goo

川のほとりに立つ者は 寺地はるな

著者の本は2冊目。本屋大賞にノミネートされたので早速ネットで取り寄せた。最近の小説は、毒親とか同調圧力といった若者たちの生きにくさをテーマにしたものが多い気がするが、本書も基本的にはそうした話だ。ただ、その他の小説が生きにくさの先に光を見つけようとする話であるのに対して、本書は光そのものがないことを前提にしている気がする。他人から社会の物差しで測られることに傷つく主人公自身が他人に対しては自分の物差しで接していることに気がつくし、また毒親でない優しい大人の人ですら自分の救いにならないことを痛感する。本書の題名はまさにそうした状況、「川のほとりに立つ者には川の中の石ころが見えない」ということだ。人間が集団でしか生活できない存在であるということとこの他者を分かり合えないという矛盾の中でそれを克服する手段が、国家とか共同体といったものへの帰属意識であったり宗教であったりするとすれば、この先の世界がどうなっていくのか、読み終えて少し恐ろしい気分になってしまった。(「川のほとりに立つ者は」 寺地はるな、双葉社)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )