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移民の宴 高野秀行

留学生の相手をする仕事についていると、どうしても世界各国の食文化について、知っておいた方が良いという気がしてくる。本書は、日本に滞在する外国人の食文化について書かれたノンフィクションだ。同じ外国人でも、自国に住む外国人と日本に滞在している外国人には食材入手の困難さや気候の違いなどによって微妙な食文化の違いがあるのは当然だろう。そのあたりの微妙な違いを知ることができればと思い、読んでみることにした。本書は、雑誌の連載記事をまとめたものだが、ちょうどその連載の時期が「東日本大震災」の時期と重なっていたようで、全体の3分の1くらいは震災がらみの話になっている。震災直後、多くの在日外国人が自国に避難したが、そんななかで日本に留まった外国人、即ち強い覚悟をもって日本に滞在する外国人、あるいは既に長期に亘って日本に滞在していて自国に帰るという発想がそもそもない人々、ここに描かれているのはまさにそんな人々の食生活だ。生活の基本中の基本となる食事の話だけに、人々のこだわりやそれにまつわる様々なコミュニティーの様子がよく判る。世界のことが楽しく学べる一冊だ。(「移民の宴」 高野秀行、講談社文庫)

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