多くの製品に半導体の必要性と、その技術進化の占める割合の重要性は、今日では増すばかりとは、今更語るまでもないことですね。
新型コロナ感染拡大で、生産や物流がとどこおり、家電から自動車など多くの製品が品不足になったことは、衆知の出来事でした。
また、米中新冷戦の中で、米、日、オランダが寡占する製造装置の規制で主導権を確保したり、台湾の半導体メーカーTSMCが、台湾海峡危機に備えることも含み、日米に生産拠点増設も話題になりました。
しかし今注目され始めたのが、半導体製造に必要なガリウムやゲルマニウムのレアメタルの供給。
依存度の高い中国が、輸出管理規制に関する公告を発表するという危機が勃発。
米国のイエレン財務長官が6日から訪中するのを受けて、中国が米国に対中半導体制裁の緩和を交渉するための「駆け引き材料」と見られているが、イエレン訪中によって、米中半導体戦争は緩和するのか、それともより先鋭化するのかと、元産経新聞中国駐在記者のジャーナリスト、福島香織さん。
中国商務部の公告によれば、輸出企業は商務部に対し、エンドユーザーから利用目的の証明を得て、輸入企業とエンドユーザーに関する状況を説明しなければならない。
軍事目的や、そのほか中国の国家安全や利益に危害を与えるような目的で利用されると判断された場合、輸出を許可せず国家の安全と利益を擁護するのだと、福島さん。
すでに影響が出始めていて、中国にヒ化ガリウムなどの製造拠点を持つ米企業AXTは慌てて輸出許可申請を出したという。また中国の関連企業に対しては、米国、日本、欧州連合(EU)のバイヤーからの問い合わせが殺到し、製品価格の見積もりが高騰し続けているというありさまなのだそうです。
環球時報はこの輸出規制について、世界のガリウム埋蔵量の85%を占める中国が、適切に輸出管理規制を行うことは合理的だ、と肯定的に評価していると、福島さん。
ガリウムを生産する企業は世界に30社ほどあり、それらは中国や日本、ウクライナ、カザフスタン、カナダなどの企業。中国での生産量は全体の94%を占めると。
ゲルマニウムは主に赤外線光学、光ファイバー通信、太陽光電池、触媒などに利用され、こちらも軍民両用素材だ。ゲルマニウム資源はもともと希少で、多くの国で戦略的備蓄物資に分類されているのだそうです。
ゲルマニウムの世界の埋蔵量は8600トンで、米国の埋蔵量は世界埋蔵総量の45%、中国が41%、ロシアがおよそ10%と推計されているのだと。
世界のゲルマニウム生産量は2021年のデータでは140トンで、そのうち中国生産が95トン、67.8%のシェアを持つ。次にロシアの生産量が5トンで、このほかベルギー、カナダ、ドイツ、日本、ウクライナなどの生産量が合計で40トンとなる。長年の間、世界の半導体産業のサプライチェーンは、実は中国産の安価なゲルマニウム製品に支えられてきた。
米国はゲルマニウム埋蔵量で世界一だが、国防備蓄資源保護の名目でほとんど採掘されていない。
ゲルマニウムにしろガリウムにしろ、中国が生産量で世界トップを走ってきたのは、実はこれらレアメタルの採掘が環境に悪影響を与えることも一因。経済発展のために環境を犠牲にすることをいとわない中国がこの分野で独走してきたと、福島さん。
ロイターによれば、2022年の中国産ガリウム製品の主要輸入国は日本、ドイツ、オランダだという。ゲルマニウム製品の主要輸入国は日本、フランス、ドイツ、米国だ。いずれのレアメタルについても日本が最大輸入国なので、日本が一番影響を受けるという見方は間違いではなかろうと。
中国のガリウム、ゲルマニウムの輸出規制カードは、米国の対中半導体規制を緩和させて譲歩を引き出すことができるのか。
その答えは、イエレン財務長官の訪中結果をまつことになりますね。
先進国の企業は今回の中国の輸出管理規制に関する公告を機会に長期的な視野で、こうした半導体製造に必要な戦略的物資の中国依存脱却を真剣に検討しなければならないだろうと、福島さん。
原料ガリウムは中国企業の製造が中心だが、精製ガリウムを生産する主要企業は日本と米国に多い。対抗策としては、日米などが協力して新たな鉱山開発投資や代替技術研究を行うか、再生ガリウムの利用拡大があるだろうと。
日本の住友化学とラサ工業などは、スクラップから再利用する再生ガリウムの生産技術を持つのだそうです。
ゲルマニウムに関しては米国が最大の埋蔵国なのだから米国で環境保護に配慮しながら採掘する方法が取られていくだろう。その結果、半導体の生産コストは上がるだろうが、そもそも中国の環境汚染を代償にした安価な原料に頼ってきた半導体のサプライチェーンそのものに反省すべき点はなかったかと、福島さん!
