よし坊のあっちこっち

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異業種からの眺め

2008年12月19日 | ビジネス横丁こぼれ話
未曾有の金融危機に面し、デトロイトは震撼し、その救済案は議会で否決され、しかし、ホワイトハウスはレスキュー隊を派遣すべく、今なおワーキング中である。既に公聴会やらニュースメディアで報じられているように、GMとクライスラーはもう直ぐ資金ショートするので、倒産宣言の瀬戸際にある。ところがフォードは長期的救済資金は必要とするものの、短期的には今回の救済措置は不要なのである。嘗てのビッグ3でも何故明暗が分かれているのか。そこに、経営視点の違いを見ることが出来る。一見同じような事をやっていそうで、実は違う。

名門フォード。過去幾多の試練を乗り越えてきたが、2006年又もや危機を迎えた。社長のフォードJRは会長に退き、飛行機製造のボーイング社から新社長マレリー(写真)を向い入れた。

異業種から来たマレリーは、デトロイト流と言われる自動車産業の内側を初めて覗いてビックリしたらしい。飛行機と共にアメリカの牽引車である自動車が実は旧態依然とした企業文化を、大いなる奢りの中で育んでいるように見えたことだろう。

デトロイト流とは何か。
「車は作れるだけせっせと作りゃいい。客が何を望んでいるかって。そんなこと知った事じゃない。客は自動車が欲しかったらそこにあるものを買えばよい。俺達は作って待てばよい。景気が悪くなったらレイオフさ。回復したら呼び戻せばよい」。この繰り返しを何十年にも渡ってやってきちゃった。

彼は、小手先の利益追求などやっている場合ではないと考えた。何よりも時代にそぐわない企業文化を変えないと再生は無いと見た。ある種の革命だと言っている。では、何をどうしたのか。特別な事をしたのか。特別な事など何もしていないのだ。だから、逆に病根は根深いとも言える。

マレリーは、需要に見合った生産台数に絞れと号令をかけた。今までは、売れるかどうかは関係なく、兎に角作れるときには目いっぱい作っていたということだ。需要に見合った生産は、製造業なら基本中の基本。しかし、これさえも米国自動車産業は出来ていなかった。次にマレリーは、消費者がどんな車種デザインを望んでいるかを聞け、そしてそれを作れと号令した。今時、消費者の意向と嗜好を無視しての製造業は有り得ない。しかし、これも米国自動車産業は出来なかった。
マレリーが導入したのは他の産業では至極当たり前なのだが、自動車産業にとっては正に「革命」に等しいことと言うのだから、彼ならずとも驚いてしまう。

先にあげたデトロイト流を見てもらえば分かるが、デトロイト流とは、「奢り」と言い換えられる。その奢りの中で、悪名高いUAWという労働組合もモンスターの如く成長し、動きが取れなくなってしまったというところか。

フォードとて、決して安閑としてはおれない状況に変わりは無いが、経営と言う面だけに焦点を合わせると、たったひとりの優れた経営者でかくも違った会社に変身しうるのかということである。未だ、フォードも完全に変身を遂げたわけではない。数年後の検証が必要であろう。しかし、新しい方向に踏み出した事は確かなようだ。マレリーが内側を覗いた時の驚き。「異業種からの眺め」は貴重だ。