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下町ロケット 池井戸潤

今年の直木賞受賞作。「企業小説が直木賞」ということで話題になっている本なので、電車の中で読むのは恥ずかしかったが、遅ればせながら読んでみた。取引先の離反、大企業からの特許権侵害の提訴、資金繰りの悪化という3重苦に陥った中堅企業が、高い技術と夢を諦めない気持ちを武器に奮闘し、苦境を乗り越えて、快挙を成し遂げるというスカッとする話だ。こうした企業小説の場合、ステレオタイプの人物像やストーリー展開で興ざめというケースも多いが、本書の場合は、そうした弱点もいいかなと思えるほど、ストーリーが面白い。全てを変えてしまった「東日本大震災」。震災後、人々を励ますこと、夢を諦めないこと、小さな善意、人と人とのつながり、といったものの大切さを誰もが実感するなか、こうした企業小説も、新しい読まれ方をされていくのだろう。私自身、一度冷静になって、震災の前と後で自分の読書傾向や読書をして感じた事がどのように変わったのか見つめなおしてみたいと思った。(「下町ロケット」 池井戸潤、小学館)

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