日米両政府は7月28日、都内で日米安全保障協議委員会(外務・防衛担当閣僚協議、2プラス2)を開き、在日米軍に新たな軍事司令部を設けると発表。
日米は「変化する安全保障環境がもたらす課題に対応するため日米同盟の抑止力・対処力をさらに強化していく」と強調、核を含む拡大抑止についても協議したと、元産経新聞ロンドン支局長の木村正人氏。
共同発表によると「米国は相互運用性及び日米間の共同活動に係る協力の深化を促進するため、在日米軍をインド太平洋軍司令官に属する統合軍司令部として再構成する。再構成された在日米軍は自衛隊統合作戦司令部の重要なカウンターパートとなる」と明記。
米紙ウォールストリート・ジャーナルのマイケル・ゴードン記者は7月28日付の記事で「米国は中国に対抗するため東京に軍事司令部を設置する。在日米軍を統括する司令部を東京に設置し、アジアにおける同盟国の強化を図る」と報じている。
WSJ紙によると、新司令部は中将によって率いられ、日本との軍事作戦を調整し、合同演習を計画、敵対行為が起きた場合は防衛に参加する。これで在日米軍は3500マイル(5632キロメートル)離れたハワイにあるインド太平洋軍司令部からの指示を待つ必要がなくなると、木村氏。
防衛省は統合運用の実効性を強化するため、常設の統合司令部を創設する。自衛隊の統合司令部は防衛省の地下に、在日米軍の軍事司令部は横田基地に設置されるのだそうです。
新司令部の設置は「日米同盟間の軍事的関係を強化するための広範な努力の一部でもあり、日本でのパトリオット対ミサイルシステムの生産拡大や米国への提供など、西側の産業基盤を強化する日本の努力も含まれる」(WSJ紙)と。
「環球時報」英語版(7月28日)は「日米軍事同盟の強化で東京は反撃の最前線に立たされる。日本を前哨基地として地域諸国を牽制するワシントンの意図が露わに」との専門家の声を伝えたと、木村氏。
米国防総省は昨年「中国は国際秩序を再構築する意図を持ち、ますますその能力を高めている。米国の唯一の競争相手」と分析。
中国は建国100周年の2049年までに負の歴史を払拭する「国家再興」を目指す。
中国共産党の指導者は、近代的で「世界一流」の軍隊が激動する国際環境を打ち勝つために不可欠と考えている。インド太平洋地域で中国人民解放軍は一段と強圧的な行動をとると。
3期目に入った習氏は自分を除きトップ6人の政治局常務委員、常務委員を含むトップ24人の政治局委員を習派で固め、改革開放で今日の中国経済発展を推進した、鄧小平を継ぐ共青団派を排除した。
中国人民解放軍は、C4ISR(指揮・統制・通信・コンピューターと情報・監視・偵察)を活用し、米軍の作戦システムにおける主要な脆弱性を迅速に特定、精密な攻撃を仕掛けるため統合部隊を組み合わせることを目指していると、木村氏。
「世界一流」の軍隊となる目標を達成するため装備を近代化し、統合兵器や共同訓練に力を注ぐ。140隻以上の主要水上戦闘艦を含む370隻以上の艦船と潜水艦を擁する世界最大の海軍を築いている。22年には中国初のカタパルト搭載型空母「福建」を進水させているとも。
人民解放軍は、C4ISR(指揮・統制・通信・コンピューターと情報・監視・偵察)を活用し、米軍の作戦システムにおける主要な脆弱性を迅速に特定、精密な攻撃を仕掛けるため統合部隊を組み合わせることを目指していると、木村氏。
140隻以上の主要水上戦闘艦を含む370隻以上の艦船と潜水艦を擁する世界最大の海軍を築いている。22年には中国初のカタパルト搭載型空母「福建」を進水させているとも。
約1400発の弾道ミサイルと数百発の巡航ミサイルを保有し、紛争の初期段階で日本の嘉手納基地のような重要な米空軍基地を無力化する可能性があると、木村氏。
極超音速滑空体(HGV)を運ぶため設計された準中距離弾道ミサイルDF-17の配備は西太平洋の外国の軍事基地や艦隊を攻撃することを意図。30年までに1000発以上の運用可能な核弾頭を保有するとみられるのだそうです。
