林外相は日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)への参加を主目的に7月28日からワシントンを訪問。翌29日午後には、米国の大手民間研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」で「歴史的な岐路でのわれわれの将来=法の支配に基づく自由で開かれた包括的な国際秩序」と題する演説を行ったのだそうです。
日米同盟の、対中抑止力を強化する新たな、「経済 2+2」発足の為の訪米。なのに、ベタな「対中忖度」演説。
日本で報じられている情報には接していませんでしたが、産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森氏が解説していただいています。
古森氏も演説を聴きに参加されたのだそうです。
演説内容は、いまの世界は欧州とインド太平洋の両方で既存の国際秩序への挑戦や脅威が起きており、国際情勢は危機に面し、日米両国や西欧諸国は戦後最大の「歴史的な岐路」に立っているとする認識を基礎としていたのだそうです。
その「岐路」を招いた主因は、欧州ではロシアのウクライナ侵略、アジア太平洋では中国の無法な膨張だという認識は、2022年5月の日米首脳会談の共同声明などで表明されている。だが、今回の林演説は「中国」という国名をあえて挙げず、中国への直接的な批判をほぼすべて避けていたと、古森氏。
日本の外務大臣としての米国での公式演説としてはきわめて奇妙な対中融和の傾向を印象づけたとも。
林芳正氏は2021年11月の外相就任時まで、長年、日中友好議員連盟の事務局長や会長を務め、中国との友好や対話を主張してきた経歴があると古森氏。
余談ですが、岸田氏は、「広島県日中友好協会」の会長で、林氏は外務大臣就任に伴い、議連の会長は辞任しましたが、県の友好協会の座に就いたままです。
「日中友好協会」岸田首相も地元広島で会長、鈴木財務相は岩手の協会顧問 外交政策にマイナスも 与党議員「ポスト離れた方がいい」 (1/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト
古森氏は、岸田氏とバイデン氏の関係を好評価にとれる内容で記述しておられますが、遊爺は、北京の冬季五輪に際し、バイデン氏が「外交的ボイコット」を提唱した際に、英国などは素早く賛同しましたが、岸田内閣は、安倍氏や党内有志が対応を促す中、対中忖度での、米中二股外交に揺れ、対応が遅れました。
その、二股外交姿勢派、当然バイデン氏にも伝わり、当時、岸田氏が首相就任挨拶で、面談を求めていましたが、回答を保留され、結局オンライン会談に格下げされる事件がありました。岸田氏は、長年かけて築いてこられた、日米首脳の関係に傷を生じさせる大失政を犯したのでした。
なので、遊爺は、岸田、林両氏は一蓮托生の見解です。
古森氏は、今回の林演説における対中忖度、あるいは異様なほどの中国への遠慮として響く特徴を具体的に 4点指摘しておられます。
第1には、林外相はインド太平洋での「一方的な現状変更」や「力の論理」を批判的に指摘しながらも、中国の武装艦艇による尖閣諸島への攻勢にはまったく触れていない事。
日本固有の領土の尖閣諸島に対して中国が一方的に領有権を主張し、しかも中国海警や人民解放軍海軍の武装艦艇を日本の領海や接続水域に恒常的に侵入させてくる事実こそ、日本にとって最も脅威となる領土の「武力による一方的な現状変更」の動きに、全く言及していない。
特に、日米同盟の対象となる事項で、米国民には広く現状を訴えるのが外務大臣の役目。
第2は、ロシアのウクライナ侵略についてはロシアの国名をはっきり挙げて、厳しい言葉で非難を重ねたが、そのロシアの侵略を許容し、国連などの国際舞台では支援にまで回る中国の動きをまったく批判せず、指摘さえしない点。
