遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

保安官のビデオ流出は守秘義務違反にはあたらない?

2010-11-11 00:03:11 | my notice
 今朝(11/10)の読売で、尖閣のビデオ流出が、神戸の漫画喫茶から投稿されたと特ダネ報道されました。この報道を知った神戸海上保安部・「うらなみ」の主任航海士が、船長に自分がやったと告白したのだそうですね。読売の特ダネ情報はどこから流出したのかと思っていたら、読売の大阪の記者がこの主任航海士と接触・面談していたのだそうですね。
 記者は、半信半疑で面談していたのだそうですが、動機は「国民が知るべき内容だ」として家族も居るが職を賭して流出させたと言っていたのだそうですね。「うらなみ」から捜査員に同道されて歩く姿は、堂々と胸を張って歩いていました。
 巡視艇ナンバー3のベテラン、義憤募らせ送信?(読売新聞) - goo ニュース
  海上保安官「国民に見る権利」 読売テレビが取材、報道 - 47NEWS(よんななニュース)

 更に読売は、逮捕容疑とされる公務員の「守秘義務違反」が、今回適用可能かは法曹界で意見が分かれていると指摘し、裁判になった場合罪が問われるとは限らないとも報道しています。その、堀部一ツ橋大学名誉教授は、日本テレビ・news every に出演して記事と同じ話をしておられました。

----- news every のホームページの番組案内には記者の出演の記述がありました -----

「尖閣ビデオ」流出で衝撃の展開…神戸のマンガ喫茶から投稿「自分が流した」男は海上保安庁5管所属▽“なぜビデオを流したのか?”男と独自接触した記者が語る一部始終
----- ここまで ------------

 
尖閣ビデオ流出 法曹界「秘密」の解釈巡り 立件に賛否 (11/10 読売朝刊)

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡る映像流出事件で、東京地検と警視庁が国家公務員法の守秘義務違反での捜査を進める中、法曹関係者らの間では今回の流出が刑事罰の対象となるかどうかについて、意見が分かれている。公開を求める声が強かったビデオを流出させた行為に対し、過剰な刑事責任追及が行われれば、国民の知る権利を阻害することにもなりかねないだけに、捜査側は難しい判断を迫られそうだ。

「刑事罰には疑問」
 「流出した映像は国家公務員法上の『秘密』には当たらず、刑事罰には疑問がある」。堀部政男・一橋大名誉教授(情報法)はそう話す。
 最高裁は1977年、同法違反に問われた税務署職員の裁判で、漏らした情報が
①一般人が知らない②秘密として保護するべき--の二つの条件を満たす場合にのみ、守秘義務の対象になるという判例を示した。行政機関が形式的に秘密扱いにしていただけでは、漏らしても犯罪には当たらないことになる。
 堀部氏はこの基準について、「国民の知る権利の観点から、公務員の守秘義務の範囲が安易に広がらないようにした」と解説した上で、「
今回は流出前から、海上保安庁が船長逮捕の会見で衝突の経過を詳細に説明し、衆院でもビデオが限定公開されて議員がその内容を記者に説明しており、一般人が知らない情報とは言えないのではないか」とする。
海保と映像
 仮に映像が「秘密」に当たるとしても、今後の捜査で判明した流出時期や動機によっては、裁判で「刑事罰を科すのは酷だ」という判断に至る可能性もある。
 海上保安庁は、犯罪を摘発する捜査機関であると同時に、領海警備などの任務も担う。「日夜、日本の海を守る海上保安官の姿を広く知ってもらう必要がある」として、普段から現場で撮影した映像を比較的オープンにしてきた。2001年に奄美大島沖で起きた北朝鮮不審船事件でも、不審船の銃撃や沈没を撮影した映像を公開。内部でも「危険な職務の実態を伝えられた」と評価されている。
 今回も、衝突事件のあった9月7日、海保本庁は報道機関への配布用に映像をDVDにする作業に着手したが、官邸サイドの意向で中止した。馬淵国土交通相が、映像の厳重管理を指示したのは10月18日になってからだ。行政情報に詳しい弁護士は、「
管理が緩かった時期に映像を持ち出し、国民の知る権利のためにあえて公開したとすると、裁判で違法性が否定される可能性もある」と指摘する。
世論の反応は?
 沖縄返還を巡る外務省機一密漏えい事件(71年)では、記者が職員に守秘義務違反をそそのかしたとして起訴された。78年に有罪が確定したものの、最高裁は「報道機関が取材目的で公務員に秘密漏えいをそそのかしても、手段や方法が社会通念上、是認されるものなら正当」と言及し、国民の知る権利に理解を示した。
 今回問題になっているのは、公務員自身の守秘義務だが、ある検察幹部は「
(有罪を立証できるか)ボーダーラインのケース」と漏らす。一方、別の幹部は「これだけ公開の是非が議論されていた映像を流出させたのだから、守秘義務違反は成り立つはず」と話す。
 ある刑事裁判官は「今回の映像の場合、
公開すれば中国との関係が悪化しかねないという点は重視せざるを得ず、無罪という結論は出にくいだろう」と指摘。ただ、世論の反応によっては、検察が起訴猶予にする選択肢もありうると推測する。
   ◇
 東京・霞が関の海上保安庁には、映像流出が判明した5日から8日までに、約280件の意見が電話で寄せられたが、その大半は、「犯人捜しや処分はしないで」「映像を見られてよかった」といった意見だった。
 ただ、海保は8日まで続けていた電話やメールの内容の公表を、9日になって突然、取りやめた。その理由について、海保幹部は「国民世論と誤解されるのは適切でない」としている。

