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四国電力伊方原子力発電所 3号機について、広島、松山両市の住民が運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で、広島高裁野々上友之裁判長は13日、地裁の禁断を覆し、差し止めを命じました。仮処分で原発を止める司法判断は高裁では初めてで、火山の危険性を理由にした差し止めも初となるのだそうです。
但し、広島地裁で仮処分とは別に争われている差し止め訴訟で異なる判断が出る可能性があるとして、差し止め期間を来年9月30日までとしています。
伊方3号機は2015年7月、原子力規制委の安全審査に「合格」しており、規制委の更田豊志(ふけたとよし)委員長は広島高裁決定後の記者会見で、「東京電力福島第一原発事故を踏まえて、様々な国内外の知見や経験から、ふさわしいと思う基準を策定し、それに基づいて審査をして許可や認可を行っている」と述べ、審査の正当性を強調しています。
野々上裁判長は、地震や津波対策ではなく、伊方原発の約130キロ南西にあり、約9万年前に約160キロ先の山口県付近まで火砕流が到達する噴火をしたとされる阿蘇山について取り上げたのですね。
四電側は、原発敷地内のボーリング調査などから、火砕流は当時届いていないと主張したのだそうですが、野々上裁判長は、火砕流の動きを見極めるのは難しいとする火山学者の見解などを踏まえ、「火砕流が到達していないと判断するのは困難」と指摘し、運転期間中に火砕流が影響を及ぼす可能性は低いとして安全性を認めた規制委の判断を「不合理」と結論づけたのだそうです。
同時に、カルデラ火山で広範囲に壊滅的な被害をもたらす破局的噴火が1万年に1回程度で「社会通念上は無視できるリスク」とも。。
また、火山以外の10の実質的争点については、四電の主張に「不合理な点はない」とし、広島地裁で仮処分とは別に争われている差し止め訴訟で異なる判断が出る可能性があるとして、差し止め期間を来年9月30日までとしています。
野々上裁判長は、2009年には裁判長を務めた広島地裁の原爆症認定訴訟で、当時としては一連の集団訴訟で初めて認定行政に関する国の責任に踏み込む判断を示し、国に被爆者らへの賠償を命じる判決を言い渡した方なのだそうですが、今月下旬に定年で退官されるのだそうです。
原子力規制委員会の「火山ガイド」で、「40年の運転期間中に約160キロ圏内にある火山が噴火し、火砕流が到達する可能性が十分小さいと評価できない場合は原発を立地できない」としている所が野々上裁判長の判断の要点ですね。
野々上裁判長は、阿蘇山の噴火の火砕流が、約9万年前に約160キロ先の山口県付近まで届いた実績がある。火砕流の動きを見極めるのは難しいとする火山学者の見解などを踏まえ、「火砕流が到達していないと判断するのは困難」と指摘。四電側は、原発敷地内のボーリング調査などから、火砕流は当時届いていないと主張。この対立が要。
破局的噴火が1万年に1回程度で「社会通念上は無視できるリスク」とも言う野々上裁判長。
そもそも地震や火山噴火については科学的には諸説があり、明確な答えはないのですから、どの科学者の説をとるかで判断が違ってしまいます。
地動説を唱え、有罪とされ地球が動くという説を放棄する旨が書かれた異端誓絶文を読み上げさせられたガリレオのことを思い浮かべます。
また、人間が造るもので完全無欠なものはありません。飛行機や車は事故を起こすから使用禁止にするといった判決は聞いたことがありません。(沖縄では、危険だから基地や小学校を移転させようと言うのに、移転に反対して危険状態をわざわざ継続させておきながら、事故があると大騒ぎする輩がいますが。。)
繰り返しになりますが、1万年に1回程度のリスクでは「社会通念上は無視できるリスク」と言いながら、差し止め判決を下す裁判官が出現するのは、科学的根拠が不確かで諸説があり未知のものを裁判で裁く限界です。
ガリレオの例はありますが、その時代の科学の粋を結集した議論にゆだね、諸説の亜流に個々の裁判官が流されないことが必要でしょう。それがなければ、裁判の都度諸説で揺れ、社会が混乱します。最高裁の判断を待たず、個々の裁判官の判断で即時効力を発揮し、経済や国民生活に大きく直結する仮処分の案件が、粋を集めた機関の結論に逆行する判決の場合は、工夫が必要と考えます。
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但し、広島地裁で仮処分とは別に争われている差し止め訴訟で異なる判断が出る可能性があるとして、差し止め期間を来年9月30日までとしています。
伊方原発3号機差し止め 高裁判断で初 (12/14 産経)
