遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

「航行の自由作戦」は、オバマ政権のアジア政策の強化か?

2015-10-30 23:37:37 | 中国 全般
 南シナ海の中国の人口島による軍事施設建設は、オバマ大統領が習近平との首脳会談の反応を受け、ようやく重い腰をあげて「航行の自由作戦」が挙行されました。
 これは、第二次オバマ政権で緩んでいたアジア回帰の政策が、本格化される方向に転換することになるのでしょうか。「米国と中国の変化に目をこらさなければならない。」と指摘されるのは、田久保杏林大学名誉教授。

 5年後、10年後は判らないが(そうはいかない可能性があるが)、現状では米軍の実力に及ばない中国側が打撃を受け、国内向けは別としても、当面は沈静化を計りたいのは中国との見方があるなかで、日米同盟は不動との前提に立つが、「米国と中国の変化に目をこらさなければならない」と提言されているのです。

 
中国 衝突回避へ対話 米海軍トップとTV会談 : 読売プレミアム
 
早期沈静化 中国の本音 小原 凡司氏 東京財団研究員(元海上自衛官) (10/30 読売朝刊 視点 南シナ海巡視)

 
米国が中国の人工島の12カイリ内に投入したのは、イージス駆逐艦1隻だった。しかし、空、水上、水中の脅威に対処できる戦闘艦艇で、中国側を攻撃する意図はなかったものの、中国からの攻撃を恐れない態度を見せた。力をもって南シナ海での航行の自由を示したといえる。

 
これにより、中国は二つの点で打撃を受けた。

 
一つは、米軍の介入を阻む中国軍の「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を、安全保障上極めて重要な南シナ海で、否定されたことだ。米艦艇が自由に南シナ海を行き来できるようになると、有事の際、中国の戦略原子力潜水艦は南シナ海経由で太平洋へ抜け弾道ミサイルで米本土を核攻撃することが不可能になる。
 
二つ目は、中国はという点だ巡視活動を実行した米国に対して強く反発したいが、実際はできないというジレンマに陥ってしまった


 中国の軍事力は近代化したとはいえ米国には到底及ばないことは、中国自身が十分認識している。
 米軍による今回の巡視活動の際も、中国艦艇は米駆逐艦を追尾するにとどまり、並んで航行しなかった。衝突の危険性を避ける抑制的な対応だった。
 しかし、米側に強い態度を示さなければ、国内で「共産党指導部は弱腰だ」との反発を招いてしまう。
 
米軍は巡視活動を継続する方針だが、中国はジレンマを回避するため、一刻も早くやめさせたいと考えている。29日の海軍トップ同士のテレビ会談や、ハリー・ハリス米太平洋軍司令官の訪中で、事態沈静化の糸口を探りたいのが本音だろう。  (聞き手・国際部 水野翔太)

 問題は、「航行の自由作戦」により、中国が人工島の滑走路や港湾その他の軍事施設建設を凍結するかどうかです。そして、両国ともに経済交流は継続・発展させたい。そこで、、「米国と中国の変化に目をこらさなければならない」となるのだと。
 

米艦派遣はアジア政策の強化か 杏林大学名誉教授・田久保忠衛 (10/30 産経 【正論】)

 米軍が南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で実施した「航行の自由作戦」は、力を背景にした現状変更を懸念する国々にとっては朗報に違いないが、ニュースを耳にした途端に感じた疑問を2つ挙げる


 ≪刺激気にするホワイトハウス≫

 
第1は、一昨年11月に中国国防省がいきなり東シナ海に「防空識別圏」を設定したと発表した際の米政府による反応と、今回との相違
だ。発表が行われたのは11月23日で、3日後の26日には米軍がB52戦略爆撃機2機を尖閣諸島の上空に飛ばした。ホワイトハウスはもちろん、ケリー国務、ヘーゲル国防両長官は「強い懸念」を表明し、動転した日本国民はどれだけ力強い思いをしたことか。
 中国による人工島の造成は一昨年から続き、カーター国防長官が人工島12カイリ以内に米海軍偵察機と艦艇を送ると述べたのは今年の5月だ。
実行に移すまでに5カ月かかっている。間髪を入れぬ対応とは対照的
だ。

 
第2は中国に対する力の対応が一つの型にはまっている
のではないかと感じられた点だ。カーター長官発言は米紙ウォールストリート・ジャーナルがまず報道し、国防総省がこれを確認した。今回は英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が10月8日に「2週間以内」に艦艇が入ると伝え、さらに当日にはロイター通信が「イージス駆逐艦が派遣された」とのニュースを流し、いずれも後で確認されている。報道、確認の繰り返しはなぜかと不審に思った。
 そこで目にした10月27日付の米紙ワシントン・ポストで得心がいった。12カイリ以内への駆逐艦派遣は、中国が一方的に人工島を造成することに米国は立ち上がる姿勢を日本、フィリピンの同盟国に確約する意味を持つのだが、
ホワイトハウスは中国を刺激しないよう神経質になっている
らしい。

 
「ホワイトハウスは国防総省当局者たちに、今回の件について公には一切、発言してはならないと命じた。イージス駆逐艦『ラッセン』は何の発表もなく、メディアに派遣についての説明もなく行動に出るようにとホワイトハウスから言われていた。政府筋によれば、当局者は質問を受けた場合、作戦について公の発言は控えるよう指示された」という。太平洋を挟む両大国の対立拡大をホワイトハウスは懸念している
のだ。