林氏は、国連でのロシア非難決議などに賛成しない国がかなりの数あることを指摘する。その代表はもちろん中国である。だが林氏は中国の名は挙げず、「中間的な立場の国々に対し、その国の事情にも寄り添いながら、引き続き粘り強く働きかけをしていくことが必要」と述べて、中国の立場に理解を示すような言辞を発した。
第3は、インド太平洋における日米両国などを懸念させる中国の不当な行動を指摘しながら、中国の国名をあえて挙げなかった点。
林氏は、インド太平洋で「東シナ海や南シナ海では力を背景とした一方的な現状変更の試みが継続している」ことや「不透明な開発支援」「経済的威圧」が存在することを述べる。こうした行動や現象の当事者は中国である。だが林氏はその「中国」という主語を述べないのだ。ただそういう現象が起きている、とだけ指摘して、誰が起こしているかを語らない。
第4は、インド太平洋で他国に脅威を与え、国際秩序を不当に崩す中国の行動を指摘しつつ(ただし「中国」の名は出さない)、日本はひたすら中国への「協力」や「対話」を進めると強調した点。
だがいまの日本にとって、そしてインド太平洋にとっての目前の問題は、中国が国際規範を無視する強圧的な言動を取り、軍事力を大増強して、他国の領土領海を侵し、経済面でも他の諸国を恫喝しているというのが現実。
その現実を変えるための中国への抑止や圧力こそが、日本にとっても当面の課題のはずだと、古森氏。
第5は、林氏が「中国の国内情勢を論評することは控えたい」と述べて、中国内部のウイグル、チベット、香港などでの人権弾圧には一切触れなかった点。
林外相のワシントンでの演説は、主要部分をみただけでも以上のように中国に対して変に寛容でソフトな特徴が目立つのである。とにかく中国の行動を直接批判したり非難したくない、という思惑さえ感じさせられると、古森氏。
同感です。
林外相演説は、日米両国がインド太平洋での「戦略バランスの回復」を達成することを目標にあげていた。このバランスは明らかに中国の大規模な軍拡への対処である。だが林氏は中国の軍拡や、戦略バランスの現在の不均衡についてはっきり「中国」の実態を挙げては語らない。むしろ北朝鮮の核兵器やミサイル開発の脅威を強調していた。とにかく中国を悪者にしたくない、という配慮を感じさせるとも。
親中の、岸田、林コンビ。
中国、ロシアの国際法を無視した覇権拡大に、自由主義を尊重する多くの国々が対抗姿勢を強める中、逆行していますが、それで日本はいいのでしょうか。
聞く耳が売りで、「けんとうし」とやゆされる無為無策の岸田政権。何もしないので批判され難く、内閣支持率が高止まり。その正体がすこしづつ見え始め、支持率も下落の兆候は見え始めていますが。。
鎮えとなっていた安倍氏の亡き後、国民がその役目を果たさねばなりませんね。
この花の名前は、キレンゲショウマ
↓よろしかったら、お願いします。
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日米同盟の、対中抑止力を強化する新たな、「経済 2+2」発足の為の訪米。なのに、ベタな「対中忖度」演説。
日本で報じられている情報には接していませんでしたが、産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森氏が解説していただいています。
中国批判を一切口にせず、林芳正外相の奇妙な「対中忖度」演説 岸田首相とバイデン大統領の合意はどこへ? | JBpress (ジェイビープレス) 2022.8.3(水) 古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授
岸田政権の林芳正外相が7月末、米国ワシントンの研究機関で日本の外交・戦略政策について演説した。インド太平洋での国際秩序を侵す中国に、日本がどう対応するかを主眼とするはずの演説だった。だが、林外相は中国への批判を徹底して避け、日中間の「協力」と「対話」を強調する対中融和の主唱に終始した。