日本のメディアは、中国のガリウム、ゲルマニウム禁輸をかなり悲観的に報じている。だが中国の地質化学院鉱物資源研究所の高天明研究員は環球時報で「日米は中国のレアアース・レアメタルに依存しないサプライチェーンを確立しようとするだろう」と予測しているのだそうです。
日本は高天明研究員の期待に応えて、この危機を日本のハイテク産業にとってのチャンスと捉え活かしていただける事を、福島さんと共に期待します。
# 冒頭の画像は、イエレン米財務長官
ラベンダーと蝶
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新型コロナ感染拡大で、生産や物流がとどこおり、家電から自動車など多くの製品が品不足になったことは、衆知の出来事でした。
また、米中新冷戦の中で、米、日、オランダが寡占する製造装置の規制で主導権を確保したり、台湾の半導体メーカーTSMCが、台湾海峡危機に備えることも含み、日米に生産拠点増設も話題になりました。
しかし今注目され始めたのが、半導体製造に必要なガリウムやゲルマニウムのレアメタルの供給。
依存度の高い中国が、輸出管理規制に関する公告を発表するという危機が勃発。
米国のイエレン財務長官が6日から訪中するのを受けて、中国が米国に対中半導体制裁の緩和を交渉するための「駆け引き材料」と見られているが、イエレン訪中によって、米中半導体戦争は緩和するのか、それともより先鋭化するのかと、元産経新聞中国駐在記者のジャーナリスト、福島香織さん。
米中半導体戦争、中国レアメタル輸出規制の必然 イエレン訪中でどうなる?
中国依存のガリウムやゲルマニウムの生産、供給網見直しは不可避に | JBpress (ジェイビープレス) 2023.7.6(木) 福島 香織
・中国が米国の対中半導体規制の対抗策としてガリウムやゲルマニウムの輸出規制を打ち出した。
・6日から始まるイエレン米財務長官の訪中を前に「駆け引きの材料」にするものと見られるが、背景には中国にガリウムなどの生産を依存してきたサプライチェーンの問題がある。
・レアメタルの生産は環境負荷が大きく、脱中国依存にはコストもかかる。サプライチェーンの見直しは不可避で、危機をチャンスに変える知恵が求められる。
(福島 香織:ジャーナリスト)
中国商務部は3日、半導体製造に必要なガリウムやゲルマニウムの輸出管理規制に関する公告を発表した。8月1日からガリウム、ゲルマニウム関連製品を輸出する場合、国務院の批准が必要とした。米国のイエレン財務長官が6日から訪中するのを受けて、中国が米国に対中半導体制裁の緩和を交渉するための「駆け引き材料」と見られている。はたしてイエレン訪中によって、米中半導体戦争は緩和するのか、それともより先鋭化するのか。
公告によれば、輸出企業は商務部に対し、エンドユーザーから利用目的の証明を得て、輸入企業とエンドユーザーに関する状況を説明しなければならないという。軍事目的や、そのほか中国の国家安全や利益に危害を与えるような目的で利用されると判断された場合、輸出を許可せず国家の安全と利益を擁護するのだという。
すでに影響が出始めている。中国にヒ化ガリウムなどの製造拠点を持つ米企業AXTは慌てて輸出許可申請を出したという。また中国の関連企業に対しては、米国、日本、欧州連合(EU)のバイヤーからの問い合わせが殺到し、製品価格の見積もりが高騰し続けているというありさまだ。
ガリウムとゲルマニウムはハイテク分野では欠くことのできない戦略資源であり、衛星通信、太陽光電池、半導体、人工知能(AI)など先端領域で広く利用されている。目下、中国で生産されるこの2種のレアメタルは、米国、EUともに重要戦略物資のリストに入っている。
