昨日だった。
電車で通学しているのだが、このあたりではちょう~進学校のあるN駅で乗り換えて一番前の車両に乗ったのである。帰りであった。ボックス席であった。黒いリクルートスーツみたいなのを着ている若い男性が2名いた。愚生と3人になったのである。反対側のボックス席には妙齢の若い女性しか座っていなかったが、愚生は生来の遠慮深い性格であるから(?)その席を避けた。それに香水のにおいが駄目ときているから、余計にそうである。彼女一人で座っていた。その方が、ヘンな爺が前にいるより快適だろうという思いやりである。
いやぁ、同じボックス席に座って良かった。実に良かった。愚生は、やおら読みかけの「空海の風景」を汚い袋状物入れから出して読もうとしたその時である。
「修士論文が締め切りだ」
「書けない」
「どうする」
というようなお二人の黒ツバメのような若い男性が二人でしゃべっているのである。思わず聞き耳をたてた。どうやら東京の某有名私立大学の大学院生のようである。手に持った資料にも大学名が書いてある。オレでも知っている大学である。話の内容が筒抜けである。しかも、愚生も修士論文では苦労したから、手にした小説の中身は吹っ飛んでしまった。
資料の読み方で苦労しているとのことだった。イエローのマーカーをつけても、次から次へとアタマの中から内容が吹き飛んでしまうとのことであった。他の学者の論文読みも、ちょっと足りないなぁと言われていたが、失礼ながら同感だなと感じていた。
経済学か、政治学のようであった。いくつか単語を二人で言い合って内容のチェックをしていた。2年で修士論文を書かなくてはならないから、おいおいそれで大丈夫でっか?とクチを挟みたくなった。修士に通っているんだから、就職はしていないんだろう。タブン。研究者になりたいから、やっているんだろうと感じていた。
ま、それにつけても無防備ですなぁ。電車の中でそんな話はしない方が身のためでござりまするよ。得意だったのだろうけれども。オレのようなインテリはこんな田舎にはいね~だろうからって慢心があったのかもしれないし。しかし、隣に座ったきったねぇじじいが、全部聞いていたんだから、研究者になったらちと気をつけられた方がよろしいですわなぁ。これから先が思いやられる。
可能ならば、そのお二人の大論文を拝読させていただきたいくらいである。どんなにすばらしい大論文になっているかと思ったが、そのチャンスは永遠にない。当たり前だなぁ。(^0^)
思うに、22歳で学部を出て、23~24で修士論文を書いて、それで大論文が書けるんだろうか?20代で。ちょっと疑問である。哲学系ならふざけるなと叱られてしまう。ましてやインド思想なんてはるか彼方に終着駅がある。もっとも、その駅に到着する前に、ほんとの人生の終着駅に着いてしまうか(とほほ)
学者や研究者になるくらいの方なら、普段から隙のない生き方をせにゃぁあかんでっせ。ペラペラつまらんことを言っていると学者せんせだって、アカハラだとかなんとかだとかで訴えられて学者生命を断ちきられてしまう。ましてや徒弟制だとか言っていると、余計ことは面倒になる。最近は、いつでも録音可能な機材が胸ポケットあたりにあるから(ボールペン形式だって・・)もっと面倒になる。アハハである。
学問は人間を鍛える・人格向上のためのものであって、どうも立身出世のためにやっているのではないと、クチでは言うヒトが多いが、どれだけ本当にそう思っているのかねぇと思うんだ。どこの世界でも親分子分の関係はあるんだろうけれども。ちなみに、愚生くらいかなぁ・・親分も子分もいなくて校長をさせていただいたのは。ともかく徒弟制度は親の敵でござると福沢諭吉ばりに言っているつもりだけれど。(福沢せんせは別の単語を使われたですよ・・わかっております)
だから定年になったら学問をきれいさっぱり捨ててしまう方の気持ちがわからんのである。なんでそんなことができるんだろうか。まさか、もうこれ以上勉強しなくてもいい、オレは完成したのだからというつもりではあるめぇなぁ・・。
基本的な認識として、自己をどう規定しているかということであろう。
A:オレはインテリであり、エリートである。神のような人間である
B:オレは庶民である。そしてまだまだ勉強不足である(と~ま君である)
このAとBでどっちであるのか。どう自己規定をするのかということを考えた行動をとりたいものである。注意深く生きることである。萎縮してはつまらんが、しかし慢心してもならんのだ。慢心していたら、オレのような経験だけはいっぱいあるじじいに足下をすくわれますぜ。アハハである。
あの電車の大学院生、ちゃんと行き先まで行けたのだろうか。タクシーで会場まで行くと行っていたが、そんな場所あったっけかな?隣の駅で降りたから。なんだか心配になっちゃったですわ。それにしても、こんな田舎になんの用があってきたんだろうか。
それこそ余計なじじいの心配か。ほっといてくれと言われるわなぁ。
(^0^)