水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「動的平衡(福岡伸一)」6 第四段落前半

2020年11月28日 | 国語のお勉強(評論)
「動的平衡(福岡伸一)」6 第四段落前半


33 シェーンハイマーは、それまでのデカルト的な機械論的生命観に対して、還元論的な分子レベルの解像度を保ちながら、コペルニクス的転換をもたらした。その業績はある意味で二十世紀最大の科学的発見と呼ぶことができると私は思う。
34 しかし、〈 皮肉にも 〉、このとき同じニューヨークにいた、ロックフェラー大のエイブリーによって遺伝物質としての核酸が発見された。そして、それが複製メカニズムを内包する二重らせんをとっていることが明らかにされ、分子生物学時代の幕が切って落とされる。
35 生命と生命観に関して偉大な業績を上げたにもかかわらず、シェーンハイマーの名はしだいに〈 歴史の澱に沈んでいった 〉。
36 それと軌を一にして、再び、生命はミクロな分子パーツからなる精巧なプラモデルとして捉えられ、それを操作対象として扱い得るという考え方がドミナントになっていく。必然として、流れながらも関係性を保つ動的な平衡系としての生命観は捨象されていった。


コペルニクス的転換……(天動説に対して地動説を唱えコペルニクスをふまえ)物事の見方がまるっきり正反対になるような転換のこと

皮肉……①遠回しの非難 ②期待外れの結果
 ☆語源
  仏教用語の「皮肉骨髄」。弟子を評価する項目。
  「皮=表面だけ理解」、「肉=意味を理解」、「骨=考え方を理解」、「髄=根本から理解」。
  「皮・肉」は評価が低い→「あいつは皮肉だ」=マイナス評価。

ドミナント……支配的・主流
捨象……捨てられること 


 デカルト的生命観(機械論的生命観)
   ↑
   ↓
 シェーンハイマーの生命観(動的平衡の生命観)
  コペルニクス的転換
  二十世紀最大の科学的発展

 エイブリー……遺伝物質(核酸)の発見
   ↓
 生命……複製システム
   ↓
 生命……精巧なプラモデル
       ↓
     操作対象   動的平衡系としての生命観
      ∥         ↓
 ドミナント  ←→   捨象


Q28「皮肉にも」とあるが、なぜこう言うのか。90字以内で説明せよ。
A28 シェーンハイマーが二十世紀最大とも言える科学的発見をしたにもかかわらず、
   同時代に同じニューヨークにいたエイブリーによる別の発見の陰に隠れ、
   その名が忘れられてしまう結果となったこと。

「歴史の澱」について

Q29 何を、どう喩えた表現か。
A29 シェーンハイマーの名前と業績が忘れられたことを、水底の沈んだかすのように、表面から見えない場所に残されていると表現した。

Q30 なぜ「澱」という語を用いたのか。
A30 生命を分子の「流れ」、私たちの身体を分子の「よどみ」と表現し、それらと縁語的に「澱」を用いて、印象深くするため。
コメント
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