ガリウムは「電子工業の背骨」
中国の環球時報によれば、ガリウムは低融点、高沸点の稀散金属で、「電子工業の背骨」とも呼ばれている。高い電導性があり、中程度の熱伝導率と液体化した時の低毒性が特徴だ。
処理されたヒ化ガリウム、窒化ガリウム、リン化ガリウム、銅インジウムガリウムセレンは、半導体材料、半導体発光コンポーネント、集積回路、トランジスタ、5Gおよび国防通信無線周波数デバイス、CIGS薄膜太陽電池などの製造に必要な原料だ。2023年の米国の地質調査局のガリウムに関するリポートでは、半導体チップや軍事産業などのハイテク分野製品において、ヒ化ガリウムの代替品は今のところ見つかっていない。
窒化ガリウムはパトリオット国防ミサイルシステムやアクティブフェーズドアレイレーダー(APAR)の製造にも利用されている。米国が2016年、フィリップス子会社が自動車用LED部品事業を中国系ファンドに売却する計画を阻止したのは、LEDが窒化ガリウムを原料としており、窒化ガリウムが軍民両用製品であることを懸念したからだと言われている。
昨年、窒化ガリウムを使った半導体チップの販売額は世界で24.7億ドルだった。2030年には193億ドル市場となると予測されている。ヒ化ガリウムを利用した半導体チップは昨年の14億ドル市場から2030年に34億ドル市場に拡大する見込みという。
環球時報はこの輸出規制について、軍事専門家の傅前哨のコメントを引用する形で、世界ガリウム埋蔵量の85%を占める中国が、適切に輸出管理規制を行うことは合理的だ、と肯定的に評価している。ガリウムを生産する企業は世界に30社ほどあり、それらは中国や日本、ウクライナ、カザフスタン、カナダなどの企業だ。中国での生産量は全体の94%を占める。
世界最大のゲルマニウム埋蔵国は米国だが…
一方、ゲルマニウムは主に赤外線光学、光ファイバー通信、太陽光電池、触媒などに利用され、こちらも軍民両用素材だ。ゲルマニウム資源はもともと希少で、多くの国で戦略的備蓄物資に分類されている。
ゲルマニウムの世界の埋蔵量は8600トンで、米国の埋蔵量は3870トン、中国は2333トンで米国の埋蔵量は世界埋蔵総量の45%、中国が41%、ロシアがおよそ10%と推計されている。
米国はゲルマニウム埋蔵量で世界一だが、国防備蓄資源保護の名目でほとんど採掘されていない。そのため、中国が最大のゲルマニウム生産国となっている。
2021年のデータでは世界のゲルマニウム生産量は140トンで、そのうち中国生産が95トン、67.8%のシェアを持つ。次にロシアの生産量が5トンで、このほかベルギー、カナダ、ドイツ、日本、ウクライナなどの生産量が合計で40トンとなる。長年の間、世界の半導体産業のサプライチェーンは、実は中国産の安価なゲルマニウム製品に支えられてきた。
中国が米国などから半導体関連の輸出規制という制裁を受け続けた場合、中国がゲルマニウムやガリウムの輸出規制で対抗しようとするのは、ある意味想定されていたことだろう。
ゲルマニウムにしろガリウムにしろ、中国が生産量で世界トップを走ってきたのは、実はこれらレアメタルの採掘が環境に悪影響を与えることも一因だ。環境に配慮すれば生産コストは猛烈に上がる。このため、経済発展のために環境を犠牲にすることをいとわない中国がこの分野で独走してきた。
ガリウムは単体の鉱床があるわけではなく、多くはアルミニウムの原料であるボーキサイトや亜鉛鉱の採掘の副産物として採掘される。ガリウムを生産しようとすれば、アルミ生産などとセットで行うことになるが、このアルミ工場による汚染問題は長らく中国で深刻な社会問題でもあった。
日本が最も影響を受ける?
