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どこかでベートーヴェン 中山七里

作者の「作曲家シリーズ」の第4作目。前の作品が刊行されてからずいぶん経った気がするが、調べてみると約3年半振りの新刊ということだ。シリーズの各作品が面白くて次への期待が大きい分、ずいぶん長く待たされたような気がするのだろう。本書では、かなり時間を遡って、前作の主人公だった岬青年が高校生の時に巻き込まれた事件が扱われている。そのためか、話の多くが主人公の人物像あるいはそれを形成した環境を語るエピソードで占められている。ミステリーとしては、かなり単純な内容で、真犯人もそれほど意外ではない。シリーズのファン、あるいは音楽好きの読者に焦点を絞った作品と言えるが、主人公や語り手を含む登場人物の大半が高校生ということで、彼らの「自分とは何者なのか」という問いかけに対する葛藤には強く心を動かされるものがある。(「どこかでベートーヴェン」 中山七里、宝島社)

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