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お文の影 宮部みゆき

江戸時代の怪奇現象を扱った短編集。改めて著者の「稀代のストーリーテラー」振りに感心してしまう1冊だ。細かいリーテイルの鮮やかさ、よどみないストーリー展開、徐々に解明されていく謎の面白さに加え、本書では全てがある意味で「ハッピーエンド」になっているのも読んでいて心地よかった。読者が思い入れしていた登場人物があっさり死んでしまうといった著者独特の「厳しい現実」感も、本書ではやや影を潜め、明るいコミカルなトーンに終始しているのが本書の大きな特徴だ。本書をよんでいると、本書中の「偽坊主」の話等を読んでいると、江戸時代の市井の人々が、「自然に対する恐れ」と「現実的・合理的な考え」をどのように同居させていたのか、何故その同居が可能だったのかが良く判るような気がして面白かった。(「お文の影」 宮部みゆき、角川文庫)

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