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白光 連城三紀彦

作者の小説は、短編でも2度3度のどんでん返しは当たり前、本書のような長編ともなれば、いくつどんでん返しがあっても驚かないという覚悟が必要だが、それでも、登場人物がこぞって「私が犯人」と告白していくところは正直驚きの連続だ。ここまでいくと何の罪もない被害者があまりにも可哀想という別の気分がもたげてくる。描かれた人間関係や心理はかなり古典的なものなのだが、その料理の仕方が尋常ではない。ここまで殺伐とした世界も珍しい。個人的には「戻り川心中」のようなリリシズムのある作品の方が好きなのだが、彼の作品でしか読めない世界という意味では本書のような作品の方が貴重なのかもしれない。(「白光」連城三紀彦、光文社文庫)
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