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禁足地巡礼 吉田悠軌

私有地であるとか軍事施設であるとかの合理的な理由ではない理由、すなわち「不合理な理由」で「踏み入れてはいけない」とされる場所を「禁足地」と定義し、日本各地に存在する禁足地を巡ったルポルタージュ。宗教のようにそれなりに体系化された理屈ではなくもっと根源的なものに支配された情動がそこにはあるらしい。著者は、それをもっとらしく理屈付けすることなく、ただひたすらに描写し読者に伝えてくれる。著者自身はそれを覗き見的な行動と表現するが、むしろそれは著者の潔さというべきものだ。かつて禁足地とされた土地が開発されていった明治期や戦後の方がそれにまつわるエピソードが増えているという指摘は鋭いし、著者の略歴を見るとまだ大変若いようで、こういう若い世代がどのような考えを持ってこうしたものを見ているのかがわかって面白かった。(「禁足地巡礼」 吉田悠軌、扶桑社新書)

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