習氏は台湾との平和的統一を求める一方で、武力行使を選択肢として放棄することはないという中国共産党の立場を崩していない。中国の野心を封じ込めるには米国は日本、オーストラリア、韓国などインド太平洋地域の同盟国と連携を強化し、対中包囲網を築くほかない。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のクリストファー・ジョンストン氏はWSJ紙や英誌エコノミストに「司令部設置は米国が同盟国の能力を支援するため、これまでにはなかったような手段を取る用意があることを意味する。日米関係は真の軍事同盟へと変貌した」と語る。
安全保障上の課題は旧ソ連から核・ミサイル開発を進める北朝鮮、経済的・軍事的に台頭する中国、テロリスト・グループに拡散。日米同盟も二国間関係だけでなく地域に重点を置くようになった。故安倍晋三首相が推進した「自由で開かれたインド太平洋戦略」はその礎となったことは、諸兄がご承知のとおり。
日本は27年までに防衛費を国内総生産(GDP)の2%に引き上げる。日米両政府は米国の核を含む戦力で日本を守る拡大抑止に関する初の共同文書をとりまとめる方針を固めたと読売新聞(7月21日)。
中国が武力で台湾を統一する動きを抑えるためだと、木村氏。
「台湾有事」は「日本有事」に直結する。日本は中国との軍事衝突の最前線に立たされる。憲法を改正しないまま状況対応的にどんどん米軍と自衛隊の一体化が進む。日本国民に果たして、その備えと覚悟はあるのかと、木村氏。
防衛費の対GDP比 2%実現を公約した岸田政権。その推進の意義と、進捗状況の内容を、可能な範囲で国民に説明し、一体となって推進すべきです。
冒頭の画像は、日米2+2の、木原稔防衛大臣、上川陽子外務大臣、ブリンケン米国国務長官、オースティン米国国防長官
この花の名前は、ダキバアレチハナガサ
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
月刊Hanada2024年2月号 - 花田紀凱, 月刊Hanada編集部 - Google ブックス
日米は「変化する安全保障環境がもたらす課題に対応するため日米同盟の抑止力・対処力をさらに強化していく」と強調、核を含む拡大抑止についても協議したと、元産経新聞ロンドン支局長の木村正人氏。
日米2+2「在日米軍に統合軍司令部」の発表に反発する中国、「他国からの反撃の最前線に東京を置くことに」 | JBpress (ジェイビープレス) 2024.8.1(木) 木村 正人
アジアにおける同盟国を強化
[ロンドン発]11月の米大統領選でドナルド・トランプ前大統領が返り咲き、米国の孤立主義が強まるとの懸念が深まる中、日米両政府は7月28日、都内で日米安全保障協議委員会(外務・防衛担当閣僚協議、2プラス2)を開き、在日米軍に新たな軍事司令部を設けると発表した。
日本から上川陽子外相と木原稔防衛相、米からアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が出席。日米は「変化する安全保障環境がもたらす課題に対応するため日米同盟の抑止力・対処力をさらに強化していく」と強調、核を含む拡大抑止についても協議した。
共同発表によると「米国は相互運用性及び日米間の共同活動に係る協力の深化を促進するため、在日米軍をインド太平洋軍司令官に属する統合軍司令部として再構成する。再構成された在日米軍は自衛隊統合作戦司令部の重要なカウンターパートとなる」と明記した。
米紙ウォールストリート・ジャーナルのマイケル・ゴードン記者は7月28日付の記事で「米国は中国に対抗するため東京に軍事司令部を設置する。在日米軍を統括する司令部を東京に設置し、アジアにおける同盟国の強化を図る」と報じている。
ハワイからの指示を待つ必要がなくなる
