水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「 動的平衡(福岡伸一)」2 第二段落前半

2020年11月01日 | 国語のお勉強(評論)

9 カルティジアンに対する新しいカウンター・フォースとして、私は次の可能性を考えている。それは生命が本来持っている動的な平衡、つまりイクイリブリアムの考え方を、生命と自然を捉える基本とすることである。
10 生命とは何か。
11 この永遠の問いに対して、過去さまざまな回答が試みられてきた。DNAの世紀だった二十世紀的な見方を採用すれば「生命とは自己複製可能なシステムである。」との答えが得られた。たしかに、これはとてもシンプルで機能的な定義であった。
12 しかし、〈 この定義 〉には、生命が持つ〈 もう一つの極めて重要な特性 〉がうまく反映されていない。それは、生命が「可変的でありながらサスティナブル(永続的)なシステムである。」という〈 古くて新しい視点 〉である。
13 二十一世紀、環境の世紀を迎えた今、生命と環境をめぐる思考の中にあって、この視点に再び光を当てることは、私たちにさまざまなヒントをもたらしてくれる。
14 生命が分子レベルにおいても(というよりもミクロなレベルではなおさら)、循環的でサスティナブルなシステムであることを、最初に「見た」のはルドルフ・シェーンハイマーだった。DNAの発見に先立つこと十年以上前(一九三〇年代後半から一九四〇年にかけて)のことだった。この、生命観のコペルニクス的転回は、今ではすっかり忘れ去られた研究成果である。

平衡……つりあっている・バランスがとれている状態
イクイリブリアム(equilibrium)……(力の)釣り合い、平衡、均衡、均勢、(心の)平静
ミクロ……微小 ←→ マクロ……巨大


Q9「この定義」とは何を指すか。抜き出せ。
A9 生命とは自己複製可能なシステムである

Q10「もう一つの極めて重要な特性」とは何か。本文の言葉を用いて25字程度で記せ。
A10 生命が、可変的でサスティナブルなシステムであること。

「古くて新しい視点」について

Q11 どのような「視点」か。
A11 生命を可変的でサスティナブルなシステムと捉える視点。

Q12「古くて新しい」と言うのはなぜか。
A12 現代では顧みられることのない過去の研究成果に基づく考えだが、 
   現在の私たちに新しい示唆をもたらす視点と考えるから。

Q13 いつごろの研究で明らかにされたものか。抜き出して答えよ。
A13 一九三〇年代後半から一九四〇年にかけて


 従来の定義「生命 … 自己複製可能なシステム」
    ↑
    ↓
 イクイリブリアム(動的な平衡)の考え方
    ∥
 古くて新しい視点
  「生命 … 可変的・サスティナブル(永続的)なシステム」
    ∥
 生命観のコペルニクス的展開
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ここではないどこかへ

2020年11月01日 | 学年だよりなど
  3学年だより「ここではないどこかへ」


 「模試を受けても判定がよくならないから志望校を変えるべきか」と相談してきた生徒に、木村達也先生が、こう答えている。


~ 判定で志望大学を変えると書いてありますが、止めたほうがいいですよ。
 その判定を見て、君のように変える生徒がたくさんいるんです。
 しかもその判定は、君が思っているほど精度が高くないです。
 広島大学の法学部に行きたいのであれば、そこにむけて大事なこと。
 それはまず「どうしても行くのだ」という気持ちを強くもつことです。
 広大が駄目なら、それならええっとええっと……というようなメンタリティーで難関大学には合格しませんわ。
 今の成績を伸ばせばいいんでしょ?
 CやDなら上等じゃないですか。それをBかCにする方法を考えるべきです。
 部活動をやっていましたか?
 この相手は強そうだから対戦するのは止めようとか考えましたか?
 勝つにはどうしたらいいだろうって考えませんでしたか?
 入試も、それ以後の人生も、すべて同じなんです。
 大人になればわかりますが、人生はそんなことの連続なんですよ。
 チャレンジするのを止めた結果、君はランクダウンした大学にも合格できないかもしれない。
 そんな気持ちの弱いことでは先が(つまりこれからの人生が)思いやられます。
 次に、家族と話をしているということですが、それは自分で決めるべきです。 (木村達也「キムタツブログ」) ~


 「家族もそれがいいと言ったから、志望校を変える」と言う例は実際にある。
 家族は本当にそれを願っているだろうか。そう言ってもらってるだけにしか思えないことは多い。
 そもそも、自分の人生の一大事を決めるのに家族の意見が必要だろうか。
 自分で決めてがんばろうとするからこそ、親はその後押しを惜しまないはずだ。
 戦略としての変更はあり得ても、弱気になって変えているようでは、木村先生の言われるように「これからの人生」にかかわってくる。
 受験は、「旅行」よりも「旅」に似ている。
 目的地が決まっていて、自分で予定を組んで、必要な交通機関を使えば到達できるという意味では、受験は旅行といえるかもしれない。
 しかし、受験の目的は旅行先ではない。大学に行くことが最終目的ではない。
 十分な準備をしても、確実に行けるとは断言できないし、そこに行ってから何をするか、どう変わるかが大事なのが「旅」だ。旅の目的地は場所ではない。
 目的地に行って楽しむのが「旅行」なら、ここではないどこかに行き、今と違った自分になるために足を踏み出すのが「旅」だ。受験の本当の目的はこっちにある。
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