世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも
歌意: この世の中は、永遠に変わらないでほしいものだなあ。
この渚を漕いでゆく漁師の、小舟に引き綱をつけて引くさまに、身にしみて心動かされることだ。
作者: 鎌倉右大臣(かまくらの うだいじん)
1192~1219 源 実朝。 源頼朝の次男で、鎌倉幕府の三代将軍。
甥の公卿に鶴岡八幡宮で暗殺される。家集に『金槐和歌集』。
上二句では、世の中は永遠であってほしい、不変であってほしいと素直に詠嘆されている。
思いの根底には、この世を無常と思う気持ちがある。
これは『万葉集』の「川の上のゆつ岩群に草生さず常にもがもな常処女にて」を念頭に置いた表現。
下三句の海浜の光景は、
『古今集』の「陸奥はいづくはあれど塩釜の浦こぐ舟の綱手かなしも」によっている。
作者はこうした光景を鎌倉あたりで目にしたのであろう。
漁師の日常の営みを見つめて、それに心をゆり動かされた実感が歌われている。
二首を本歌として詠まれたこの歌は、人の世の無常に対する感傷の漂う奥深い風景を詠んだ一首である。
※参考 文英堂 「原色小倉百人一首」
月末恒例で、一首づつアップしてきましたが、8月9月はスキャニングが間に合わず載せませんでした。
今月から再開します。残すところあと7首。
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