四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、運転を差し止める決定をした。野々上裁判長は、熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際に約130キロの距離にある点を重視し「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断した。
東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働や運転を禁じる高裁判断は初めて。3号機は定期検査中で、四国電が来年1月に稼働を再開する計画は困難となり、政府や電力会社の原発再稼働方針には再び大きな打撃となった。決定は広島地裁で審理中の本訴訟で「異なる判断が出る可能性もある」などとして、差し止め期間を来年9月30日までとし、事実上、最終判断を本訴訟に委ねた。四国電は高裁に異議と執行停止を申し立てる方針。
決定は、原子力規制委員会が安全性を審査する内規として策定した「火山ガイド」を基に、四国電が実施した伊方原発内の地質調査やシミュレーションを検討。約9万年前に発生した阿蘇カルデラの噴火で火砕流が原発敷地内に到達した可能性が小さいとはいえないとして、四国電の想定は過小だと判断した。
火山の危険性に関し、規制委が原発の新規制基準に適合するとしたのは不合理で「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と結論付けた。火山以外の部分は新基準の合理性などを認め、適合性の判断も妥当とした。
住民側弁護団は「被爆地の裁判所でこれ以上放射線に苦しむ人々を増やさない決定をした意義は大きい」との声明を出し、四国電は「極めて残念。到底承服できない」とコメントした。
四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、運転を差し止める決定をした。野々上裁判長は、熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際に約130キロの距離にある点を重視し「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断した。
東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働や運転を禁じる高裁判断は初めて。3号機は定期検査中で、四国電が来年1月に稼働を再開する計画は困難となり、政府や電力会社の原発再稼働方針には再び大きな打撃となった。決定は広島地裁で審理中の本訴訟で「異なる判断が出る可能性もある」などとして、差し止め期間を来年9月30日までとし、事実上、最終判断を本訴訟に委ねた。四国電は高裁に異議と執行停止を申し立てる方針。
決定は、原子力規制委員会が安全性を審査する内規として策定した「火山ガイド」を基に、四国電が実施した伊方原発内の地質調査やシミュレーションを検討。約9万年前に発生した阿蘇カルデラの噴火で火砕流が原発敷地内に到達した可能性が小さいとはいえないとして、四国電の想定は過小だと判断した。
火山の危険性に関し、規制委が原発の新規制基準に適合するとしたのは不合理で「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と結論付けた。火山以外の部分は新基準の合理性などを認め、適合性の判断も妥当とした。
住民側弁護団は「被爆地の裁判所でこれ以上放射線に苦しむ人々を増やさない決定をした意義は大きい」との声明を出し、四国電は「極めて残念。到底承服できない」とコメントした。
伊方3号機は2015年7月、原子力規制委の安全審査に「合格」しており、規制委の更田豊志(ふけたとよし)委員長は広島高裁決定後の記者会見で、「東京電力福島第一原発事故を踏まえて、様々な国内外の知見や経験から、ふさわしいと思う基準を策定し、それに基づいて審査をして許可や認可を行っている」と述べ、審査の正当性を強調しています。
[スキャナー]「破局的噴火」を強調…伊方原発差し止め 新基準には「欠陥なし」 : 読売プレミアム
<前略>
規制委 正当な審査主張
阿蘇山では約9万年前に国内最大級の破局的噴火が起きた。伊方原発の敷地内ではこの時の火砕流堆積たいせき物が確認されておらず、四電は「火砕流が到達する可能性は十分低い」と判断した。伊方3号機は2015年7月、原子力規制委の安全審査に「合格」した。
規制委の更田豊志(ふけたとよし)委員長は広島高裁決定後の記者会見で、「東京電力福島第一原発事故を踏まえて、様々な国内外の知見や経験から、ふさわしいと思う基準を策定し、それに基づいて審査をして許可や認可を行っている」と述べ、審査の正当性を強調した。