日本EEZ内を中国調査船航行

 9日午後4時40分頃、鹿児島県奄美大島の西約390キロの日本の排他的経済水域(EEZ)で、中国の海洋調査船「濱海512」(総トン数1964トン)が航行しているのを海上保安庁の航空機が確認した。無線で「事前の同意のない調査活動は認められない」と繰り返し調査の中止を要求し、調査船は同7時57分、EEZ外に出た。
 第10管区海上保安本部(鹿児島)によると、調査船はケーブル様のもの5本を引いた状態で航行していた。「昨日(8日)から調査を実施している」と応答したという。


 読売の記者が面談時にビデオの入手方法を尋ねたら、海保職員であれば容易に入手できる状態にあったと語り具体的方法までは話さなかったとのことです。「国民に知る権利」という動機と、「容易に入手できる環境」と、裁判で有利な条件が整っています。
 
 予算委員会の集中審議では、小泉議員の追及がピンポイントを突いていましたね。
 ビデオを公開するメリット・デメリット、公開しないメリット・デメリットを追及すると、仙谷氏が例によって言葉遊びではくらかそうと、「メリット・デメリットという議論はない」と言い始めると、小泉議員は「昨日読売の記者が撮影した、仙谷氏が菅氏に渡したメモには、メリット、デメリットを書いていた」と切り替えし仙谷氏を黙らせました。
 そしてそのメモの「公開することで中国が日本に抗議しづらくなるメリット」と、「公開することで犯人の罪が軽くなるデメリット」を比較して、前者を捨て後者を選択する管政権を厳しく批判しました。まさに売国奴政権を象徴しているポイントで、テレビ中継の中で解りやすくクローズアップされました。
 流出したことの管理責任についても、菅総理に監督責任があるとの発言を引き出しました。

 主任航海士は、単独犯を主張しているようですが、調べに対してもビデオの入手方法についてははっきり話していないとのこと。
 遊爺の、流出犯人推理での本命ではないのですが、対抗案とした人民解放軍関与説は消えてしまいそうですが、未だスパイに買収されるレベルまで犯されてはいないという安堵感もあります。

 また、自民党・小池総務会長がtwitterで指摘しておられた、公益通報者保護法の適用の可否も検討されるべきですね。

 43歳の働き盛りで、家族もある主任航海士が、職を賭して(国民に知らせることが罪になるなら受ける)行った行為は、事件発生直後に公開していれば起きなかったし、中国のデモや政府の対応も違ったものになっていたとは、いまさら言ってもしかたのないことです。
 確信犯による情報漏えいは防ぐことは不可能に近いのですが、主任航海士が単独犯だとすれば、情報に接する権限者ではないので、流出には公開前提の当初の海保の姿勢を、非公開に押し切った政府の責任(途中から秘密資料に切り替わった為フリーに近い時期があった)が大きい。
 
 とはいえ、現職公務員の立場で義憤を現す方法が、日本国の情報セキュリィティの世界の評価に影響を及ぼしかねないものでよいのか、ほかに方法はなかったのか(YouTub でなく、Wikileaksとか、辞職してから論文を投稿するとか)は考えていただきたいのですが、自主をされたこと、失職は覚悟されていたことは罪を大きく軽減されるべきだと考えますし、正しい内部告発への社会の容認の新しい価値観形成のステップになることも願っています。

 ビデオの入手ルート・方法と、本当に単独犯かなど、まだ全容を判断できない部分が残っています。特に、
入手方法が職員ならだれでもできたと言いながら、話さないところが気になります。上司や職場に迷惑をかけたと深く悩んでいるとのことで、これ以上海保の恥を曝したくないということなのでしょうか?

 中国船の侵犯はつづいています。

 # 冒頭の巡視艇は「うらなみ」




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