まだちゃんとした人間だったころ、何をして過ごしていたのだろう。朝早く起きて、身支度を1時間で終えて、足早に駅に向かい、満員電車に乗って、職場に着くや、挨拶をして、自分の席に着く。
今思えば、あんな都会の地価の高いところに自分の机やロッカーがあったことが不思議だ。そんなに重要な仕事をしていたのかな。
そこでは、時には残業もして、帰りにはよく酒を呑んで酔っ払って深夜にタクシーで帰宅することもあった。そんな繰り返しを何十年間も続けた。まだちゃんとした人間だったころ。
でも、今は朝から、何からも必要とされていない代わりに、気ままで自由である。自由であることは些か飽きることもある。実はただ終電車を待つ空き時間なのかもしれない。