キキ便り

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病院のトランスポーター

2011-04-28 10:40:15 | アメリカ小学校事情

すっかり回復したので、昨日の午後、退院する。

アメリカでは退院する時は、ほとんどといっていいくらい、車椅子で玄関まで連れて行ってもらう。もし、転んだりしてもらったら、病院側が困るということなのかもしれない。

この病院には「トランスポーター」と称し、車椅子や寝台車(ベッドに車輪がついたものだが、なんという名前なのかちょっと思いうかばない。)を押し、患者の移動を手伝う仕事をする人たちがいる。なんと便利になったのだろう。私は入院中は、夫は毎日殆ど仕事で忙しかったので、そういう人たちの存在が心温かく嬉しかった。

ある私の車椅子を押してくれたトランスポーターさん(A)が別のトランスポーターさん(B)とこのような立ち話。

B「昨日のイースターどうだった?」

A「やぁ、今年は珍しく、家族が集まらなくて、楽だったよ。ガーデニングと馬の世話で一日過ごせたよ」

B「理想のイースターじゃないの?」

 

次に私の車椅子を押してくれたトランスポーターさん(C)とある人(D)の会話は、こういう具合だった。

D「週末はどうだった?」

C「葬式だった」

D「誰の?」

C「ボクの兄貴。2週間前で銃で自殺したんだ」

D「えっ?」

C「パーティでみんなが家で集まっている時にね。。。」

そういう会話を耳にはさむと、やはりヒューストンに戻ってきたのだということを感じる。

 

その日はトランスポーターさんの手が足りないくらい忙しい日だったらしく、トランスポーター待ちの中継点みたいなところで、ある男性患者と私は車椅子のまま残される。

頭に包帯をし、体全体が少しやつれた感じの人だが、明るい笑顔で話しかけてきた。

脳の癌腫瘍が再発し、数日前に手術したらしい。肺も出血したらしく手術が大変でずいぶん痛かったらしいが、顔つきは非常に穏やか。数年前にヒューストン市の病院で癌が見つかった時にはお医者さんは全て摘出したといってくれたらしいが、そうではなかったらしい。数ヶ月前からひどい頭痛に悩まされ、再発がわかったそうだ。ヒューストンの病院とは比較にならないほど、このウッドランドの病院は皆親身になっていろいろ尽くしてくれているのが本当に嬉しいと感謝の言葉を並べる。

癌の再発が分かる前に、仕事をやめたらしい。そういうことで医療保険がないという中で手術を受けたらしいが、主治医さんはその彼の状況をよく理解し、障害者として登録手続きできるように処理してくれたそうだ。そうすると、医療費もカバーされ、毎月手当ても出るらしい。お医者さんには感謝してやまないといい、今回自分をいろいろ世話してくれた全ての人の名前をリストにし、病院の経営者に感謝の手紙を書くと話していた。

自分の癌は治らないと思うが、それでもいい、と静かに語る。これから放射能治療が始まるらしいが、彼にとって自分の病気の先行きよりも、周りの人たちにサポートされ、励まされ、生かされているということの方が、自分にとって大切なものらしい。そういう人と話ながら、心に深い慰めをもらう。


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2 コメント

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Unknown (O-chan)
2022-08-24 11:35:31
病院のトランスポーターさんは入院の際はお手伝いして下さるのでしょうか?
その他、外出などで患者さんを送迎してくれるところはありますか?
かなり昔の記事なので、帰ってくることを祈ります?
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お返事遅くなり、申し訳ございません (キキ)
2022-09-04 19:21:06
O-chanさん、コメントありがとうございました。
新しい仕事が始まり、引っ越しなどで忙しくしており、お返事が随分遅れてしまいました。
私も一度しか入院経験がないため、よくわからないのですが、おそらく入院ではお手伝いしてくださるのではないかと思います。ただ外出の送迎は、もしかして個人でバイトの人を頼まなければならないかもしれませんね。病院に相談されるのが一番良いのではないかと思います。お手伝いできず、心苦しいですが、うまくいくようにお祈りしています。
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