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捜査官ガラーノ パトリシア・コーンウェル
検死官シリーズでおなじみのP・コーンウェルの別シリーズとのことで、かなり前に読もうと思い発売直後に購入したものの、なぜか今まで読まずにいた作品。雰囲気は検死官シリーズによく似ている。先日読んだ「ユダヤ警官同盟」もそうだが、アメリカの警察小説には、おしなべて「政治」がストーリーに彩りを添えるというものが多いようだ。判事とか検事が直接選挙によって選ばれるという制度上の理由からだと思うが、必ずといって良いほど自分の政治的な立場などを気にする検事と主人公の警官とのやりとりのようなものが、捜査やストーリー展開に影響したりする。これは、大方のアメリカのTVドラマなどにも言えることだ。一昔前に、「political correct」という言葉がアメリカで流行ったことがあったが、アメリカには、やはりそうした言葉が流行る土壌が根深くあるのだとこんなところでも感じてしまう。本書は、そうした「政治的思惑で動く関係者の人間模様」という要素が強いというか、ほとんどがそれという感じで、読み進めて9割くらいたっても一向に事件の捜査が始まらないのにはやきもきさせられた。また、主人公のヒーロー性も「事件をずばっと解決する」からではなく「政治的に行動しない潔さ」によるものだ。(「捜査官ガラーノ」パトリシア・コーンウェル、講談社文庫)
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