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ソース焼そばの謎 塩崎省吾

B級グルメの定番「ソース焼そば」の発祥、伝搬の謎を追う一冊。「ソース焼そばは戦後大阪で生まれた」という俗説を覆し、「大正末期に東京の浅草近辺で生まれた」という自説を展開する。「ソース焼そば」だけでよく一冊の本が書けるなぁと驚くばかりだが、それ以上に膨大な資料の収集と論理展開の緻密さに舌を巻く内容だ。参考にする資料は、文学作品、様々な業種の社史、作家のエッセイなど多岐にわたり、またソース焼そばを子どもにも買える値段で提供できる条件として安価な小麦粉の入手や中華料理の一般化などが必要と考え、そこから様々な論考を進め、昭和初期にはすでに浅草を中心とする一帯でソースで味付けされた焼そばが複数のお好み焼き屋などで供されていたことを突き止める。とにかく著者のソース焼そば愛が満載で、全国各地のソース焼そばのカラー写真が60も掲載されていたり、味付けのソースがどのタイミングでかけられるのかの論考があったりして面白い。ちなみにハヤカワ新書を読むのは初めてだが、本書は電子書籍で出ていたものを早川書房の人が見つけて出版に至ったとのこと、こういう面白い企画の本がたくさん刊行されるのを期待したい。(「ソース焼そばの謎」 塩崎省吾、ハヤカワ新書)
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