絵は筆柿
スーパーの果物売り場には、ぶどう、みかん、梨、柿、リンゴと、秋の味覚が勢ぞろいしてきている。夏が暑かったせいか、果物の出来はいずれも良好のようだ。
そんな中で、片隅に筆柿がひっそりと置かれているのを発見、すぐさま買い求めた。富有柿や平種柿など、形のよいものと違って、長細く種も多いこの柿は、人気はないものの、ほのかに甘く私は大好きだ。
というより、この柿、田舎の庭先や路地によく植えられていて、おやつが不足していた時代には子供たちにとっては格好の獲物だったのだ。実も多く付け、私の祖母などは「まんどのようだ」と言っていた。「まんど」というのは聞き慣れない言葉だが、万燈のなまったものだと、推測している。明治生まれの祖母たちの時代には、お祭りなどのお祝い事には提灯をいっぱいに飾り付けていたのではないだろうか。
そんな郷愁を覚えるのが筆柿である。店頭で売られていたこの柿の産地を確かめると、愛知県の幸田とあった。【彬】