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「走れメロス」森見登美彦、「鴨川ホルモー」万城目学

「走れメロス」は、本屋大賞2位の「夜は短し歩けよ乙女」の関連作品ということで読んだ。一方、「鴨川ホルモー」も本屋大賞ベスト10にランクインした作品で、こちらはかなり前に読んだ本だ。三題噺ではないが、両書は、「京都」「学生」「少し不思議」という点で共通点が多い。また、私くらいの年代の人が読むと、遠い昔の自分の学生時代を思い出してしまう一種のノスタルジーを感じさせる点も同じだ。我々が学生の頃、我々の心情を代弁してくれたのは、柴田翔、庄司薫といった作家たちであった。先日、現在柴田翔の代表作が絶版になっていると言う話を聞いて、少しショックを受けた。庄司薫についても、今どの程度若者に読まれているのか、心許ない。柴田翔などは、私のもう1つ前の世代から「若者の代弁者」であり、少なくとも2世代にわたって読まれ続けたのだが、それからさらに20年以上「代弁者」であり続けることはできなかったということだ。万城目や森見の小説は、そうした「若者の代弁者」を狙っているようには見えないので、ある意味、時代とともに消えていく心配はないかもしれないが、そうかといって、その時代を代弁していなければ支持をうけることもできない。そのあたりのバランスが名作として長く読まれ続けるかどうかの分かれ目かもしれない。その観点から言うと、万城目よりも森見の本の方が普遍性があり、長く読み継がれていく可能性が高いように思われる(「鴨川ホルモ-」万城目学、産業編集センター)
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