米国の国政の場では、ペロシ下院議長の台湾訪問計画に中国側が軍事的な威嚇を発したことへの反発が高まり、バイデン大統領は習近平国家主席との電話会談で中国のウイグルでの人権弾圧に抗議したばかりである。しかし、林外相はこの演説で「中国の国内情勢は論じない」と言明して、中国側の人権問題などには一切触れない態度を明確にし、異様なほどの対中忖度を示す結果となった。
■岸田首相とバイデン大統領の合意を無視
林外相は日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)への参加を主目的に7月28日からワシントンを訪問した。翌29日午後には、米国の大手民間研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」で「歴史的な岐路でのわれわれの将来=法の支配に基づく自由で開かれた包括的な国際秩序」と題する演説を行った。
私もCSISへ出かけ、80人ほどの聴衆に入って、じっくりと演説に耳を傾けた。演説は質疑応答も含めて40分ほどだった。林氏はハーバード大学院での学習や米国連邦議会でのインターン研修の経験があり、英語でよどみなく言葉を進めたが、事前に準備した草稿を読むことに徹していた。
演説内容は、いまの世界は欧州とインド太平洋の両方で既存の国際秩序への挑戦や脅威が起きており、国際情勢は危機に面し、日米両国や西欧諸国は戦後最大の「歴史的な岐路」に立っているとする認識を基礎としていた。
その「岐路」を招いた主因は、欧州ではロシアのウクライナ侵略、アジア太平洋では中国の無法な膨張だという認識は、2022年5月の日米首脳会談の共同声明などで表明されている。だが、今回の林演説は「中国」という国名をあえて挙げず、中国への直接的な批判をほぼすべて避けていた。
岸田首相はバイデン大統領との間で中国への非難や抗議について合意している。林外相の演説は、その合意を無視する結果となっており、岸田内閣の外務大臣としての米国での公式演説としてはきわめて奇妙な対中融和の傾向を印象づけた。
林芳正氏は2021年11月の外相就任時まで、長年、日中友好議員連盟の事務局長や会長を務め、中国との友好や対話を主張してきた経歴がある。林氏の中国との関与の背景については本コラムでも詳しく伝えた(「林芳正外相が会長を辞任した『日中友好議員連盟』とは何か?」2021年11月17日)。
■随所に対中融和の傾向が目立つ林演説
それでは、今回の林演説における対中忖度、あるいは異様なほどの中国への遠慮として響く特徴を具体的に指摘しよう。
【1】尖閣諸島への攻勢を指摘しない
第1には、林外相はインド太平洋での「一方的な現状変更」や「力の論理」を批判的に指摘しながらも、中国の武装艦艇による尖閣諸島への攻勢にはまったく触れていない点である。
日本固有の領土の尖閣諸島に対して中国が一方的に領有権を主張し、しかも中国海警や人民解放軍海軍の武装艦艇を日本の領海や接続水域に恒常的に侵入させてくる事実こそ、日本にとって最も脅威となる領土の「武力による一方的な現状変更」の動きである。
中国が日本や米国の反撃の展望をみながら、尖閣諸島を武力を使ってでも奪取する意図を抱いていることは明白だといえる。その現実をまったく指摘しない日本国外務大臣の対外的な外交・戦略演説とはなんなのだろう。
【2】ウクライナ侵略を巡る中国の対応を批判しない
第2は、ロシアのウクライナ侵略についてはロシアの国名をはっきり挙げて、厳しい言葉で非難を重ねたが、そのロシアの侵略を許容し、国連などの国際舞台では支援にまで回る中国の動きをまったく批判せず、指摘さえしない点である。