WSJ紙によると、新司令部は中将によって率いられ、日本との軍事作戦を調整し、合同演習を計画、敵対行為が起きた場合は防衛に参加する。これで在日米軍は3500マイル(5632キロメートル)離れたハワイにあるインド太平洋軍司令部からの指示を待つ必要がなくなる。
防衛省は統合運用の実効性を強化するため、今年度末に陸海空自衛隊の一元的な指揮を行える常設の統合司令部を創設する。これに備え「統合作戦司令部創設会議」を設置したばかり。自衛隊の統合司令部は防衛省の地下に、在日米軍の軍事司令部は横田基地に設置される。
新司令部の設置は「日米同盟間の軍事的関係を強化するための広範な努力の一部でもあり、日本でのパトリオット対ミサイルシステムの生産拡大や米国への提供など、西側の産業基盤を強化する日本の努力も含まれる」(WSJ紙)という。
中国共産党系「人民日報」傘下の「環球時報」英語版(7月28日)は「日米軍事同盟の強化で東京は反撃の最前線に立たされる。日本を前哨基地として地域諸国を牽制するワシントンの意図が露わに」との専門家の声を伝えた。中国には日本を牽制する狙いがある。
中国共産党指導者「近代的で世界一流の軍隊が不可欠」
「日本をアジア太平洋地域の前哨基地として利用し、中国などの国々を封じ込めるために核抑止力を高め、日米軍事同盟における自衛隊の役割を高めようという米国の意図を倍加させるものだ。しかしこれは核衝突を含む他国からの反撃の最前線に東京を置くことになる」(環球時報)
ロシアはウクライナに全面侵攻し、北朝鮮は核・ミサイル、通常兵器を増強する。しかし日米の真の脅威は中国だ。中国の軍事・安全保障について米国防総省は昨年「中国は国際秩序を再構築する意図を持ち、ますますその能力を高めている。米国の唯一の競争相手」と分析している。
中国は建国100周年の2049年までに負の歴史を払拭する「国家再興」を目指す。中国共産党の指導者は、近代的で「世界一流」の軍隊が激動する国際環境を打ち勝つために不可欠と考えている。インド太平洋地域で中国人民解放軍は一段と強圧的な行動をとる。
中国は米国を念頭に「戦争を戦い、勝利する」能力を強化し、中国周辺部の紛争に第三国が介入した場合に対抗してグローバルに軍事力を投射する能力の構築を加速させる。一方、中国は二国間の防衛協力や米国側からの軍対軍の意思疎通の要請をほとんど無視している。
世界最大の海軍を構築
中国の習近平国家主席は中国人民政治協商会議の代表団に「米国に率いられた西側諸国はわれわれに対して包括的な封じ込め、包囲、弾圧を実施しており、わが国の発展にかつてない厳しい試練をもたらしている」との見方を示している。
異例の3期目に入った習氏は自分を除きトップ6人の政治局常務委員、常務委員を含むトップ24人の政治局委員を習派で固めた。任期が切れる27年まで習氏は中国人民解放軍の機械化、情報化、知能化の統合的発展と作戦目標の拡大に専念できる時間を得た。
中国人民解放軍はビッグデータと人工知能(AI)の進歩を取り入れたC4ISR(指揮・統制・通信・コンピューターと情報・監視・偵察)を活用し、米軍の作戦システムにおける主要な脆弱性を迅速に特定、精密な攻撃を仕掛けるため統合部隊を組み合わせることを目指している。
「世界一流」の軍隊となる目標を達成するため装備を近代化し、統合兵器や共同訓練に力を注ぐ。140隻以上の主要水上戦闘艦を含む370隻以上の艦船と潜水艦を擁する世界最大の海軍を築いている。22年には中国初のカタパルト搭載型空母「福建」を進水させている。
2030年までに1000発以上の運用可能な核弾頭を保有
約1400発の弾道ミサイルと数百発の巡航ミサイルを保有し、射程は1000キロメートル未満から3000キロメートル以上。目標から5~10メートルの小さな誤差を達成したミサイルもあり、紛争の初期段階で日本の嘉手納基地のような重要な米空軍基地を無力化する可能性がある。
