文ないしは和文を書き込みボタンを押すだけで翻訳してくれるという優れもの。
「この単語、なんて言うんやったんやろ」
と考える必要もないし、
「日本文、キー入力するん面倒くさい」
ということもなくなるのだ。
ただし、もしその翻訳が正しいものであったらの話。
googleが所有している巨大なシステムをもってしても翻訳という作業は容易ではないらしく、出てくる訳語のヘンなこと、変なこと。
正直言って詰まらない漫才師のトークよりも面白いくらいメチャクチャで、よくぞこれで「これは翻訳ソフトでございます」と宣言できるものだと感心することしきりだ。
例えばスタートレックついでにそのナレーションでエンド部分。
「To boldly where no man has gone before」
を自動翻訳したところ、
「大胆に移動するにはだれも前にどこへ行ってしまったの」
と出てくる。
「誰も前にどこへいってしまったの?」
行方不明のお尋ね文になっているのだ。
それも女性の。
また、シェークスピアのハムレットのセリフ
「To be or not to be.... that is the question.」
を自動翻訳しやところ、
「にするために、またはしないようにすることの質問であることを確認します。」
と出てくる。
「.....ことを確認します。」
なんて書かれてしまうと、おしまいに「はい、旦那様」と付け加えたくなってくるので困ってしまうものがある。
さらに、スターウォーズの決まり文句、
「May the force always with you」
を自動翻訳してみたところ、
「いつもあなたがたと共に月の力。 」
と出てくる。
「月の力」。
これではまるで月経を迎えた女性用品のコマーシャルの出来損ない、と言う感じだ。
このように自動翻訳ソフトは素晴らしい、ジョークの生成機。
見ての通り、映画や小説の翻訳がこのような有り様なので、ビジネスに使えるわけが無い。
どおりで、自動翻訳を有料サービスにしているサイトがほとんどない理由がよくわかった。
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