今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

湯河原を歩く

2020年03月16日 | 

昨日の記事の続き。

さて、本日は晴天ながら、天気は荒れ気味らしい(あとで知ったが、伊豆諸島近海で竜巻が2つ発生した)。
朝湯にゆっくり浸かって、湯河原の温泉宿を10時にチェックアウト。

せっかくの気分転換の旅行なのに、このまま東京に直帰したらお昼に着いてしまう。
当初の予定では、路線バスで箱根に上がって、そこから三島に降り、途中「スカイウォーク」という大吊り橋に立ち寄ろうと思っていたのだが、午後に歯医者の予約がはいってしまったので、予定を変更して、湯河原の町中をゆっくり歩いて駅にもどることにする。

湯河原の温泉街は、箱根の大観山を水源とする千歳川に沿って伸びていて、泊った宿は温泉街の上流側の端(不動滝)に近いため(今ではこのさらに上流に奥湯河原温泉がある)、駅に向って下っていく道は、長い割りには楽だと思う。

この温泉街には風情ある木造高級旅館がいくつもある。
熱海のような開けた観光地とは対照的な隠れ家的ロケーションということもあり、多くの文人たちに愛されてきた。
しかも宿はたいてい自家源泉を持っていて、源泉掛け流し(私の泊った宿も自家源泉を2つ持つ)。
千歳川一帯の豊富な湧出量がそれを可能にしている。

こんないい温泉地、たまに来るだけではもったいない気がする。
素泊りで安く泊れる宿もあり(もちろん源泉掛け流し)、食事は温泉街の食堂を利用すればいいか。

そんなことを考えつつ、温泉街のメインストリートから離れ、橋を渡って右岸沿いの斜面の静かな道を歩く。
湯河原には温泉宿だけでなく、高級そうな介護付き老人ホームがある。
温暖なこの地で完全リタイアして、のんびりと日々温泉に入る余生もいいなぁ。

ふと気がつくと、道沿いは「静岡県熱海市」になっている(いつのまにか1駅分歩いて熱海に来たわけではない)。
湯河原は千歳川を境に、左岸が神奈川県湯河原町で、右岸が静岡県熱海市なのだ。
右岸の熱海市側でも温泉が出るので、こちらは「伊豆湯河原温泉」という。

川沿いの福泉寺には、江戸時代初期に作られた釈迦の頭部像がある。
もとは尾張名古屋にあったというそれは、ずいぶん面長でちょっと造りが日本離れしている(かといってインド的でもない)。
茅葺きの本堂も趣きがある。

橋を渡り返して、神奈川県湯河原町に戻り、駅への道を進んで、湯河原の鎮守である五所神社に達する。

ここには樹齢800年を越える神木の楠があり、バス停の前ということもあり、立ち寄る観光客がけっこういる。
観光客は神木にペタペタ触っているが、私は、樹皮に触れずに両手をかざして気の交流をする。
神社の向側にも明神の楠という巨樹があり、穴状になった幹の中央に庚申塔が祀ってある(写真)。

ここから駅には向わずに、川沿いにさらに下って、河口に出ると、海浜公園がある。
ただし、その手前に熱海に向う幹線道路が横切っていて、横断歩道が見当たらない。
左右の車が途絶える一瞬を見計らって広い道路を走って横断したが、この道路の下をくぐる歩道がすぐ近くにあったのを帰りに知った。

さて、海浜公園そのものは球技用のグラウンドで、そこからは海岸にはいけず、左脇の道の先端から、護岸の海岸に入ることができる。
月曜の昼ながら、のんびり釣り糸を垂れている人たちがいる。
これも湯河原リタイアの理想的姿か。

護岸の下の海を見ると、沖縄の海かと見まがうほどきれいに澄んでいて驚いた。

そして、目の前に静かな相模湾の海原が広がる。
水平線上に初島と伊豆大島。
視野の左端は、真鶴半島が伸び、先端に三ツ石。
視野の右端は、小室山、大室山の小火山から天城連山に続く伊豆半島の山々。
半島の上空には積乱雲の最盛期を示す”かなとこ雲”があるので、竜巻が発生するのもうなづける(写真)。

湯河原の周囲を囲む真鶴半島、箱根山、伊豆半島、大島のすべてが火山、すなわち激しい地殻活動の産物(半島以外は活火山)。
というのもこの付近は、フィリピン海ブレート、北米ブレート、ユーラシアプレートの3つのプレートががぶつかり合う、地球で最も不安定な場所の1つで、地下ではたえずプレート同士の摩擦が続いているのだから、そりゃちょっと掘っただけでミネラルを含んだ熱水が出るわけだ。
そう考えると、ここは地震・津波・噴火の可能性があり、のんびりした地という印象ではなくなる(あくまで地質年代的スケールでの話)。

そう思いながら、ここから町中を抜けて、駅に達した。
宿を出てから3時間の歩き、いい運動になった。