極超音速滑空体(HGV)を運ぶため設計された準中距離弾道ミサイルDF-17の配備は西太平洋の外国の軍事基地や艦隊を攻撃することを意図する。昨年5月時点で中国が保有する運用可能な核弾頭は500発を超え、30年までに1000発以上の運用可能な核弾頭を保有するとみられる。
習氏は台湾との平和的統一を求める一方で、武力行使を選択肢として放棄することはないという中国共産党の立場を崩していない。中国の野心を封じ込めるには米国は日本、オーストラリア、韓国などインド太平洋地域の同盟国と連携を強化し、対中包囲網を築くほかない。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のクリストファー・ジョンストン氏はWSJ紙や英誌エコノミストに「司令部設置は米国が同盟国の能力を支援するため、これまでにはなかったような手段を取る用意があることを意味する。日米関係は真の軍事同盟へと変貌した」と語る。
憲法を改正しないまま米軍と自衛隊の一体化が進む
今年4月、岸田文雄首相はジョー・バイデン米大統領との首脳会談でグローバル・パートナーとしての日米同盟を世界にアピールした。ひと昔前まで日米同盟は二国間関係であった。米国はアジアの同盟国との二国間関係(ハブ・アンド・スポーク戦略)に依存していた。
しかし安全保障上の課題は旧ソ連から核・ミサイル開発を進める北朝鮮、経済的・軍事的に台頭する中国、テロリスト・グループに拡散。日米同盟も二国間関係だけでなく地域に重点を置くようになった。故安倍晋三首相が推進した「自由で開かれたインド太平洋戦略」はその礎となった。
日本は27年までに防衛費を国内総生産(GDP)の2%に引き上げる。日米両政府は米国の核を含む戦力で日本を守る拡大抑止に関する初の共同文書をとりまとめる方針を固めたと読売新聞(7月21日)は伝えている。中国が武力で台湾を統一する動きを抑えるためだ。
「台湾有事」は「日本有事」に直結する。作戦の後方基地だった日本は中国との軍事衝突の最前線に立たされる。憲法を改正しないまま状況対応的にどんどん米軍と自衛隊の一体化が進む。日本国民に果たして、その備えと覚悟はあるのか。
-------------------------------------------------------
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
アジアにおける同盟国を強化
[ロンドン発]11月の米大統領選でドナルド・トランプ前大統領が返り咲き、米国の孤立主義が強まるとの懸念が深まる中、日米両政府は7月28日、都内で日米安全保障協議委員会(外務・防衛担当閣僚協議、2プラス2)を開き、在日米軍に新たな軍事司令部を設けると発表した。
日本から上川陽子外相と木原稔防衛相、米からアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が出席。日米は「変化する安全保障環境がもたらす課題に対応するため日米同盟の抑止力・対処力をさらに強化していく」と強調、核を含む拡大抑止についても協議した。
共同発表によると「米国は相互運用性及び日米間の共同活動に係る協力の深化を促進するため、在日米軍をインド太平洋軍司令官に属する統合軍司令部として再構成する。再構成された在日米軍は自衛隊統合作戦司令部の重要なカウンターパートとなる」と明記した。
米紙ウォールストリート・ジャーナルのマイケル・ゴードン記者は7月28日付の記事で「米国は中国に対抗するため東京に軍事司令部を設置する。在日米軍を統括する司令部を東京に設置し、アジアにおける同盟国の強化を図る」と報じている。
ハワイからの指示を待つ必要がなくなる
WSJ紙によると、新司令部は中将によって率いられ、日本との軍事作戦を調整し、合同演習を計画、敵対行為が起きた場合は防衛に参加する。これで在日米軍は3500マイル(5632キロメートル)離れたハワイにあるインド太平洋軍司令部からの指示を待つ必要がなくなる。
