2006~2009年の三年間に、自民党の二・三世議員の総理大臣が三代も続いた時期があった。初代は健康の不調で途中で政権を投げだした人。二代目はインテリ風でまじめそうだが印象が薄い人。三代目がべらんめえ調のお坊ちゃまで、祖父のワンマンぶりを真似ていた人。それぞれ1年ほどで交代し、爺さんや父さんに及ばない凡庸な首長であったとの印象でした。
そんな印象のうすい三人の中で、一番知性的な感じの福田康夫首相が、「あなたと違うんです」の名セリフを残して辞めたのをはっきりと覚えています。
2008年9月1日の退陣表明記者会見で、中国新聞の記者が「総理の会見が国民には他人事のように聞こえます。今日の会見も、そのように印象を持つのですが?」 と述べたところ、「他人事とあなたはおっしゃったけれども、私は自分自身を客観的に見ることはできるんです。あなたと違うんです。・・・」 と感情をあらわにして切り返した。ざっとこんな問答でした。その後の評価は記者会見のヒット作として、またマジギレの流行語にもなりました。
近年、その本当のいきさつというものがネットや著作物で流れています。そのもとは、2008年7月の洞爺湖サミットにまでさかのぼります。
当時、アメリカから日本に二つの要請があったそうです。一つはアフガニスタンへの自衛隊派遣を含めた金銭等の支援要請。二つは、リーマン・ショックに絡んで米政府系金融機関の数兆円規模の支援要請があったということです。
アメリカという国は四年間の絶対王を抱え、他国の金庫にも平気で手を突っ込む、やりたい放題の無法者の暴力帝国です。
しかし、福田政権は無茶苦茶な難題の両方とも受諾する意思はなく、そのために自ら退陣をして、敢えて政権を空白という機能不全にさせて、アメリカの強引な要請を回避したのというのです。
まったく“政治というもの”は、裏側での出来事が多過ぎて、なお且つ、それを完璧に隠蔽することよって、かろうじて政治権力の正当性を保持させていくものらしい。
この情報が真実かどうかはわかりませんが、あの慎重な福田首相が退陣記者会見で感情をあらわにしたこと、そして、「あなたと違うんです」と云って、実は「あなた方は、私がどれだけ苦労しているか、わからないでしょ」といった意味だと思うと、何だか辻褄が合ってくるのですね、・・・不思議と。