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わくらば追慕抄 朱川湊人

久しぶりに読む、かなり前に読んだ「わくらば日記」の続編。今は亡き特殊な能力を持った女性の思い出をその妹が静かに語るという内容のシリーズだが、本書では昭和30年前半から後半にかけての思い出が語られる。ちょうどそれを語る妹が「段階の世代」位の年齢で、その時代の流行や時代の雰囲気が、著者独特のセピア色の文体で語られるのが読んでいて心地よい。このようにセピア色の文章で語られると、なんだかありえないようなスーパーナチュラルな話も、すんなり読めるから不思議だ。また本書では、非常に謎めいた人物が初めて登場、若くして亡くなったお姉さんの天敵のような存在らしく、もしかしたらお姉さんが若くして亡くなった原因になるのではないかと思わせるような、はらはらドキドキの展開もある。このシリーズは、時間的に考えると、1冊ごとに2,3年の間の出来事が語られており、すでに主人公があと10年もしないうちに亡くなると書かれているので、あと2,3冊で最終巻ということになるものと思われる。そのくらい続いてくれればリーズとしての満足感も得られるし、だらだらと続けてしまったということでもなく、1つの世界が語りつくされるという意味でなかなかちょうど良い感じだと思う。(「わくらば追慕抄」 朱川湊人、角川文庫)

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