林外相はこの演説でロシアのウクライナ侵略の結果、世界は「2つの陣営」に分かれ、国連でのロシア非難決議などに賛成しない国がかなりの数あることを指摘する。その代表はもちろん中国である。だが林氏は中国の名は挙げず、「中間的な立場の国々に対し、その国の事情にも寄り添いながら、引き続き粘り強く働きかけをしていくことが必要」と述べて、中国の立場に理解を示すような言辞を発したのだ。
【3】不当な行動を指摘しつつ中国の名を挙げない
第3は、インド太平洋における日米両国などを懸念させる中国の不当な行動を指摘しながら、中国の国名をあえて挙げなかった点である。
林氏は、インド太平洋で「東シナ海や南シナ海では力を背景とした一方的な現状変更の試みが継続している」ことや「不透明な開発支援」「経済的威圧」が存在することを述べる。こうした行動や現象の当事者は中国である。だが林氏はその「中国」という主語を述べないのだ。ただそういう現象が起きている、とだけ指摘して、誰が起こしているかを語らない。だから文章としても不自然な表現となっている。
【4】中国と対話を進めるべきと力説
第4は、インド太平洋で他国に脅威を与え、国際秩序を不当に崩す中国の行動を指摘しつつ(ただし「中国」の名は出さない)、日本はひたすら中国への「協力」や「対話」を進めると強調した点である。
林氏は、日中両国は「建設的かつ安定的な関係」を築くことを目指し、そのためには「ハイレベルの率直な対話」が必要だとも力説した。
だがいまの日本にとって、そしてインド太平洋にとっての目前の問題は、中国が国際規範を無視する強圧的な言動を取り、軍事力を大増強して、他国の領土領海を侵し、経済面でも他の諸国を恫喝しているという現実である。その現実を変えるための中国への抑止や圧力こそが、日本にとっても当面の課題のはずだ。
協力や対話というのは単なる外交上の手段である。協力や対話を重ねれば中国の日本に対する政策や行動が変わるという保証はどこにもない。
【5】中国の人権弾圧には一切触れず
第5は、林氏が「中国の国内情勢を論評することは控えたい」と述べて、中国内部のウイグル、チベット、香港などでの人権弾圧には一切触れなかった点である。
林氏はこの演説で、米国が正面から非難し、日本の国会でも批判的に提起する中国共産党政権の国内での人権弾圧にはなにも言及しなかった。演説終了後の短い質疑応答で、米側から「中国との対話が重要だというが、挑戦的な環境下でどう対話を求めるのか」という質問が出ると、林氏は中国の国内情勢は一切論評しないと述べたのである。
そもそも安倍晋三氏が主唱し、米国の政権が主要政策として採用した「自由で開かれたインド太平洋」という戦略標語には、中国共産党政権の独裁体制、人権抑圧体制は「自由でもなく開かれてもいない」という批判が組みこまれていた。その独裁の明確な結果である人権抑圧という側面を、林外相はまったく無視してしまうのである。
■「6カ国協議」主催を奇妙に評価
林外相のワシントンでの演説は、主要部分をみただけでも以上のように中国に対して変に寛容でソフトな特徴が目立つのである。とにかく中国の行動を直接批判したり非難したくない、という思惑さえ感じさせられる。
公正を期すために追記するならば、林外相が演説のなかで中国に対して批判をにじませて提起したのはただ1点、中国の核戦力の増強だった。「中国の核リスクを低減し、透明性を高めることを促す」という発言だった。ただしこの部分は2022年5月の日米首脳会談の共同声明の記述とまったく同じだった。
その一方、林外相演説は、日米両国がインド太平洋での「戦略バランスの回復」を達成することを目標にあげていた。このバランスは明らかに中国の大規模な軍拡への対処である。だが林氏は中国の軍拡や、戦略バランスの現在の不均衡についてはっきり「中国」の実態を挙げては語らない。むしろ北朝鮮の核兵器やミサイル開発の脅威を強調していた。とにかく中国を悪者にしたくない、という配慮を感じさせるのだ。