防衛省は統合運用の実効性を強化するため、今年度末に陸海空自衛隊の一元的な指揮を行える常設の統合司令部を創設する。これに備え「統合作戦司令部創設会議」を設置したばかり。自衛隊の統合司令部は防衛省の地下に、在日米軍の軍事司令部は横田基地に設置される。
新司令部の設置は「日米同盟間の軍事的関係を強化するための広範な努力の一部でもあり、日本でのパトリオット対ミサイルシステムの生産拡大や米国への提供など、西側の産業基盤を強化する日本の努力も含まれる」(WSJ紙)という。
中国共産党系「人民日報」傘下の「環球時報」英語版(7月28日)は「日米軍事同盟の強化で東京は反撃の最前線に立たされる。日本を前哨基地として地域諸国を牽制するワシントンの意図が露わに」との専門家の声を伝えた。中国には日本を牽制する狙いがある。
中国共産党指導者「近代的で世界一流の軍隊が不可欠」
「日本をアジア太平洋地域の前哨基地として利用し、中国などの国々を封じ込めるために核抑止力を高め、日米軍事同盟における自衛隊の役割を高めようという米国の意図を倍加させるものだ。しかしこれは核衝突を含む他国からの反撃の最前線に東京を置くことになる」(環球時報)
ロシアはウクライナに全面侵攻し、北朝鮮は核・ミサイル、通常兵器を増強する。しかし日米の真の脅威は中国だ。中国の軍事・安全保障について米国防総省は昨年「中国は国際秩序を再構築する意図を持ち、ますますその能力を高めている。米国の唯一の競争相手」と分析している。
中国は建国100周年の2049年までに負の歴史を払拭する「国家再興」を目指す。中国共産党の指導者は、近代的で「世界一流」の軍隊が激動する国際環境を打ち勝つために不可欠と考えている。インド太平洋地域で中国人民解放軍は一段と強圧的な行動をとる。
中国は米国を念頭に「戦争を戦い、勝利する」能力を強化し、中国周辺部の紛争に第三国が介入した場合に対抗してグローバルに軍事力を投射する能力の構築を加速させる。一方、中国は二国間の防衛協力や米国側からの軍対軍の意思疎通の要請をほとんど無視している。
世界最大の海軍を構築
中国の習近平国家主席は中国人民政治協商会議の代表団に「米国に率いられた西側諸国はわれわれに対して包括的な封じ込め、包囲、弾圧を実施しており、わが国の発展にかつてない厳しい試練をもたらしている」との見方を示している。
異例の3期目に入った習氏は自分を除きトップ6人の政治局常務委員、常務委員を含むトップ24人の政治局委員を習派で固めた。任期が切れる27年まで習氏は中国人民解放軍の機械化、情報化、知能化の統合的発展と作戦目標の拡大に専念できる時間を得た。
中国人民解放軍はビッグデータと人工知能(AI)の進歩を取り入れたC4ISR(指揮・統制・通信・コンピューターと情報・監視・偵察)を活用し、米軍の作戦システムにおける主要な脆弱性を迅速に特定、精密な攻撃を仕掛けるため統合部隊を組み合わせることを目指している。
「世界一流」の軍隊となる目標を達成するため装備を近代化し、統合兵器や共同訓練に力を注ぐ。140隻以上の主要水上戦闘艦を含む370隻以上の艦船と潜水艦を擁する世界最大の海軍を築いている。22年には中国初のカタパルト搭載型空母「福建」を進水させている。
2030年までに1000発以上の運用可能な核弾頭を保有
約1400発の弾道ミサイルと数百発の巡航ミサイルを保有し、射程は1000キロメートル未満から3000キロメートル以上。目標から5~10メートルの小さな誤差を達成したミサイルもあり、紛争の初期段階で日本の嘉手納基地のような重要な米空軍基地を無力化する可能性がある。
極超音速滑空体(HGV)を運ぶため設計された準中距離弾道ミサイルDF-17の配備は西太平洋の外国の軍事基地や艦隊を攻撃することを意図する。昨年5月時点で中国が保有する運用可能な核弾頭は500発を超え、30年までに1000発以上の運用可能な核弾頭を保有するとみられる。