ゲルマニウムの一次加工製品は主に二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムインゴットなどで、主にPET触媒や二次加工製品の原料とされる。こうしたゲルマニウムは主にゲルマニウム含有スラグやばい煙、石炭などから抽出されている。
ゲルマニウムの生産については習近平政権で中国環境保護基準が厳格化され、大型のゲルマニウムを含む鉱山の生産は制限され、小型の鉱山は閉山させられている。中国国内の多くのゲルマニウム生産企業は資産の再編や技術革新を迫られ、これがグローバルサプライチェーンの逼迫とあいまって価格の上昇を引き起こしていた。
中国では主に、雲南、広東、江蘇、湖南がゲルマニウム生産の集中地区で、雲南の生産量が60%を占める。雲南のレアアース、レアメタルによる地質水質汚染は10年ほど前に私も現場で取材をしたことがあるが、すでに大きな社会問題となって、地元農民の健康被害も深刻だった。
ロイターによれば、2022年の中国産ガリウム製品の主要輸入国は日本、ドイツ、オランダだという。ゲルマニウム製品の主要輸入国は日本、フランス、ドイツ、米国だ。いずれのレアメタルについても日本が最大輸入国なので、日本が一番影響を受けるという見方は間違いではなかろう。
レアメルタルの脱中国依存が急務
さて、中国のガリウム、ゲルマニウムの輸出規制カードは、米国の対中半導体規制を緩和させて譲歩を引き出すことができるのか。その答えはまもなく出るので予測はやめておく。
だが、どちらにしても、先進国の企業はこれを機会に長期的な視野で、こうした半導体製造に必要な戦略的物資の中国依存脱却を真剣に検討しなければならないだろう。
原料ガリウムは中国企業の製造が中心だが、精製ガリウムを生産する主要企業は日本と米国に多い。対抗策としては、日米などが協力して新たな鉱山開発投資や代替技術研究を行うか、再生ガリウムの利用拡大があるだろう。
日本の住友化学とラサ工業などは、スクラップから再利用する再生ガリウムの生産技術を持つ。使用済み製品のほか、廃棄物からガリウム製品を取り出して再利用する仕組みを拡大していけば、海外に廃棄される半導体製品による環境汚染の緩和にも効果があるだろう。
ゲルマニウムに関しては米国が最大の埋蔵国なのだから米国で環境保護に配慮しながら採掘する方法が取られていくだろう。その結果、半導体の生産コストは上がるだろうが、そもそも中国の環境汚染を代償にした安価な原料に頼ってきた半導体のサプライチェーンそのものに反省すべき点はなかったか。
日本のメディアは、中国のガリウム、ゲルマニウム禁輸をかなり悲観的に報じている。だが中国の地質化学院鉱物資源研究所の高天明研究員は環球時報で「日米は中国のレアアース・レアメタルに依存しないサプライチェーンを確立しようとするだろう」と予測している。
短期的には関連企業は大きな打撃を被るとみられる。だが、サプライチェーンの再構築が進めば、レアメタルのリサイクルにも弾みがつき、レアメタルの採掘や半導体製品の廃棄による環境負荷を減らすことができるかもしれない。日本の山間部や地方で環境や自然災害に無配慮に導入されている中国製太陽光電池パネル建設プロジェクトにも待ったをかける良い機会になるのではないだろうか。この危機を日本のハイテク産業にとってのチャンスと捉えてほしい。
中国依存のガリウムやゲルマニウムの生産、供給網見直しは不可避に | JBpress (ジェイビープレス) 2023.7.6(木) 福島 香織
・中国が米国の対中半導体規制の対抗策としてガリウムやゲルマニウムの輸出規制を打ち出した。
・6日から始まるイエレン米財務長官の訪中を前に「駆け引きの材料」にするものと見られるが、背景には中国にガリウムなどの生産を依存してきたサプライチェーンの問題がある。
・レアメタルの生産は環境負荷が大きく、脱中国依存にはコストもかかる。サプライチェーンの見直しは不可避で、危機をチャンスに変える知恵が求められる。
(福島 香織:ジャーナリスト)
中国商務部は3日、半導体製造に必要なガリウムやゲルマニウムの輸出管理規制に関する公告を発表した。8月1日からガリウム、ゲルマニウム関連製品を輸出する場合、国務院の批准が必要とした。米国のイエレン財務長官が6日から訪中するのを受けて、中国が米国に対中半導体制裁の緩和を交渉するための「駆け引き材料」と見られている。はたしてイエレン訪中によって、米中半導体戦争は緩和するのか、それともより先鋭化するのか。
