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決断できない日本 ケビン・メア
著者は「沖縄の人々はごまかしとゆすりの名人」「沖縄の人々は怠惰でゴーヤも栽培できない」などと発言したとして糾弾された人物。こうした発言が本当にあったのかどうか、当初から報道自体があいまいだったと記憶しているが、本書は、それに対して本人自身が「完全な捏造」と反論した本だ。私自身は、様々な「失言」報道をみたとき、2通りの印象を持つ。1つは「かなりの人が薄々感じているが言葉にしてはいけないことを言ってしまった」という失言、もうひとつは「それは事実として間違っている」と強く感じる「失言」だ。著者を巡る失言問題は明らかに後者だろう。私自身もそうだし多くの人は、沖縄の人々をごまかしとゆすりの名人だとは思ったことは一度もないし、怠惰だと思ったこともないだろう。本書を読むと、著者の日本に対する理解が非常に深いことが良く判る。そうだとすれば、そのような人が「誰もそうだと思わないこと」を発言したとは到底思えない。すこしでも沖縄のことを知り、沖縄の人を知っていれば、そんなことを思うはずがないからだ。言った言わないは、その時の発言がテープに残されていないので、著者の言うとおり水掛け論にしかならないが、少なくともわが身が「言ったとすれば遺憾」として逃げてしまう人々の犠牲になったとしたら随分やりきれない思いがするだろうと思う。本書は、こうした「発言問題」に対する本人からの反論という側面だけでなく、著者が東日本大震災後のアメリカによる「ともだち作戦」の責任者の1人で、震災後の日本政府や東電の対応に対する感想を率直に述べていることにも重要な価値があるように思われる。ひとつひとつは既に報道されていることなのかもしれないが、アメリカの担当者が震災後の日本の対応をどう感じたかを語った部分は、非常にためになった。また、歴代の日本の総理大臣の寸評も面白かった。(「決断できない日本」 ケビン・メア、文春新書)