水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「動的平衡(福岡伸一)」7 第四段落後半

2020年11月29日 | 国語のお勉強(評論)
37 翻って今日、外的世界としての環境と、内的世界としての生命とを操作し続ける科学・技術のあり方をめぐって、私たちは重大な岐路に立たされている。
38 シェーンハイマーの動的平衡論に立ち返って、〈 これらの諸問題 〉を今一度、見直してみることは、閉塞しがちな私たちの生命観・環境観に古くて新しいヒントを与えてくれるのではないだろうか。
39 なぜなら、彼の理論を拡張すれば、環境にあるすべての分子は、私たち生命体の中を通り抜け、また環境へと戻る大循環の流れの中にあり、どの局面をとっても、〈 そこ 〉には平衡を保ったネットワークが存在していると考えられるからである。
40 〈 平衡状態にあるネットワークの一部分を切り取ってほかの部分と入れ換えたり、局所的な加速を行うこと 〉は、一見、効率を高めているかのように見えて、〈 結局は平衡系に負荷を与え、流れを乱すこと 〉に帰結する。
41 実質的に同等に見える部分部分は、それぞれが置かれている動的な平衡系の中でのみ、その意味と機能を持ち、機能単位と見える部分にもその実、境界線はない。
42 遺伝子組み換え技術は期待されたほど農産物の増収につながらず、臓器移植はいまだ決定的に有効と言えるほどの延命医療とはなっていない。ES細胞の分化機構は未知で、増殖を制御できず、奇跡的に作出されたクローン羊ドリーは早死にしてしまった。
43 〈 こうした数々の事例 〉は、バイオテクノロジーの〈 過渡期性 〉を意味しているのではなく、動的な平衡系としての生命を機械論的に操作するという営為の不可能性を証明しているように、私には思えてならない。

Q31「これらの諸問題」が生じる根本的な原因を、筆者はどう考えているか。本文の語を用いて30字以内で説明せよ。
A31 動的な平衡系としての生命を機械論的に操作しているから。

Q32「そこ」とはどこか。30字以内で抜き出せ。
A32 私たち生命体の中を通り抜け、また環境へと戻る大循環の流れ

Q33「平衡状態にあるネットワークの一部分を切り取ってほかの部分と入れ換えたり、局所的な加速を行うこと」とあるが、筆者が想定している具体的な科学技術は何か。該当するものを、あとの部分から抜き出せ。
A33 遺伝子組み換え技術  臓器移植  ES細胞 クローン羊

Q34「結局は平衡系に負荷を与え、流れを乱すこと」とあるが、なぜか。本文の語を用いて70字以内で説明せよ。
A34 生命体の各部分は、それぞれが置かれている動的な平衡系の中でのみ、その意味と機能を保ち、
   機能単位と見える部分にも実質的に境界線はないから。

Q35「こうした数々の事例」は、何を表していると筆者は述べるのか。35字以内で抜き出せ。
A35 動的な平衡系としての生命を機械論的に操作するという営為の不可能性

Q36「過渡期性」とはどういう意味か。
A36 バイオテクノロジーが進展の途上であるということ。


現在の科学・技術
 外的世界としての環境
 内的世界としての生命 操作し続ける

具 遺伝子組み換え技術 → 農産物の増収につながらない
  臓器移植 → 決定的に有効になっていない
  ES細胞の分化機構 → 未知、制御できない
    ↓
 バイオテクノロジーの過渡期性  
    ↑
    ↓ ではなく
 動的な平衡系としての生命を機械論的に操作するという営為の不可能性 をあらわす
コメント
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