公告によれば、輸出企業は商務部に対し、エンドユーザーから利用目的の証明を得て、輸入企業とエンドユーザーに関する状況を説明しなければならないという。軍事目的や、そのほか中国の国家安全や利益に危害を与えるような目的で利用されると判断された場合、輸出を許可せず国家の安全と利益を擁護するのだという。
すでに影響が出始めている。中国にヒ化ガリウムなどの製造拠点を持つ米企業AXTは慌てて輸出許可申請を出したという。また中国の関連企業に対しては、米国、日本、欧州連合(EU)のバイヤーからの問い合わせが殺到し、製品価格の見積もりが高騰し続けているというありさまだ。
ガリウムとゲルマニウムはハイテク分野では欠くことのできない戦略資源であり、衛星通信、太陽光電池、半導体、人工知能(AI)など先端領域で広く利用されている。目下、中国で生産されるこの2種のレアメタルは、米国、EUともに重要戦略物資のリストに入っている。
ガリウムは「電子工業の背骨」
中国の環球時報によれば、ガリウムは低融点、高沸点の稀散金属で、「電子工業の背骨」とも呼ばれている。高い電導性があり、中程度の熱伝導率と液体化した時の低毒性が特徴だ。
処理されたヒ化ガリウム、窒化ガリウム、リン化ガリウム、銅インジウムガリウムセレンは、半導体材料、半導体発光コンポーネント、集積回路、トランジスタ、5Gおよび国防通信無線周波数デバイス、CIGS薄膜太陽電池などの製造に必要な原料だ。2023年の米国の地質調査局のガリウムに関するリポートでは、半導体チップや軍事産業などのハイテク分野製品において、ヒ化ガリウムの代替品は今のところ見つかっていない。
窒化ガリウムはパトリオット国防ミサイルシステムやアクティブフェーズドアレイレーダー(APAR)の製造にも利用されている。米国が2016年、フィリップス子会社が自動車用LED部品事業を中国系ファンドに売却する計画を阻止したのは、LEDが窒化ガリウムを原料としており、窒化ガリウムが軍民両用製品であることを懸念したからだと言われている。
昨年、窒化ガリウムを使った半導体チップの販売額は世界で24.7億ドルだった。2030年には193億ドル市場となると予測されている。ヒ化ガリウムを利用した半導体チップは昨年の14億ドル市場から2030年に34億ドル市場に拡大する見込みという。
環球時報はこの輸出規制について、軍事専門家の傅前哨のコメントを引用する形で、世界ガリウム埋蔵量の85%を占める中国が、適切に輸出管理規制を行うことは合理的だ、と肯定的に評価している。ガリウムを生産する企業は世界に30社ほどあり、それらは中国や日本、ウクライナ、カザフスタン、カナダなどの企業だ。中国での生産量は全体の94%を占める。
世界最大のゲルマニウム埋蔵国は米国だが…
一方、ゲルマニウムは主に赤外線光学、光ファイバー通信、太陽光電池、触媒などに利用され、こちらも軍民両用素材だ。ゲルマニウム資源はもともと希少で、多くの国で戦略的備蓄物資に分類されている。
ゲルマニウムの世界の埋蔵量は8600トンで、米国の埋蔵量は3870トン、中国は2333トンで米国の埋蔵量は世界埋蔵総量の45%、中国が41%、ロシアがおよそ10%と推計されている。
米国はゲルマニウム埋蔵量で世界一だが、国防備蓄資源保護の名目でほとんど採掘されていない。そのため、中国が最大のゲルマニウム生産国となっている。
2021年のデータでは世界のゲルマニウム生産量は140トンで、そのうち中国生産が95トン、67.8%のシェアを持つ。次にロシアの生産量が5トンで、このほかベルギー、カナダ、ドイツ、日本、ウクライナなどの生産量が合計で40トンとなる。長年の間、世界の半導体産業のサプライチェーンは、実は中国産の安価なゲルマニウム製品に支えられてきた。
中国が米国などから半導体関連の輸出規制という制裁を受け続けた場合、中国がゲルマニウムやガリウムの輸出規制で対抗しようとするのは、ある意味想定されていたことだろう。
ゲルマニウムにしろガリウムにしろ、中国が生産量で世界トップを走ってきたのは、実はこれらレアメタルの採掘が環境に悪影響を与えることも一因だ。環境に配慮すれば生産コストは猛烈に上がる。このため、経済発展のために環境を犠牲にすることをいとわない中国がこの分野で独走してきた。
ガリウムは単体の鉱床があるわけではなく、多くはアルミニウムの原料であるボーキサイトや亜鉛鉱の採掘の副産物として採掘される。ガリウムを生産しようとすれば、アルミ生産などとセットで行うことになるが、このアルミ工場による汚染問題は長らく中国で深刻な社会問題でもあった。
日本が最も影響を受ける?
