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6枚のトンカツ 蘇部健一
本屋さんの「店長のおすすめ」という棚で発見した本書。第1回森博嗣「すべてがFになる」、第2回清涼院流水「コズミック」の後の第3回メフィスト賞受賞作ということで当時はそれなりに話題になったようだ。本屋さんでは控えめに「笑える」という一言だけのPOPが立っていたのだが、読んでみて、控えめなPOPの理由とおすすめの理由が良く判った。本書は、読んだ感想を一言で言うと確かに「笑える」だ。本書に収められた短編は幅広く、ばかばかしいナンセンスものもあれば、奇抜なトリックのものもある。そして、総じて言える共通点は、あまり真剣に読むと肩すかしを食うという点だろう。私にとってはちょうど予想のつく範囲のトリックや落ちが多かったので、肩すかしを食らってもダメージが少なかったのかもしれない。例えば、表題作の「6枚のトンカツ」とその前に掲載された「5枚のトンカツ」は、途中でトリックに気がついたので、却って面白く読めたのではないかと思う程だ。
本書のもう1つの特徴は、ミステリーであるにもかかわらず、トリックの現実味とかそれが成立する可能性とかをほとんど重視していない点だろう。通常、奇抜で読者が予想しにくいトリックやアイデアは、現実味や必然性に難があることが多い。ミステリー作家の腕前というのは奇抜なトリックやアイデアにどのように現実味を持たせるかにかかっているといっても過言ではない。本書ではそうした努力をほとんどしていないように思える。ミステリーの評論家はこうした点を「逃げ」と評して嫌う傾向が強い。本書の毀誉褒貶はこうしたところにあるのだと思う。(「6枚のトンカツ」蘇部健一、講談社文庫)
本書のもう1つの特徴は、ミステリーであるにもかかわらず、トリックの現実味とかそれが成立する可能性とかをほとんど重視していない点だろう。通常、奇抜で読者が予想しにくいトリックやアイデアは、現実味や必然性に難があることが多い。ミステリー作家の腕前というのは奇抜なトリックやアイデアにどのように現実味を持たせるかにかかっているといっても過言ではない。本書ではそうした努力をほとんどしていないように思える。ミステリーの評論家はこうした点を「逃げ」と評して嫌う傾向が強い。本書の毀誉褒貶はこうしたところにあるのだと思う。(「6枚のトンカツ」蘇部健一、講談社文庫)
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