9 カルティジアンに対する新しいカウンター・フォースとして、私は次の可能性を考えている。それは生命が本来持っている動的な平衡、つまりイクイリブリアムの考え方を、生命と自然を捉える基本とすることである。
10 生命とは何か。
11 この永遠の問いに対して、過去さまざまな回答が試みられてきた。DNAの世紀だった二十世紀的な見方を採用すれば「生命とは自己複製可能なシステムである。」との答えが得られた。たしかに、これはとてもシンプルで機能的な定義であった。
12 しかし、〈 この定義 〉には、生命が持つ〈 もう一つの極めて重要な特性 〉がうまく反映されていない。それは、生命が「可変的でありながらサスティナブル(永続的)なシステムである。」という〈 古くて新しい視点 〉である。
13 二十一世紀、環境の世紀を迎えた今、生命と環境をめぐる思考の中にあって、この視点に再び光を当てることは、私たちにさまざまなヒントをもたらしてくれる。
14 生命が分子レベルにおいても(というよりもミクロなレベルではなおさら)、循環的でサスティナブルなシステムであることを、最初に「見た」のはルドルフ・シェーンハイマーだった。DNAの発見に先立つこと十年以上前(一九三〇年代後半から一九四〇年にかけて)のことだった。この、生命観のコペルニクス的転回は、今ではすっかり忘れ去られた研究成果である。
平衡……つりあっている・バランスがとれている状態
イクイリブリアム(equilibrium)……(力の)釣り合い、平衡、均衡、均勢、(心の)平静
ミクロ……微小 ←→ マクロ……巨大
Q9「この定義」とは何を指すか。抜き出せ。
A9 生命とは自己複製可能なシステムである
Q10「もう一つの極めて重要な特性」とは何か。本文の言葉を用いて25字程度で記せ。
A10 生命が、可変的でサスティナブルなシステムであること。
「古くて新しい視点」について
Q11 どのような「視点」か。
A11 生命を可変的でサスティナブルなシステムと捉える視点。
Q12「古くて新しい」と言うのはなぜか。
A12 現代では顧みられることのない過去の研究成果に基づく考えだが、
現在の私たちに新しい示唆をもたらす視点と考えるから。
Q13 いつごろの研究で明らかにされたものか。抜き出して答えよ。
A13 一九三〇年代後半から一九四〇年にかけて
従来の定義「生命 … 自己複製可能なシステム」
↑
↓
イクイリブリアム(動的な平衡)の考え方
∥
古くて新しい視点
「生命 … 可変的・サスティナブル(永続的)なシステム」
∥
生命観のコペルニクス的展開