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硝子の塔の殺人 知念実希夫

著者の本はたくさん読んできたが、本書は医療関係の知識を土台としたこれまでの作品と全く趣の違う作品だ。全編に古今東西のミステリーとりわけ日本における本格ミステリーへのオマージュやミステリー論が取りばめられていて、中学生の頃からエラリークイーンとかアガサクリスティーとか本格ミステリーを読み漁ってきたものとしてはたまらない内容だ。本書に登場するミステリーの蘊蓄でよくわからなかったのは一箇所だけで、自分もかなりのマニアと言って良いんだろうなぁと少し嬉しくなった。本の帯には本格ミステリーの巨匠の賛辞が並んでいて、ここまで自分をオマージュしてくれる本を推薦するのはかなり照れ臭いだろうなと笑ってしまった。あとがきには、著者には元々本格傾倒があると書いてあって、これからこうした新境地を進んでいくのか、本書でそれを出し切ったという感じで今までの路線に戻るのか、どちらにしてもこの先も著者の新作を楽しみにしたいという気持ちが今まで以上に強くなった気がする。(「硝子の塔の殺人」 知念実希夫、実業之日本社)
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