しかし、広島高裁は「火砕流が到達していないと判断することは困難」と結論付けた。規制委の「火山ガイド」は、火砕流が到達する可能性が「十分小さい」場合に限り、原発の設置を認めている。地震の揺れや津波の高さなどと違って目安となる数値が明示されていないため、判断に違いが生じうる。
<後略>
<前略>
規制委 正当な審査主張
阿蘇山では約9万年前に国内最大級の破局的噴火が起きた。伊方原発の敷地内ではこの時の火砕流堆積たいせき物が確認されておらず、四電は「火砕流が到達する可能性は十分低い」と判断した。伊方3号機は2015年7月、原子力規制委の安全審査に「合格」した。
規制委の更田豊志(ふけたとよし)委員長は広島高裁決定後の記者会見で、「東京電力福島第一原発事故を踏まえて、様々な国内外の知見や経験から、ふさわしいと思う基準を策定し、それに基づいて審査をして許可や認可を行っている」と述べ、審査の正当性を強調した。
しかし、広島高裁は「火砕流が到達していないと判断することは困難」と結論付けた。規制委の「火山ガイド」は、火砕流が到達する可能性が「十分小さい」場合に限り、原発の設置を認めている。地震の揺れや津波の高さなどと違って目安となる数値が明示されていないため、判断に違いが生じうる。
<後略>
野々上裁判長は、地震や津波対策ではなく、伊方原発の約130キロ南西にあり、約9万年前に約160キロ先の山口県付近まで火砕流が到達する噴火をしたとされる阿蘇山について取り上げたのですね。
四電側は、原発敷地内のボーリング調査などから、火砕流は当時届いていないと主張したのだそうですが、野々上裁判長は、火砕流の動きを見極めるのは難しいとする火山学者の見解などを踏まえ、「火砕流が到達していないと判断するのは困難」と指摘し、運転期間中に火砕流が影響を及ぼす可能性は低いとして安全性を認めた規制委の判断を「不合理」と結論づけたのだそうです。
同時に、カルデラ火山で広範囲に壊滅的な被害をもたらす破局的噴火が1万年に1回程度で「社会通念上は無視できるリスク」とも。。
また、火山以外の10の実質的争点については、四電の主張に「不合理な点はない」とし、広島地裁で仮処分とは別に争われている差し止め訴訟で異なる判断が出る可能性があるとして、差し止め期間を来年9月30日までとしています。
野々上裁判長は、2009年には裁判長を務めた広島地裁の原爆症認定訴訟で、当時としては一連の集団訴訟で初めて認定行政に関する国の責任に踏み込む判断を示し、国に被爆者らへの賠償を命じる判決を言い渡した方なのだそうですが、今月下旬に定年で退官されるのだそうです。
原子力規制委員会の「火山ガイド」で、「40年の運転期間中に約160キロ圏内にある火山が噴火し、火砕流が到達する可能性が十分小さいと評価できない場合は原発を立地できない」としている所が野々上裁判長の判断の要点ですね。
野々上裁判長は、阿蘇山の噴火の火砕流が、約9万年前に約160キロ先の山口県付近まで届いた実績がある。火砕流の動きを見極めるのは難しいとする火山学者の見解などを踏まえ、「火砕流が到達していないと判断するのは困難」と指摘。四電側は、原発敷地内のボーリング調査などから、火砕流は当時届いていないと主張。この対立が要。
破局的噴火が1万年に1回程度で「社会通念上は無視できるリスク」とも言う野々上裁判長。
そもそも地震や火山噴火については科学的には諸説があり、明確な答えはないのですから、どの科学者の説をとるかで判断が違ってしまいます。
地動説を唱え、有罪とされ地球が動くという説を放棄する旨が書かれた異端誓絶文を読み上げさせられたガリレオのことを思い浮かべます。
また、人間が造るもので完全無欠なものはありません。飛行機や車は事故を起こすから使用禁止にするといった判決は聞いたことがありません。(沖縄では、危険だから基地や小学校を移転させようと言うのに、移転に反対して危険状態をわざわざ継続させておきながら、事故があると大騒ぎする輩がいますが。。)
繰り返しになりますが、1万年に1回程度のリスクでは「社会通念上は無視できるリスク」と言いながら、差し止め判決を下す裁判官が出現するのは、科学的根拠が不確かで諸説があり未知のものを裁判で裁く限界です。
ガリレオの例はありますが、その時代の科学の粋を結集した議論にゆだね、諸説の亜流に個々の裁判官が流されないことが必要でしょう。それがなければ、裁判の都度諸説で揺れ、社会が混乱します。最高裁の判断を待たず、個々の裁判官の判断で即時効力を発揮し、経済や国民生活に大きく直結する仮処分の案件が、粋を集めた機関の結論に逆行する判決の場合は、工夫が必要と考えます。
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この花の名前は、紫蘭
↓よろしかったら、お願いします。
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