ゲルマニウムの一次加工製品は主に二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムインゴットなどで、主にPET触媒や二次加工製品の原料とされる。こうしたゲルマニウムは主にゲルマニウム含有スラグやばい煙、石炭などから抽出されている。
ゲルマニウムの生産については習近平政権で中国環境保護基準が厳格化され、大型のゲルマニウムを含む鉱山の生産は制限され、小型の鉱山は閉山させられている。中国国内の多くのゲルマニウム生産企業は資産の再編や技術革新を迫られ、これがグローバルサプライチェーンの逼迫とあいまって価格の上昇を引き起こしていた。
中国では主に、雲南、広東、江蘇、湖南がゲルマニウム生産の集中地区で、雲南の生産量が60%を占める。雲南のレアアース、レアメタルによる地質水質汚染は10年ほど前に私も現場で取材をしたことがあるが、すでに大きな社会問題となって、地元農民の健康被害も深刻だった。
ロイターによれば、2022年の中国産ガリウム製品の主要輸入国は日本、ドイツ、オランダだという。ゲルマニウム製品の主要輸入国は日本、フランス、ドイツ、米国だ。いずれのレアメタルについても日本が最大輸入国なので、日本が一番影響を受けるという見方は間違いではなかろう。
レアメルタルの脱中国依存が急務
さて、中国のガリウム、ゲルマニウムの輸出規制カードは、米国の対中半導体規制を緩和させて譲歩を引き出すことができるのか。その答えはまもなく出るので予測はやめておく。
だが、どちらにしても、先進国の企業はこれを機会に長期的な視野で、こうした半導体製造に必要な戦略的物資の中国依存脱却を真剣に検討しなければならないだろう。
原料ガリウムは中国企業の製造が中心だが、精製ガリウムを生産する主要企業は日本と米国に多い。対抗策としては、日米などが協力して新たな鉱山開発投資や代替技術研究を行うか、再生ガリウムの利用拡大があるだろう。
日本の住友化学とラサ工業などは、スクラップから再利用する再生ガリウムの生産技術を持つ。使用済み製品のほか、廃棄物からガリウム製品を取り出して再利用する仕組みを拡大していけば、海外に廃棄される半導体製品による環境汚染の緩和にも効果があるだろう。
ゲルマニウムに関しては米国が最大の埋蔵国なのだから米国で環境保護に配慮しながら採掘する方法が取られていくだろう。その結果、半導体の生産コストは上がるだろうが、そもそも中国の環境汚染を代償にした安価な原料に頼ってきた半導体のサプライチェーンそのものに反省すべき点はなかったか。
日本のメディアは、中国のガリウム、ゲルマニウム禁輸をかなり悲観的に報じている。だが中国の地質化学院鉱物資源研究所の高天明研究員は環球時報で「日米は中国のレアアース・レアメタルに依存しないサプライチェーンを確立しようとするだろう」と予測している。
短期的には関連企業は大きな打撃を被るとみられる。だが、サプライチェーンの再構築が進めば、レアメタルのリサイクルにも弾みがつき、レアメタルの採掘や半導体製品の廃棄による環境負荷を減らすことができるかもしれない。日本の山間部や地方で環境や自然災害に無配慮に導入されている中国製太陽光電池パネル建設プロジェクトにも待ったをかける良い機会になるのではないだろうか。この危機を日本のハイテク産業にとってのチャンスと捉えてほしい。
中国商務部の公告によれば、輸出企業は商務部に対し、エンドユーザーから利用目的の証明を得て、輸入企業とエンドユーザーに関する状況を説明しなければならない。
軍事目的や、そのほか中国の国家安全や利益に危害を与えるような目的で利用されると判断された場合、輸出を許可せず国家の安全と利益を擁護するのだと、福島さん。
