遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

日本を経済停滞とは「作り話」だと

2012-01-18 23:36:15 | 日本を護ろう
 日本の経済をバブルがはじけ衰退する象徴として、反面教師に取り上げる風潮があります。旧い話ですが、オバマ大統領は、2009年就任後初めての記者会見で、「90年代の日本は、大胆で迅速な対応をとらなかった。その結果として、彼らは『失われた10年』に苦しんだ」と語り、反面教師として日本の経験に学ぶことが重要との認識を示してもいました。「日本みたいにならないように」「日本みたいになっちゃうよ」と欧米のメディアが書きたててきました。
 ところが、日本を経済停滞の反面教師として取り上げるのは「作り話だ」と、英紙「フィナンシャル・タイムズ」や米誌「フォーブス」の元編集者のエイモン・フィングルトン氏が、米誌「ニューヨーク・タイムズ」に寄稿していて、賛否で物議をかもしているのだそうです。

 
asahi.com(朝日新聞社):「日本の失敗に学べ」 オバマ大統領、初の記者会見 - 09米政権交代
 アメリカひどいよ、日本みたいだ - 遊爺雑記帳
 
日本の失われた数十年は作り話か? 経済危機直面の欧米で議論(gooニュース・JAPANなニュース)


<前略>
 かねてから「日本衰退論は作り話だ」と主張していた日本通の経済ジャーナリストが1月8日付の米紙『ニューヨーク・タイムズ』に「The Myth of Japan’s Failure(日本の失敗という作り話)」という題で寄稿。それに対して「その通り」という賛成と、「いや、作り話だという言い分自体が作り話だ」という反論が(一部で)盛り上がったという次第です。
<中略>

 寄稿したのは、エイモン・フィングルトン氏。英紙『フィナンシャル・タイムズ』や米誌『フォーブス』の元編集者で、日本に詳しいアイルランド出身の経済記者です。いわく、経済停滞が進行中のアメリカでアメリカ人は「進むべき道を間違うと日本みたいになってしまうと繰り返し警告されている」、「たとえばCNNのアナリストは日本が『失意の国で後退している国だ』と話していた」と。しかしそれは違う、日本を経済停滞の反面教師として取り上げるのは「作り話 (myth) だ」というのが、フィングルトン氏の主張です。
「色々な指標で計れば、1990年1月の株価暴落で始まったいわゆる失われた数十年といわれる期間に日本経済はとても好調だった。重要な指標を見るなら、日本はアメリカよりずっと好成績を残している。
株価急落にもかかわらず日本は国民の生活レベルを向上させてきた。いずれ時間がたてば、この時代は大成功した時代だったと評される可能性は大きい」と。
そしてフィングルトン氏は欧米メディアの経済記事が日本を笑い者にするのは間違っているとして、いくつかの指標を挙げます。たとえば
1989年から2009年にかけて日本の平均寿命が4.2年伸びたこと。これは医療が優れているからだと。そして日本はインターネットのインフラを見事に向上させたと。90年代には整備が遅れていると馬鹿にされていたが、最近では世界最速のインターネット網を備えた世界トップ50都市の内38都市が日本だという調査結果もあると。加えて1989年に比べて日本円は対ドルで87%、対ポンドで94%も価値を挙げているし、失業率4.2%はアメリカの約半分だし、1989年以降のアメリカが経常赤字を4倍以上に増やしているのに対して同時期の日本の経常黒字は3倍に増えていると。

フィングルトン氏はさらに、複数の日本ウオッチャーによる指摘を例示し、「アメリカ人が日本に降り立った瞬間、『失われた数十年』など作り事だったと気づく」、「日本の
空港はここ数年で拡張され、最新鋭のものに改良されているからだ」と。加えて「日本人はアメリカ人より身なりがきちんとしているし、ポルシェやアウディやベンツなど高級車の最新型に乗っている。日本ほどペットが甘やかされている国は見たことがないし、国のインフラは常に改良され進化し続けている」と。 ピカピカの外国車やブランドものの服を着たワンコをやたら見かけるのは、たとえば東京でも一部の地域限定なのですが……と、私はここで思いました。またフィングルトン氏の書く「日本政治の失策の結果とされている日本の人口減は、かつて食糧不足に苦しんできた日本人の、国民的選択によるものだ」という部分にも、つい首をかしげました。その一方で、欧米で時に言われるほど日本はひどい状態だろうかと首をかしげてきた私は、「日本は決してダメではない」という同氏の主張に、そうだよなあと何度かうなずいたわけです。
「日本は衰退などしていない」というのはフィングルトン氏のかねてからの持論で、たとえば2005年4月にも「日は昇り続けている」と題して、「史上最大の経常黒字を発表したアジアの国は日本だ。アメリカ経済にとって最も大事なアジアの国は、依然として中国ではなく日本だ。個人所得のレベルで比べても、アメリカが指標とするべきは中国ではなく日本だ」と書いていました。それから7年たって、中国の存在感はますます高まっているわけですが、それでもフィングルトン氏は「日本は衰退などしていない」と主張を重ねているわけです。

