ハナニラ
4月に入ってようやく開花が宣言された。ずいぶん遅れた感じがするが、昔のことを思い出すと入学式の頃に満開だったはずだから、長い年月を思えば、今年が特に変調だったわけではなかろう。
春というのは、地球の中緯度の地域では、なにか特別のシーズンのように思える。私たちは花見を特別視しているが、桜に限らずこの時期は一斉に花が咲く。気持ちが浮き立つ。
「ねかはくは花のしたにて春しなん そのきさらきのもちつきのころ」と歌った西行も、心が浮いていたはず。
春で思うのは、漢詩の一節。
春宵一刻値千金 花有清香月有陰 蘇軾
宴会好きの中国では、春は宵こそが一番といっている。
ところが古代日本では
春はあけぼの ようようしろくなりゆく やまぎはわ すこし明あかりて 紫だちたるくもの 細くたなびきたる 清少納言
とあるように、春は朝の明け方が一番という。
これらは、四季がある地域の特典であり、ロシアのような大陸の寒冷地では、春はなく夏と冬の2シーズンがあるだけ、という。ソルジェニーツェンの「イワン・デニーソヴィチの一日」の中では、過酷さを季節になぞらえて、シーズンは冬夏の2つで1年だと述べられている。【彬】