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重くなる企業犯罪の量刑 -ジョージア ピーナッツ事件に判決

2015年11月09日 | アメリカ通信
企業犯罪も様々だ。意図的に人を騙す詐欺商法もあれば、製造物の欠陥で人身事故が起こり、企業及びその責任者が罰せられることもある。

これまでの企業犯罪は、殺人や強盗等のナチュラル・クライムと異なり、かなり軽い量刑が課せられてきたのだが、先日アメリカで今までの常識を覆す画期的な重い判決が下された。

2008年、ピーナッツ産地ジョージアのピーナッツバター製造会社の製品で700人余が食中毒に罹り9人が死亡するという事件が起こった。企業=社長の頬かむり体質と杜撰管理が明らかになり、社長と弟及び品質管理の女性マネジャーが起訴された。先日、社長は懲役28年、弟が20年、そして女性の品質マネジャーは5年の判決を言い渡された。

アメリカとて、企業不祥事による犯罪立件では有罪でも軽い量刑が一般的だったから、この判決には全米の企業が仰天したに違いない。この事件はFDA(食品医薬品局)に戦後70年にして最大の改革をもたらすことになった。従来「事が起こってから動く」事後対応型に終始していたFDAがこの事件を契機に2011年に「工場操業差し止め権限」を持つことによって不祥事発生を未然に防ぐ、予防型対応政策へ転換したのである。

日本でも食品業界の不祥事は多く、中でも記憶に残るのは混ぜ物牛ミンチを販売したミートホープ事件と一万五千人弱の食中毒を起こした雪印乳業ミルク事件であろう。前者は最初から意図的に混ぜ物ミンチを製造しており悪質だが、それでも判決は懲役5年であった。

雪印事件は死者こそ出なかったが、ピーナッツバター事件に似ている。食中毒発生にも関わらず、当初は知らぬ存ぜぬを決め込んだが、被害拡大で大騒ぎとなり、調べてみれば工場の杜撰管理が明らかになった。結局当時の工場長と製造主任が起訴され、工場長は禁固3年、主任は1.5年、但しいずれも執行猶予付きで軽い量刑だ。

今、ジョージアの判決で全米の食品関係の企業が将来への対策に追われている。不適切な不祥事対応、隠蔽、死亡事故と3拍子が揃えば、20年25年の懲役が現実的になったからだ。
食品業界だけではないだろう。人命と隣り合せの自動車産業とて対岸の火と傍観しているわけにはいかぬ。死者の出たトヨタやGMの事故、ひいては最近のタカタの事故をピーナッツバター事件にだぶらせてみると背筋が寒くなるはずである。今回の判決は企業人、とりわけ企業トップや部署責任者に警鐘を鳴らした、歴史的な出来事に違いない。


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