ローバイ
今回の能登半島地震の被害状況では、地勢の特徴が大きく影響しているように思う。主要道路が半島の中央に敷設されているが、主な街道は海岸線に沿って切り開かれている。町や集落に向かうと後戻りするのが厄介だ。だから観光シーズンなどでは、すぐに渋滞が起こる。これは半島の特徴で、能登に限ったものではない。伊豆半島でも、三浦半島でも、房総半島でも同じだ。もっと大きな紀伊半島でも海岸線以外に主要な道路はない。こうした道路が寸断されたら、行き場がなくなり、孤立する。この、いわゆる「半島問題」は以前から指摘されていることであって、行政レベルでも何回か、報告書が作成されている。
とはいえ、半島は当初から孤立していたわけではない。かつては文明の中継地として栄えた。例えば三浦半島は、ペリーの来航地であったし、函館、長崎もそうだ。能登は北前船の中継地で、輪島や珠洲は漆器類で有名だし、産業や文化的にも発展した地域であった。歴史家の網野善彦はこの地の産業の発展ぶりを発掘し、今までの農業中心の歴史観に大きなアンチテーゼを掲げたことで知られている。
近代社会になり、交通が水運から鉄道の敷設により陸運に変わったことで、半島の果たす地理的な利便性が失われて、今や過疎の地になってしまった。
今回の地震は、半島の果たす役割を再考するための、重要な契機になると思う。被災者の救援も急がれるが、能登に限らず半島の役割を追求していきたいものだ。日本は半島だらけである。自然災害も多い。そんな地域のインフラを支え、その特性をどう生かすか。大きな課題を背負ったように思う。【彬】
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