習氏は台湾との平和的統一を求める一方で、武力行使を選択肢として放棄することはないという中国共産党の立場を崩していない。中国の野心を封じ込めるには米国は日本、オーストラリア、韓国などインド太平洋地域の同盟国と連携を強化し、対中包囲網を築くほかない。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のクリストファー・ジョンストン氏はWSJ紙や英誌エコノミストに「司令部設置は米国が同盟国の能力を支援するため、これまでにはなかったような手段を取る用意があることを意味する。日米関係は真の軍事同盟へと変貌した」と語る。
憲法を改正しないまま米軍と自衛隊の一体化が進む
今年4月、岸田文雄首相はジョー・バイデン米大統領との首脳会談でグローバル・パートナーとしての日米同盟を世界にアピールした。ひと昔前まで日米同盟は二国間関係であった。米国はアジアの同盟国との二国間関係(ハブ・アンド・スポーク戦略)に依存していた。
しかし安全保障上の課題は旧ソ連から核・ミサイル開発を進める北朝鮮、経済的・軍事的に台頭する中国、テロリスト・グループに拡散。日米同盟も二国間関係だけでなく地域に重点を置くようになった。故安倍晋三首相が推進した「自由で開かれたインド太平洋戦略」はその礎となった。
日本は27年までに防衛費を国内総生産(GDP)の2%に引き上げる。日米両政府は米国の核を含む戦力で日本を守る拡大抑止に関する初の共同文書をとりまとめる方針を固めたと読売新聞(7月21日)は伝えている。中国が武力で台湾を統一する動きを抑えるためだ。
「台湾有事」は「日本有事」に直結する。作戦の後方基地だった日本は中国との軍事衝突の最前線に立たされる。憲法を改正しないまま状況対応的にどんどん米軍と自衛隊の一体化が進む。日本国民に果たして、その備えと覚悟はあるのか。
-------------------------------------------------------
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
共同発表によると「米国は相互運用性及び日米間の共同活動に係る協力の深化を促進するため、在日米軍をインド太平洋軍司令官に属する統合軍司令部として再構成する。再構成された在日米軍は自衛隊統合作戦司令部の重要なカウンターパートとなる」と明記。
米紙ウォールストリート・ジャーナルのマイケル・ゴードン記者は7月28日付の記事で「米国は中国に対抗するため東京に軍事司令部を設置する。在日米軍を統括する司令部を東京に設置し、アジアにおける同盟国の強化を図る」と報じている。
WSJ紙によると、新司令部は中将によって率いられ、日本との軍事作戦を調整し、合同演習を計画、敵対行為が起きた場合は防衛に参加する。これで在日米軍は3500マイル(5632キロメートル)離れたハワイにあるインド太平洋軍司令部からの指示を待つ必要がなくなると、木村氏。
防衛省は統合運用の実効性を強化するため、常設の統合司令部を創設する。自衛隊の統合司令部は防衛省の地下に、在日米軍の軍事司令部は横田基地に設置されるのだそうです。
新司令部の設置は「日米同盟間の軍事的関係を強化するための広範な努力の一部でもあり、日本でのパトリオット対ミサイルシステムの生産拡大や米国への提供など、西側の産業基盤を強化する日本の努力も含まれる」(WSJ紙)と。
「環球時報」英語版(7月28日)は「日米軍事同盟の強化で東京は反撃の最前線に立たされる。日本を前哨基地として地域諸国を牽制するワシントンの意図が露わに」との専門家の声を伝えたと、木村氏。
米国防総省は昨年「中国は国際秩序を再構築する意図を持ち、ますますその能力を高めている。米国の唯一の競争相手」と分析。
中国は建国100周年の2049年までに負の歴史を払拭する「国家再興」を目指す。