すでに影響が出始めていて、中国にヒ化ガリウムなどの製造拠点を持つ米企業AXTは慌てて輸出許可申請を出したという。また中国の関連企業に対しては、米国、日本、欧州連合(EU)のバイヤーからの問い合わせが殺到し、製品価格の見積もりが高騰し続けているというありさまなのだそうです。
環球時報はこの輸出規制について、世界のガリウム埋蔵量の85%を占める中国が、適切に輸出管理規制を行うことは合理的だ、と肯定的に評価していると、福島さん。
ガリウムを生産する企業は世界に30社ほどあり、それらは中国や日本、ウクライナ、カザフスタン、カナダなどの企業。中国での生産量は全体の94%を占めると。
ゲルマニウムは主に赤外線光学、光ファイバー通信、太陽光電池、触媒などに利用され、こちらも軍民両用素材だ。ゲルマニウム資源はもともと希少で、多くの国で戦略的備蓄物資に分類されているのだそうです。
ゲルマニウムの世界の埋蔵量は8600トンで、米国の埋蔵量は世界埋蔵総量の45%、中国が41%、ロシアがおよそ10%と推計されているのだと。
世界のゲルマニウム生産量は2021年のデータでは140トンで、そのうち中国生産が95トン、67.8%のシェアを持つ。次にロシアの生産量が5トンで、このほかベルギー、カナダ、ドイツ、日本、ウクライナなどの生産量が合計で40トンとなる。長年の間、世界の半導体産業のサプライチェーンは、実は中国産の安価なゲルマニウム製品に支えられてきた。
米国はゲルマニウム埋蔵量で世界一だが、国防備蓄資源保護の名目でほとんど採掘されていない。
ゲルマニウムにしろガリウムにしろ、中国が生産量で世界トップを走ってきたのは、実はこれらレアメタルの採掘が環境に悪影響を与えることも一因。経済発展のために環境を犠牲にすることをいとわない中国がこの分野で独走してきたと、福島さん。
ロイターによれば、2022年の中国産ガリウム製品の主要輸入国は日本、ドイツ、オランダだという。ゲルマニウム製品の主要輸入国は日本、フランス、ドイツ、米国だ。いずれのレアメタルについても日本が最大輸入国なので、日本が一番影響を受けるという見方は間違いではなかろうと。
中国のガリウム、ゲルマニウムの輸出規制カードは、米国の対中半導体規制を緩和させて譲歩を引き出すことができるのか。
その答えは、イエレン財務長官の訪中結果をまつことになりますね。
先進国の企業は今回の中国の輸出管理規制に関する公告を機会に長期的な視野で、こうした半導体製造に必要な戦略的物資の中国依存脱却を真剣に検討しなければならないだろうと、福島さん。
原料ガリウムは中国企業の製造が中心だが、精製ガリウムを生産する主要企業は日本と米国に多い。対抗策としては、日米などが協力して新たな鉱山開発投資や代替技術研究を行うか、再生ガリウムの利用拡大があるだろうと。
日本の住友化学とラサ工業などは、スクラップから再利用する再生ガリウムの生産技術を持つのだそうです。
ゲルマニウムに関しては米国が最大の埋蔵国なのだから米国で環境保護に配慮しながら採掘する方法が取られていくだろう。その結果、半導体の生産コストは上がるだろうが、そもそも中国の環境汚染を代償にした安価な原料に頼ってきた半導体のサプライチェーンそのものに反省すべき点はなかったかと、福島さん!
日本のメディアは、中国のガリウム、ゲルマニウム禁輸をかなり悲観的に報じている。だが中国の地質化学院鉱物資源研究所の高天明研究員は環球時報で「日米は中国のレアアース・レアメタルに依存しないサプライチェーンを確立しようとするだろう」と予測しているのだそうです。
日本は高天明研究員の期待に応えて、この危機を日本のハイテク産業にとってのチャンスと捉え活かしていただける事を、福島さんと共に期待します。
# 冒頭の画像は、イエレン米財務長官
ラベンダーと蝶
↓よろしかったら、お願いします。