9月23日の秋分の日、以前(7/1)の僕のブログ、「長い旅路(つづき)」で紹介した野川沿いのランニングコースでの練習に出かけた。調布市内の、ある茅葺屋根の家を折り返しとする往復15kmほどである。むしろこの家を見たいがためのランニングであった。その家は一般の住宅地の中にあるが、広い敷地に屋敷森に囲まれ豊富な庭木を有し、初めて見たときは、今自分が、何処にいるのか分からなくなってしまうほど現実離れした、いわば昔話の中にいるような感覚になりそうだった。門の周辺を掃除している、ご主人と思われる方に声をかけた。「大変立派な家ですね。」答えて曰く「古いものでなかなかです。・・・時々、見せてくださいと来る人もいますが。」僕も見せてくださいと言いたかったが、迷惑だろうと控えた。それにしても、僕の行動範囲の中で実際に住居としている茅葺屋根の家はここだけではないだろうか。
ところで、
僕は仕事の関係で、13年間茨城県北西部に住んでいた。当地はまだ茅葺屋根の家残っていたが、古くて懐かしいものが好きなので機会を見ては、スケッチブックをもって訪れていた。この4月に自宅のある小金井市にもどったが、日々忙しく、茨城時代を想い起こすことがなった。だが、今回、茅葺屋根の家をめぐるランニングをすることで、茨城の生活や風景が懐かしく思い出されてくる。それらの多くは、稲穂が黄金色に波打つ田んぼ、稲の天日干し風景、そして、茅葺屋根の家、といった典型的な秋の田園風景ではある。
第二の故郷と思っていた茨城への意識がだんだん薄くなってきたこの頃、茅葺屋根の家へのランニングが、東京と茨城を繋げてくれた。 日々のくらしの中に、キラリと光る大切なものを見つけた思いである。
絵は調布市の茅葺屋根の家です。
9月24日 岩下賢治