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恐竜まみれ 小林怪次

恐竜学者による恐竜化石発掘調査の苦労話のエッセイ。化石が発見されやすいモンゴルやアラスカなどの自然環境の過酷さ、化石が大きくて重いこと、何日も成果がなかったりすることなど、化石発掘作業というものの想像以上の大変さが読み手にひしひしと伝わってくる。アクセスが比較的容易で過酷でない場所はもう誰かが調査済み発掘済みなので、人の行っていないところ行っていないところとやっているうちにどんどん条件が過酷になってきているらしい。また、古生物学はノーベル賞の対象外なので、どんなにすごい発見や成果をあげても受賞することはない。そのような境遇で研究のモチペーションを維持しているのだからなおさらすごいことだと思う。著者自身、世界的な発見や画期的な論文で正にノーベル賞級の学者らしいので、その辺りの話にも説得力がある。本当に面白いエピソード満載だが、特に印象的だったのは、著者がデイノザウルスという謎の恐竜の全身骨格化石を発掘するまでの奇跡的な経緯だ。それから著者のような古生物学者のフィールドワークが化石の売買を行なっている業者との戦いでもあるという話も目から鱗。こうした業者は無許可で化石を掘り起こし、例えば非常に貴重な全身骨格があったとしてもそれをバラバラにして牙とか頭骨など見栄えの良い売れそうなところだけ持って帰ってしまい、研究材料を台無しにしてしまうという。自分もいくつか興味本位で見栄えの良い小さな化石を買ったりしているで大いに反省した。(「恐竜まみれ」 小林怪次、新潮文庫)
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