こうした対中観の歪んだ傾向をさらに実感させたのは、林氏が演説のなかで、中国がかつて「北朝鮮の核開発を防ぐ」と主張して6カ国協議を主催したことを前向きに評価し、日本が中国と安定した関係を築くべき理由に挙げた点だった。
あの6カ国協議は私もずいぶんと細かく取材し報道したが、結局は北朝鮮の核開発の時間稼ぎとしかならなかった。しかも主催国の中国がどこまで真剣に北朝鮮の非核化を求めていたかも疑問として残った。日本の外務大臣がいまの時点でその6カ国会議を理由に中国との友好を説くというのは、これまた奇妙な発想である。
ちなみに林外相は、岸田内閣が最優先課題だとする北朝鮮による日本人拉致事件解決については、今回の演説で「早期に解決されねばならない」と一言、述べただけだった。
岸田政権の林芳正外相が7月末、米国ワシントンの研究機関で日本の外交・戦略政策について演説した。インド太平洋での国際秩序を侵す中国に、日本がどう対応するかを主眼とするはずの演説だった。だが、林外相は中国への批判を徹底して避け、日中間の「協力」と「対話」を強調する対中融和の主唱に終始した。
米国の国政の場では、ペロシ下院議長の台湾訪問計画に中国側が軍事的な威嚇を発したことへの反発が高まり、バイデン大統領は習近平国家主席との電話会談で中国のウイグルでの人権弾圧に抗議したばかりである。しかし、林外相はこの演説で「中国の国内情勢は論じない」と言明して、中国側の人権問題などには一切触れない態度を明確にし、異様なほどの対中忖度を示す結果となった。
■岸田首相とバイデン大統領の合意を無視
林外相は日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)への参加を主目的に7月28日からワシントンを訪問した。翌29日午後には、米国の大手民間研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」で「歴史的な岐路でのわれわれの将来=法の支配に基づく自由で開かれた包括的な国際秩序」と題する演説を行った。
私もCSISへ出かけ、80人ほどの聴衆に入って、じっくりと演説に耳を傾けた。演説は質疑応答も含めて40分ほどだった。林氏はハーバード大学院での学習や米国連邦議会でのインターン研修の経験があり、英語でよどみなく言葉を進めたが、事前に準備した草稿を読むことに徹していた。
演説内容は、いまの世界は欧州とインド太平洋の両方で既存の国際秩序への挑戦や脅威が起きており、国際情勢は危機に面し、日米両国や西欧諸国は戦後最大の「歴史的な岐路」に立っているとする認識を基礎としていた。
その「岐路」を招いた主因は、欧州ではロシアのウクライナ侵略、アジア太平洋では中国の無法な膨張だという認識は、2022年5月の日米首脳会談の共同声明などで表明されている。だが、今回の林演説は「中国」という国名をあえて挙げず、中国への直接的な批判をほぼすべて避けていた。
岸田首相はバイデン大統領との間で中国への非難や抗議について合意している。林外相の演説は、その合意を無視する結果となっており、岸田内閣の外務大臣としての米国での公式演説としてはきわめて奇妙な対中融和の傾向を印象づけた。
林芳正氏は2021年11月の外相就任時まで、長年、日中友好議員連盟の事務局長や会長を務め、中国との友好や対話を主張してきた経歴がある。林氏の中国との関与の背景については本コラムでも詳しく伝えた(「林芳正外相が会長を辞任した『日中友好議員連盟』とは何か?」2021年11月17日)。
■随所に対中融和の傾向が目立つ林演説
それでは、今回の林演説における対中忖度、あるいは異様なほどの中国への遠慮として響く特徴を具体的に指摘しよう。
【1】尖閣諸島への攻勢を指摘しない
第1には、林外相はインド太平洋での「一方的な現状変更」や「力の論理」を批判的に指摘しながらも、中国の武装艦艇による尖閣諸島への攻勢にはまったく触れていない点である。