 ≪「オバマの抑制ドクトリン」≫
 シビリアン・コントロールの典型を見せつけられた思いがする。が、
軍をコントロールするシビリアンの判断は絶対的なものか。第二次大戦直前のチェンバレン英首相のヒトラーに対する宥和(ゆうわ)政策は逆の好例だろう。

 オバマ大統領はミャンマーの閉ざされていた窓を国際社会に開き、キューバとの国交正常化に手をつけ、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意を達成した。が、公約のはずだったイラク、アフガニスタン両国からの完全撤兵は成らず、ウクライナではロシアによるクリミア半島の強制編入を許し、シリア政策の綻(ほころ)びからイスラム国(IS)という名のテロリスト集団の出現を阻止できなかった。
 日本の非力を棚に上げて、同盟国の最高指導者に不安を抱くなど尊大この上ないことは承知しているが、
米国内でのオバマ批判は限りなく続いている。米紙ニューヨーク・タイムズの著名なコラムニストであるロジャー・コーエン氏は、オバマ大統領が中東政策で無為無策を続けている事実を列挙して「オバマの抑制ドクトリン」と形容した。

 ≪米中の変化に目をこらせ≫
 アジア全域から地上戦闘部隊を引き揚げると宣言した
ニクソン大統領の対アジア政策は、ベトナム戦争終結の背景を作り上げ、実際に戦いを終わらせ、中国との国交正常化、ソ連牽制(けんせい)へと続く大きな戦略的うねりを感じさせた。いわゆるニクソン・ドクトリンだが、オバマ・ドクトリンはアジアでどのような意味を持つものだろうか。

 ヒラリー・クリントン前国務長官は2011年に、米国は中東に置いていた軸足(ピボット)をアジアに移すとの見識を示したが、
オバマ政権第2期には具体的なアジア政策はうかがえない。
 東シナ海、南シナ海、インド洋への中国による進出、わけても南シナ海での巨大な人工島の建設を目のあたりにすると、国際社会の秩序を定めている国際法の適、不適を論じる相手なのかと疑問を抱かない国は少ないと思われる。
 長らく米政府の内部で対中政策に関わってきた
ハドソン研究所中国戦略センター所長のマイケル・ピルズベリー氏は自著「100年のマラソン」の中で、50年間の中国観察は誤りだったと述べている。孫子の兵法や春秋戦国時代の謀略や策略を現代にも用いている異質の国であったとの反省だ。

 その当否の議論はおくとして、
「航行の自由作戦」はピボット政策の強化なのかどうか。日米同盟は不動との前提に立って米国と中国の変化に目をこらさなければならない。(たくぼ ただえ)

 東シナ海にADIZを設定した時と、今回の違いは、遊爺も早くから注目していました。
 記事では、事件の発生と、米軍の行動との時間差を指摘しておられます。オバマ大統領の決断の差ですが、中国軍側の準備態勢の差と、内容の重大さの差が大きいと考えます。
 つまり、ADIZは防空識別圏の設定であり、中国の主張内容は国際常識とは異なるものの、設定自体は合法であり、実態は設定しただけで、レーダー探知能力も、スクランブル体制も整っていませんでした。そして、今回との違いは、B52の飛行は、1回だけで、以後民間機の飛行は自粛指導しています。
 今回は、軍のアクションには月日を要しましたが、12カイリ内の航行を含む自由な航行は継続すると言っている点が異なります。

 ただ、共通しているのは、米国がアクションはするけど、パイプの補強には尽力するというところです。「米国と中国の変化に目をこらさなければならない」と提言されている由縁でもあります。
 ホワイトハウスが、中国を刺激しないことに神経質になっていると指摘されている通りです。
 前回は、国内の雇用対策として対中輸出を重視し、パンダハガーが政権内ではびこっていたことが理由でした。バイデン副大統領が日本に立ち寄って、中国に講義すると勇んで乗り込みましたが、帰国後、民間機の飛行自粛を打ち出しました。

 今回は、米海軍制服組トップのジョン・リチャードソン作戦部長と中国海軍トップの呉勝利司令官がテレビ会議をしたり、ハリー・ハリス太平洋軍司令官も訪中し中国側との対話に尽力しておられます。ケリー国務長官も「緊張の沈静化を望んでいる。」と火消にまわっています。が、中国は、軍事施設の建設を加速させるとの情報が大勢ですね。
 中国共産党の第18期中央委員会第5回全体会議(5中全会)の最中の出来事で、さぞかし習近平への打撃は大きいのではと推測しましたが、5中全会は、ひとりっこ政策変更などを決めて無難に終了しました。
 
 習近平との首脳会談で、けん制を無視されたオバマ大統領は、オバマドクトリンで、国際法に反して人口島での制海空権を確立しようとする中国をけん制すると同時に、TPP合意を実現化させ、インドネシアの参加も得て、成長するアジア市場に活路を開く、アジア回帰路線を強化させるのか。
 米中の動向に注目が必要です。
 日中韓首脳会議で、安倍首相は、南シナ海の中国の力による現状変更を、表でも裏でも、何処までけん制できるかも、安保法制成立後の新「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の効力と併せてせて注目されます。



 # 冒頭の画像は、アメリカ海軍トップのリチャードソン作戦部長と中国海軍トップの呉勝利司令官




  この花の名前は、フッキソウ


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