野田内閣のスタートに際し、読売、日経、産経の3紙が政権に期待することを載せていました。読売と産経が、外交・安保を挙げ、日系が産業の空洞化を挙げていました。各紙それぞれのカラーが示されているとも言えますね。
外交立て直し まずは日米同盟の再構築だ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
【阿比留瑠比の政論】仏の顔も三度まで 外交・安保で正道を歩め - MSN産経ニュース
遊爺も、財務大臣の実績を誇る野田氏の内閣ですから、産業空洞化回避に注目してみたいと考えます。
企業がものづくりの拠点を海外に移す動きが増えてきた。円高や高い法人税率、自由貿易協定(FTA)への取り組みの遅れなど、「六重苦」「七重苦」と呼ばれる不利な競争条件が原因だ。野田新政権はこうした産業空洞化の兆しに一刻も早く対処していく必要がある。
自動車業界では今年、海外への設備投資が国内投資の2倍に増える見通しだ。1ドル=80円を超す円高が続くことにいら立ちが募り、「日本では働けど働けどいっこうに報われない」などと話す経営者が多い。
円高だけではない。ある自動車大手は昨年、韓国の中堅メーカーを買収し、輸出拠点にしようと考えた。韓国は米欧、南米とのFTAが進む。10年以内には世界の6割に相当する年間4千万台の市場で輸出への関税が免除されるか、安くなる。日本からの輸出より5倍の地域で恩恵が受けられるのは魅力だった。
買収は実らなかった。しかしその韓国では今年、日本企業の大型投資が相次いでいる。炭素繊維や有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)など、いずれも最先端の分野で技術を移転、現地生産や研究開発をするという。韓国には先端技術を日本より先に導入したいと考える自動車、電機メーカーが多い。しかもFTAの網が巡らされ、輸出拠点として有利との見方も定着してきた。
誘致を進めたのは、韓国政府だった。法人税を中心とする税の減免、ウォン安、FTA――。さらには日本の半分以下とされる電気料金の安さを強調し、日本企業に投資を募って回った。
最近は、インドネシアやタイ、中国などもこうしたやり方で日本企業に誘致活動をしている。このままでは工場の国外流出は加速するばかりだ。野田佳彦首相は就任記者会見で「歴史的な円高で、産業空洞化の危機を感じる」と語ったが、空洞化の回避には円高対策だけでは不十分だ。再び投資を国内に向かわせるような、政策のパッケージが要る。
環太平洋経済連携協定(TPP)はもちろん、FTAの遅れを取り戻すには日中韓の協定も大事だ。法人税減税や産業競争力の強化をにらんだ電気料金の設定、労働規制の見直しも一体的に進めたい。
日本経済新聞が実施した経営者への調査では円高を中心に今の状態が長引けば「生産を海外に移す」と答えた企業が4割に達した。日本でなくても高品質な製品は作れる時代だ。拠点選びは立地する国の競争力で決まり、政策にも雇用を生む企業の視点が従来以上に求められる。
我が国の産業は今、六重苦を背負っていると言われていますね。為替(超円高)、法人税、労働環境、環境制約、交易条件(FTP EPA TPP等)、原発事故による電力規制&値上の六つ。
グローバルな企業の戦争では、これらに対する企業が立地する国の政策がその国の企業を支援するか、足枷をはめるかを決しますね。
余談ですが、今日(9/5)のNHKの「クローズアップ現代「超円高に立ち向かえ!海外進出の新戦略」」(全部は見ていません)では、中小企業にスポットをあててその成功事例を紹介していました。
さすがに中小企業ですから、韓国企業を買収までは出来ず、提携してwin winの関係をと言うものですが、韓国側は、自動車などの輸出の伸びの需要を背景に、日本の高品質の部品を取り込んでいるのですね。紹介事例では、コアの部品は日本国内で生産し、売上・利益が増えることで、国内の職人技術の継承者として新入社員を採用していました。
国内のメーカーからは、35%の価格カットを要求され、赤字で応じられないのですが、韓国のメーカーへの納入企業と提携しコア部品以外を現地生産することで、FTPで世界市場での売り上げを伸ばしている韓国メーカーの成長に乗っていけているのですね。
わざわざ韓国に出かけてやらなければならないのは、何故かは言うまでもないことで、悔しいというか情けない政治の貧困さです。
六重苦の解決に、財務に強いと自負(?)する野田氏の内閣には、期待する気持ちが膨らむのですが、同時に今の超円高に対面した責任閣僚でもあった野田氏には、菅の蓋がとれて首相になった今度は、全面的に責任がのしかかりますが、最高権限も持ったのですから、実力を発揮していただけることを願ってやみませんが...。
今日の読売には、アーミテージ元米国務副長官の「野田新首相 行動と成果 国民に示せ」が載っていました。
日本国民の地震・津波・原発事故への再建に示す、忍耐力と克己心と強靱さを、米国民は大いに賞賛しているが、こうした国民の精神と決意に見合う政治家が中央政府にはほとんどいないことに落胆していると言うのです。
大きな日本経済が縮小し、後退していけば世界に対する影響力が低下し二流国に落ち込む。日本の政治家や学者のなかにはそれもやむをえないと言う人もいる。そんなはずはない。日本国民が揃って決断すれば、一流国の座にとどまり、維持するための行動がとれるはずとも。
そして次のように結んでいます。
日米双方にとって簡単なのは、現在の政治的停滞を嘆き、それを薄弱な根拠として、何もしないことである。それではいけない。今は、まさに日米両国民が行動を求めるべきときである。日本国民は、選良たちに成果を求めるべきだ。
もちろん、米国の国益に沿う成果(日米安保やTPP)を求めているのですが、それは日本の国益でもあり、同盟国双方の発展に寄与するものとすべきです。
オバマ大統領と野田氏の電話挨拶で、前例のない具体的な課題(普天間移転)の話が出たのは、米国側が無為無策に先延ばししてきた前政権のせいで、いらだってきていることの証ですね。
外交・安全保障と共に、経済の縮小で転落する方向にある日本の再生が出来るか、日本の政治に対するわれわれ国民の要求を強めていかねばなりませんね。
その時に、マスメディアに惑わされない眼が欠かせませんが...。内閣支持率や政党支持率の世論調査の結果は、また同じ過ちを繰り返していると感じるのですが、それが杞憂に終わることを願っています。
# 冒頭の写真は、リチャード・アーミテージ元米副国務長官
この花の名前は、コバギボウシ
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