中国共産党の指導者は、近代的で「世界一流」の軍隊が激動する国際環境を打ち勝つために不可欠と考えている。インド太平洋地域で中国人民解放軍は一段と強圧的な行動をとると。
3期目に入った習氏は自分を除きトップ6人の政治局常務委員、常務委員を含むトップ24人の政治局委員を習派で固め、改革開放で今日の中国経済発展を推進した、鄧小平を継ぐ共青団派を排除した。
中国人民解放軍は、C4ISR(指揮・統制・通信・コンピューターと情報・監視・偵察)を活用し、米軍の作戦システムにおける主要な脆弱性を迅速に特定、精密な攻撃を仕掛けるため統合部隊を組み合わせることを目指していると、木村氏。
「世界一流」の軍隊となる目標を達成するため装備を近代化し、統合兵器や共同訓練に力を注ぐ。140隻以上の主要水上戦闘艦を含む370隻以上の艦船と潜水艦を擁する世界最大の海軍を築いている。22年には中国初のカタパルト搭載型空母「福建」を進水させているとも。
人民解放軍は、C4ISR(指揮・統制・通信・コンピューターと情報・監視・偵察)を活用し、米軍の作戦システムにおける主要な脆弱性を迅速に特定、精密な攻撃を仕掛けるため統合部隊を組み合わせることを目指していると、木村氏。
140隻以上の主要水上戦闘艦を含む370隻以上の艦船と潜水艦を擁する世界最大の海軍を築いている。22年には中国初のカタパルト搭載型空母「福建」を進水させているとも。
約1400発の弾道ミサイルと数百発の巡航ミサイルを保有し、紛争の初期段階で日本の嘉手納基地のような重要な米空軍基地を無力化する可能性があると、木村氏。
極超音速滑空体(HGV)を運ぶため設計された準中距離弾道ミサイルDF-17の配備は西太平洋の外国の軍事基地や艦隊を攻撃することを意図。30年までに1000発以上の運用可能な核弾頭を保有するとみられるのだそうです。
習氏は台湾との平和的統一を求める一方で、武力行使を選択肢として放棄することはないという中国共産党の立場を崩していない。中国の野心を封じ込めるには米国は日本、オーストラリア、韓国などインド太平洋地域の同盟国と連携を強化し、対中包囲網を築くほかない。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のクリストファー・ジョンストン氏はWSJ紙や英誌エコノミストに「司令部設置は米国が同盟国の能力を支援するため、これまでにはなかったような手段を取る用意があることを意味する。日米関係は真の軍事同盟へと変貌した」と語る。
安全保障上の課題は旧ソ連から核・ミサイル開発を進める北朝鮮、経済的・軍事的に台頭する中国、テロリスト・グループに拡散。日米同盟も二国間関係だけでなく地域に重点を置くようになった。故安倍晋三首相が推進した「自由で開かれたインド太平洋戦略」はその礎となったことは、諸兄がご承知のとおり。
日本は27年までに防衛費を国内総生産(GDP)の2%に引き上げる。日米両政府は米国の核を含む戦力で日本を守る拡大抑止に関する初の共同文書をとりまとめる方針を固めたと読売新聞(7月21日)。
中国が武力で台湾を統一する動きを抑えるためだと、木村氏。
「台湾有事」は「日本有事」に直結する。日本は中国との軍事衝突の最前線に立たされる。憲法を改正しないまま状況対応的にどんどん米軍と自衛隊の一体化が進む。日本国民に果たして、その備えと覚悟はあるのかと、木村氏。
防衛費の対GDP比 2%実現を公約した岸田政権。その推進の意義と、進捗状況の内容を、可能な範囲で国民に説明し、一体となって推進すべきです。
冒頭の画像は、日米2+2の、木原稔防衛大臣、上川陽子外務大臣、ブリンケン米国国務長官、オースティン米国国防長官
この花の名前は、ダキバアレチハナガサ
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
月刊Hanada2024年2月号 - 花田紀凱, 月刊Hanada編集部 - Google ブックス