日本固有の領土の尖閣諸島に対して中国が一方的に領有権を主張し、しかも中国海警や人民解放軍海軍の武装艦艇を日本の領海や接続水域に恒常的に侵入させてくる事実こそ、日本にとって最も脅威となる領土の「武力による一方的な現状変更」の動きである。
中国が日本や米国の反撃の展望をみながら、尖閣諸島を武力を使ってでも奪取する意図を抱いていることは明白だといえる。その現実をまったく指摘しない日本国外務大臣の対外的な外交・戦略演説とはなんなのだろう。
【2】ウクライナ侵略を巡る中国の対応を批判しない
第2は、ロシアのウクライナ侵略についてはロシアの国名をはっきり挙げて、厳しい言葉で非難を重ねたが、そのロシアの侵略を許容し、国連などの国際舞台では支援にまで回る中国の動きをまったく批判せず、指摘さえしない点である。
林外相はこの演説でロシアのウクライナ侵略の結果、世界は「2つの陣営」に分かれ、国連でのロシア非難決議などに賛成しない国がかなりの数あることを指摘する。その代表はもちろん中国である。だが林氏は中国の名は挙げず、「中間的な立場の国々に対し、その国の事情にも寄り添いながら、引き続き粘り強く働きかけをしていくことが必要」と述べて、中国の立場に理解を示すような言辞を発したのだ。
【3】不当な行動を指摘しつつ中国の名を挙げない
第3は、インド太平洋における日米両国などを懸念させる中国の不当な行動を指摘しながら、中国の国名をあえて挙げなかった点である。
林氏は、インド太平洋で「東シナ海や南シナ海では力を背景とした一方的な現状変更の試みが継続している」ことや「不透明な開発支援」「経済的威圧」が存在することを述べる。こうした行動や現象の当事者は中国である。だが林氏はその「中国」という主語を述べないのだ。ただそういう現象が起きている、とだけ指摘して、誰が起こしているかを語らない。だから文章としても不自然な表現となっている。
【4】中国と対話を進めるべきと力説
第4は、インド太平洋で他国に脅威を与え、国際秩序を不当に崩す中国の行動を指摘しつつ(ただし「中国」の名は出さない)、日本はひたすら中国への「協力」や「対話」を進めると強調した点である。
林氏は、日中両国は「建設的かつ安定的な関係」を築くことを目指し、そのためには「ハイレベルの率直な対話」が必要だとも力説した。
だがいまの日本にとって、そしてインド太平洋にとっての目前の問題は、中国が国際規範を無視する強圧的な言動を取り、軍事力を大増強して、他国の領土領海を侵し、経済面でも他の諸国を恫喝しているという現実である。その現実を変えるための中国への抑止や圧力こそが、日本にとっても当面の課題のはずだ。
協力や対話というのは単なる外交上の手段である。協力や対話を重ねれば中国の日本に対する政策や行動が変わるという保証はどこにもない。
【5】中国の人権弾圧には一切触れず
第5は、林氏が「中国の国内情勢を論評することは控えたい」と述べて、中国内部のウイグル、チベット、香港などでの人権弾圧には一切触れなかった点である。
林氏はこの演説で、米国が正面から非難し、日本の国会でも批判的に提起する中国共産党政権の国内での人権弾圧にはなにも言及しなかった。演説終了後の短い質疑応答で、米側から「中国との対話が重要だというが、挑戦的な環境下でどう対話を求めるのか」という質問が出ると、林氏は中国の国内情勢は一切論評しないと述べたのである。
そもそも安倍晋三氏が主唱し、米国の政権が主要政策として採用した「自由で開かれたインド太平洋」という戦略標語には、中国共産党政権の独裁体制、人権抑圧体制は「自由でもなく開かれてもいない」という批判が組みこまれていた。その独裁の明確な結果である人権抑圧という側面を、林外相はまったく無視してしまうのである。
■「6カ国協議」主催を奇妙に評価
