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月の立つ林で 青山美智子

著者の本は3冊目。いずれも本屋大賞にノミネートされた後に読んでいて、著者の本はほぼ1年に一度この時期に読むというパターンになっている。本書を含め3冊とも、悩みや閉塞感を抱えながら一歩踏み出すことに逡巡している登場人物が何かをキッカケに解き放たれて前に進み出すというハートウオーミングストーリーだ。これまでの2冊ではそのキッカケが「本」と「絵画」だったが、本書では「月」に関するトリビアがそのキッカケになっている。また、それぞれ別の話のように描かれながら1つの話の主人公が別の話の脇役という感じで最後に全部がつながる連作短編集という形式、登場人物全員が善人なのであまり大きな事件は起きないといったところも3冊の共通点。最近の本屋大賞ノミネート作品を見ると、現代日本の深刻な問題点を背景とした壮絶な話が多い気がするし今年もそんな傾向がある。その点著者の作品は少しマイルドな話なので、綺麗事で物足りないという感想もあるだろうし、逆に壮絶すぎるストーリーに食傷気味なので著者の本が心地よいという感想もある気がする。そのあたりが2年連続本屋大賞第2位という結果のように感じた。なお、読み終えて最後まで分からなかったのが本書の題名。小説の題名には著者の強い思いが込められていると思うのだが、「月の立つ」という部分は理解出来たが、その後に続く「林」の意味がよく分からないまま読み終えてしまった。(「月の立つ林で」 青山美智子、ポプラ社)
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