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印象派で「近代」を読む 中野京子
「怖い絵」3部作(+新書1冊)以来、著者の本は本屋さんで見かけると必ず読むようになった。これで6冊目か7冊目になる。本屋さんでの扱いを見ると、著者の本がかなりブームになっていることが判る。本書の書き出しはごく一般の印象派の紹介本とさほど変わらず、最初はこれまでの本とは違う入門書なのかと思ったが、読み進めていくうちに、やはり著者ならではの文章で、本当に面白く読むことができた。今回は、フランス革命以降の近代フランスの歴史と絵画の変遷の話が秀逸だ。先日「レ・ミゼラブル」のミュージカルをDVDで見ていて、妻に「この話は1789年のフランス革命後の19世紀の話なのに、何故革命とか貧困とかの話なのか?」と問われ、返答に困り「1820年頃はまだ革命の余波や旧体制の残党がいてナポレオン3世くらいまで、フランスも混乱していたのではないか」と適当に答えてしまったのだが、その回答がちょうど直後に読んだこの本に書かれていた。しかも、本書では話が「レ・ミセラブル」にも及んで、当時のフランスの養子制度に関する撃的な事実が書かれていた。「レ・ミゼラブル」はジャンバルジャンが養子に出されていた子供コゼットを引き取るところから始まるのだが、そのストーリーにそのような背景があったとは、心底驚いた。本書の最後の2ページでは、著者の一貫した「持論」も登場、ファンには嬉しい1冊だ。(「印象派で『近代』を読む」 中野京子、NHK出版新書)
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