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あたらしい哲学入門 土屋賢二

「人間は何故8本足か?」という奇妙な副題が付いており、興味をそそられたが、内容はいたって真面目な大学での哲学の授業の講義録だ。ところどころに著者らしいユーモアもみられるが、総じて言えば、これまでの著者のエッセイを楽しんできた読者にとっては、笑える個所が少ないのがやはり物足りない。しかし、本書は、それ以上に内容の面白さに興味をひかれた。作者によれば、これまでの哲学の問いは、「人間は何故8本足か?」という問いのように、問題の設定自体に間違いがある可能性があるとのこと。「この副題にそんな深遠な意味があったのか」とびっくりさせられる。哲学の問題の多くが「言語的誤解」によるナンセンスなもので、人類の抱える悩みの多くがそのナンセンスな問いかけと同値だという。多くの深刻な悩みが「悩んでもしょうがないこと」というのは、ある意味無敵の楽観論だろう。福音のように胸にしみる1冊だ。(「あたらしい哲学入門」 土屋賢二、文春文庫)

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