林外相のワシントンでの演説は、主要部分をみただけでも以上のように中国に対して変に寛容でソフトな特徴が目立つのである。とにかく中国の行動を直接批判したり非難したくない、という思惑さえ感じさせられる。
公正を期すために追記するならば、林外相が演説のなかで中国に対して批判をにじませて提起したのはただ1点、中国の核戦力の増強だった。「中国の核リスクを低減し、透明性を高めることを促す」という発言だった。ただしこの部分は2022年5月の日米首脳会談の共同声明の記述とまったく同じだった。
その一方、林外相演説は、日米両国がインド太平洋での「戦略バランスの回復」を達成することを目標にあげていた。このバランスは明らかに中国の大規模な軍拡への対処である。だが林氏は中国の軍拡や、戦略バランスの現在の不均衡についてはっきり「中国」の実態を挙げては語らない。むしろ北朝鮮の核兵器やミサイル開発の脅威を強調していた。とにかく中国を悪者にしたくない、という配慮を感じさせるのだ。
こうした対中観の歪んだ傾向をさらに実感させたのは、林氏が演説のなかで、中国がかつて「北朝鮮の核開発を防ぐ」と主張して6カ国協議を主催したことを前向きに評価し、日本が中国と安定した関係を築くべき理由に挙げた点だった。
あの6カ国協議は私もずいぶんと細かく取材し報道したが、結局は北朝鮮の核開発の時間稼ぎとしかならなかった。しかも主催国の中国がどこまで真剣に北朝鮮の非核化を求めていたかも疑問として残った。日本の外務大臣がいまの時点でその6カ国会議を理由に中国との友好を説くというのは、これまた奇妙な発想である。
ちなみに林外相は、岸田内閣が最優先課題だとする北朝鮮による日本人拉致事件解決については、今回の演説で「早期に解決されねばならない」と一言、述べただけだった。
古森氏も演説を聴きに参加されたのだそうです。
演説内容は、いまの世界は欧州とインド太平洋の両方で既存の国際秩序への挑戦や脅威が起きており、国際情勢は危機に面し、日米両国や西欧諸国は戦後最大の「歴史的な岐路」に立っているとする認識を基礎としていたのだそうです。
その「岐路」を招いた主因は、欧州ではロシアのウクライナ侵略、アジア太平洋では中国の無法な膨張だという認識は、2022年5月の日米首脳会談の共同声明などで表明されている。だが、今回の林演説は「中国」という国名をあえて挙げず、中国への直接的な批判をほぼすべて避けていたと、古森氏。
日本の外務大臣としての米国での公式演説としてはきわめて奇妙な対中融和の傾向を印象づけたとも。
林芳正氏は2021年11月の外相就任時まで、長年、日中友好議員連盟の事務局長や会長を務め、中国との友好や対話を主張してきた経歴があると古森氏。
余談ですが、岸田氏は、「広島県日中友好協会」の会長で、林氏は外務大臣就任に伴い、議連の会長は辞任しましたが、県の友好協会の座に就いたままです。
「日中友好協会」岸田首相も地元広島で会長、鈴木財務相は岩手の協会顧問 外交政策にマイナスも 与党議員「ポスト離れた方がいい」 (1/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト
古森氏は、岸田氏とバイデン氏の関係を好評価にとれる内容で記述しておられますが、遊爺は、北京の冬季五輪に際し、バイデン氏が「外交的ボイコット」を提唱した際に、英国などは素早く賛同しましたが、岸田内閣は、安倍氏や党内有志が対応を促す中、対中忖度での、米中二股外交に揺れ、対応が遅れました。
その、二股外交姿勢派、当然バイデン氏にも伝わり、当時、岸田氏が首相就任挨拶で、面談を求めていましたが、回答を保留され、結局オンライン会談に格下げされる事件がありました。岸田氏は、長年かけて築いてこられた、日米首脳の関係に傷を生じさせる大失政を犯したのでした。
なので、遊爺は、岸田、林両氏は一蓮托生の見解です。
古森氏は、今回の林演説における対中忖度、あるいは異様なほどの中国への遠慮として響く特徴を具体的に 4点指摘しておられます。
