水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

通知簿

2021年10月25日 | 学年だよりなど
1学年だより「通知簿」


 「国語4、数学4、理科4、社会5、技術家庭4、音楽3、美術4、体育5、英語5……」
 ○○高校に合格するために、二学期がんばって国語も数学も5にしようと、去年の今頃がんばっていた人も多いことだろう。
 大学受験では、「評定平均値」という数字が、高校入試の「内申点」と同じように扱われる。
 体育や芸術も含め全ての教科の平均だから、高校での学習にどれだけ誠実に取り組んでいるかがわかる評価だといえるだろう。
 自分の受験に必要な科目だけがんばって、あとの科目はぎりぎり単位をとれればいいというスタンスの人もいる。その方が受験的コスパはよさそうだ。
 しかし、卒業の時期に、進路と3年間の成績を比べ合わせたとき、受験に直接つながらなさそうな科目もしっかり取り組んでいた先輩の方が、結局はいい結果になっているようだ。
 物事への取り組みの姿勢が現れるということなのだろう。
 そもそも大学受験は、限られた教科・科目だけの試験ではあるが、問題の内容を吟味してみると、世の中全体を見ているかどうかが試されていることも多い。とくに現代文や英語は、社会問題や、その背景についての知識があるかどうかが読解にかかわる。小論文にいたっては直接問われる。家庭科で学ぶ「消費者行動」や、保健体育で習う「終末医療」について論じないといけない。
 現状の大学入試を「1点刻みの知識偏重」になっていると批判する「識者」もいるが、たぶん感覚で言っているだけで、現実の入試問題を見てはいないだろう。
 「英語4、国語4、数学3、地歴公民4、理科3、保健体育3、芸術3、総合学習、情報……」
 全部、手を抜かずにしっかりやっていこう。
 大学生になり、いざ就職活動という時期になると、それまでの学生生活をどう過ごしてきたがが問われる。エントリーシートに自己PRを書こうとして、そこからエピソードを作ろうとしても間に合わない。「リーダーシップがある」「根気強くものごとに取り組める」などと自己PRするには、それを裏付ける具体的な経験が必要だ。
 「一般教養4、専門教科4、ゼミの発表3、サークル5、アルバイト3……」
 成績そのものだけでなく、どう取り組んできたか、仲間と協力できたかなども評価の対象だ。
 そして就職する。仕事しはじめると、そこでまたいろんな評価を受ける。
 「業務能力5、顧客対応力3、企画力4、協調性5、創造力3、健康状態5……」
 考えてみると、人生はずっと「通知簿」をつけられているようなものかもしれない。
 気がつくと自分でもつけている。
 自分の「能力、素質、学歴、勤め先、収入、身体能力、性格、見た目……」または自分をとりまく「家庭環境、住んでいる場所、コミュニティ、友人関係……」。
 通知簿の合計点が、自分にとっての「幸福値」のように私達は感じる。
 だとすれば、科目設定次第で、幸福度は変わる。客観的な「幸福値」が存在するのではなく、それを測る「ものさし」次第で、自分の幸福度はまったく変わるということだ。
コメント
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