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儚い羊たちの祝宴 米澤穂信

著者の本は5,6冊読んでいるが、いずれも学園ものミステリーだったような気がする。本書も登場人物は概して若いが、これまでの本とは少し違い、非常に重たい感じの、やや耽美主義的な雰囲気を漂わせた作品だった。そうした雰囲気を出すために、謎めいたサークルが登場したり、気負ったような文体たっだりで、それはそれで悪くはないのだが、こうした話は、すでに数限りなく書かれていて、今になって新たに書く意味というのは何なのだろうかと思ったりしてしまう。召使とか執事とか旧家のお嬢様とかばかりが出てくるし、動機も浮世離れしていて、しかも思い切り暗い話は、あまりにも少女趣味だし、そうした雰囲気の代償として失われてしまっているリアリティを補うだけの何かが足りないように感じた。(「儚い羊たちの祝宴」 米澤穂信、新潮文庫)

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