第1には、林外相はインド太平洋での「一方的な現状変更」や「力の論理」を批判的に指摘しながらも、中国の武装艦艇による尖閣諸島への攻勢にはまったく触れていない事。
日本固有の領土の尖閣諸島に対して中国が一方的に領有権を主張し、しかも中国海警や人民解放軍海軍の武装艦艇を日本の領海や接続水域に恒常的に侵入させてくる事実こそ、日本にとって最も脅威となる領土の「武力による一方的な現状変更」の動きに、全く言及していない。
特に、日米同盟の対象となる事項で、米国民には広く現状を訴えるのが外務大臣の役目。
第2は、ロシアのウクライナ侵略についてはロシアの国名をはっきり挙げて、厳しい言葉で非難を重ねたが、そのロシアの侵略を許容し、国連などの国際舞台では支援にまで回る中国の動きをまったく批判せず、指摘さえしない点。
林氏は、国連でのロシア非難決議などに賛成しない国がかなりの数あることを指摘する。その代表はもちろん中国である。だが林氏は中国の名は挙げず、「中間的な立場の国々に対し、その国の事情にも寄り添いながら、引き続き粘り強く働きかけをしていくことが必要」と述べて、中国の立場に理解を示すような言辞を発した。
第3は、インド太平洋における日米両国などを懸念させる中国の不当な行動を指摘しながら、中国の国名をあえて挙げなかった点。
林氏は、インド太平洋で「東シナ海や南シナ海では力を背景とした一方的な現状変更の試みが継続している」ことや「不透明な開発支援」「経済的威圧」が存在することを述べる。こうした行動や現象の当事者は中国である。だが林氏はその「中国」という主語を述べないのだ。ただそういう現象が起きている、とだけ指摘して、誰が起こしているかを語らない。
第4は、インド太平洋で他国に脅威を与え、国際秩序を不当に崩す中国の行動を指摘しつつ(ただし「中国」の名は出さない)、日本はひたすら中国への「協力」や「対話」を進めると強調した点。
だがいまの日本にとって、そしてインド太平洋にとっての目前の問題は、中国が国際規範を無視する強圧的な言動を取り、軍事力を大増強して、他国の領土領海を侵し、経済面でも他の諸国を恫喝しているというのが現実。
その現実を変えるための中国への抑止や圧力こそが、日本にとっても当面の課題のはずだと、古森氏。
第5は、林氏が「中国の国内情勢を論評することは控えたい」と述べて、中国内部のウイグル、チベット、香港などでの人権弾圧には一切触れなかった点。
林外相のワシントンでの演説は、主要部分をみただけでも以上のように中国に対して変に寛容でソフトな特徴が目立つのである。とにかく中国の行動を直接批判したり非難したくない、という思惑さえ感じさせられると、古森氏。
同感です。
林外相演説は、日米両国がインド太平洋での「戦略バランスの回復」を達成することを目標にあげていた。このバランスは明らかに中国の大規模な軍拡への対処である。だが林氏は中国の軍拡や、戦略バランスの現在の不均衡についてはっきり「中国」の実態を挙げては語らない。むしろ北朝鮮の核兵器やミサイル開発の脅威を強調していた。とにかく中国を悪者にしたくない、という配慮を感じさせるとも。
親中の、岸田、林コンビ。
中国、ロシアの国際法を無視した覇権拡大に、自由主義を尊重する多くの国々が対抗姿勢を強める中、逆行していますが、それで日本はいいのでしょうか。
聞く耳が売りで、「けんとうし」とやゆされる無為無策の岸田政権。何もしないので批判され難く、内閣支持率が高止まり。その正体がすこしづつ見え始め、支持率も下落の兆候は見え始めていますが。。
鎮えとなっていた安倍氏の亡き後、国民がその役目を果たさねばなりませんね。
この花の名前は、キレンゲショウマ
↓よろしかったら、お願いします。
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