<後略>

 記事の筆者・加藤氏も、ブランドものの身なりや、ポルシェ・アウディ・ベンツの話が出てくると首をかしげておられ、就業率や若者の失業率の推移など統計を見れば日本経済の状態が1990年以降悪化を続けたのは一目瞭然で、「円高が続くから日本経済は堅調だ」「失われた10年など作り事だ」というフィングルトン氏の主張は、それは違うのではないかと説く、『ワシントン・ポスト』系のオピニオンサイト『Slate』での政治経済ライター・マシュー・イグレシアス氏の論調を支持しておられます。

 遊爺は、海外への若者の脱出の部分を除けば、その後に紹介されている、以下の『ニューヨーク・タイムズ』に投稿された、マイケル・ジーレンジガー氏の説に耳を傾けるべきと考えますが、貧乏性なのでしょうか。
 

いやいや、日本は本当にひどいことになっているのだ、フィングルトン氏は全く間違っているという反論もありました。『ニューヨーク・タイムズ』には、かつて『ナイト・リダー』系列各紙の東京特派員だったマイケル・ジーレンジガー氏が投書し、「日本は縮小しつつあり、ますます内向きになっている。(世界における)重要性を失いつつある国だ」とフィングルトン氏に反論。企業への忠誠に縛られて夫たちは家庭にいる暇がない。そんな社会で女性たちは子供を産もうとしないし、政治は信用を失い、公的債務はGDPの2倍以上。オリンパス問題は日本企業がいかに身内意識に汚染されているかの証拠だったし、日本がいかに危機に対応できないかは原発事故で改めてあらわになったと、これぞ通説とも言える日本衰退論をたたみかけています。「アメリカが力を失っているからといって、日本が力を増したわけではない」「日本社会は個人を応援しない。そんな日本を脱出して個人を支えてくれる社会を求めて、(アメリカの)ブルックリンやサンフランシスコに移住してきた何千人もの日本の若者に聞いてみるといい」とも。

日本を生きづらく感じて海外に脱出したいという思い、それは私にもありましたから、よく分かります。一方で欧米を生きづらく感じて日本にやってくる人も(少数ですが)いるわけで、必ずしも「日本を脱出する若者がいる=日本はダメ」にはならないのでは? 私はついついこういう話になると、「それは個人個人の感じ方の違いではないですか?」と思ってしまい、十把一絡げな総論を嫌うクセがあるので、「その個人の感じ方の違いが日本では尊重されないんだ、だからダメなんだ」と思う人とは、話がぐるぐるしそうな気もします。

 日本を高く評価してもらえるのは嬉しい話ですし、極度に自信喪失に陥る必要はないとは思いますが、決して楽観できる状況にあるとは言えませんね。
 日本の窮状は、日本特有のものではなく、むしろ資本主義国の先端を行っているもので、反面教師として後に続く国々が学んでくれて、対処方法を見出してくれる助けになればいいし、そこから日本は逆に学べばいいと考えるのですが、どうやら欧州も、米国も次々と泥沼にはまっている様に見えます。財政赤字や少子化が、日本ほどにはひどくないところが大きな差ではあります。
 日本の数少ない強さであった、貿易収支の黒字が、原発停止に伴うLNG等の化石燃料の輸入増で、赤字への転落が定着してきています。(円高でなかったらもっと大きな赤字になっている。)
 財政赤字解消への政策(税と社会保障の一体改革、行政改革)、経済活性化への政策(TPP、農林水畜産業改革)の停滞は、政治家のせいなのでしょうか、選挙権を持つ国民のせいなのでしょうか。
 日本国債のデフォルトまで、残された時間と施策は、どんどん狭まっています。




  この花の名前は、ヤマラッキョウ  撮影場所=六甲高山植物園

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民主党の正体  矛盾と欺瞞と疑惑に満ちた、日本人への恐怖の罠(OAK MOOK 305 撃論ムック)






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