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緑衣の女 アーナルデュル・インドリダソン

前に読んだ「湿地」が大変面白かったので続編を楽しみにしていたのだが、ようやく刊行された。このシリーズの特徴は、アイスランドという特殊な国の事件であるということと、翻訳者が翻訳を躊躇うほどの執拗な暴力描写ということになるだろう。アイスランドというと漁業と農業が中心の牧歌的な国というイメージだが、このシリーズはその背後にある旧来の価値観や過酷な自然がこの国において独特の犯罪の温床になっていることを暴き出す。統計に表れるアイスランドという国は人口30万人程の小国で、凶悪犯罪は年に数件ということなのだが、本書が暴く現実は恐ろしいほどに残酷だ。そうした狂気に近い犯罪の様子が、いたたまれないほどのリアリティで描かれている。本書は2000年に刊行されたシリーズ第4作で、原語では2年に1冊以上のペースで刊行されていて、すでにあと7冊が刊行済みとのこと。そのシリーズの中でも傑作といわれる作品だけが日本語訳されているということになるが、一刻も早く続編の日本語訳を期待したい。(「緑衣の女」 アーナルデュル・インドリダソン、東京創元社)

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