この手の安易な題名の本は通常買わないことにしている。しかし、古本屋の店先で開いたら、謹呈の短冊がポロリと出てきた。なんか本が可哀想になり、《眠るための本》として買ってしまった。予想通り、ページは150頁と少なく、活字も大きくて簡単に読めたが、気に入って二度も読んでしまった。単なるハウツゥ―物ではなく、確実な知識に基づいて、且つ鋭い日常的な観察眼による精緻な文体の随筆になっていた。
人生には「忘れてならぬことと、忘れなければならぬこととがある」。それを漢文では「物有不可忘 或有不可不忘」となる。浅学な私の漢字知識でも、その漢字の配列の持つ意味の妙と奇が味わえる。また、秦の始皇帝の圧政に苦しみ、敢然と立ち上がった農民の陳勝は「王侯将相 寧(なんぞ)有種乎」と叫ぶ。「王侯将相だって同じ人間じゃないか」と訳す。
単純に血筋という誇りなのか?己の何のどこに自信を持っているのか、傍目には皆目解らないが、陰であかんべーの赤い舌を出しながら、適当に頭だけ下げて、粛々と強行採決を目論んでいるどこかの國の傲慢で、且つ姑息な八の字眉毛の宰相に、是非とも聞かせたい言葉である。